5-18 内乱終結
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今回は皇太子軍と反乱軍との決戦です。
皇太子軍に味方することを約束したクーヤは敵陣の上空でチャンスを伺うのだった。
〇皇太子軍 転移223日目
皇太子軍はすでに決戦の平原まで1時間のところまで来ていた。
軍列の中央に皇太子とジュチは馬を並べて居た。そこへ兵が駆け寄った。
「敵軍の布陣はどうだ」
ジュチが戻って来たばかりの斥候兵に聞く。
「はい、兵数を少なく見せるように並んでおります。まだ大きな動きはありません」
「手の内は見せてくれんか」
皇太子ナランの問いにジュチが答える。
「はい、おそらく我らが兵力を把握しているとは知らずにいるので、平原に入れば殿下を逃がさぬように包囲するように動くと思われます」
「俺はどうすれば良いと思う?」
「はい、後ろに包囲突破の兵を置いて、クーヤ殿の様子を見るため、時間稼ぎをするのが良いと思います」
ナランは笑った。
「皇帝を目指す私が様子見、時間稼ぎだと?!」
勇猛を是とするモンゴル人の血がナランを怒らせる。
「殿下、お静かに!周囲に聞かれます」
「俺はクーヤに認められたい。あの若造に、奴はサラと変わらん年齢だろう。なのにあの自信に溢れた物言い、老成した態度、奴はかならずバアタルとボルド将軍の首を取る。
奴等は我らが到着してから陣を動かすはずだ。我等は奴等の本陣を目指して駆けるぞ!」
ジュチはフッと息を吐く。
「殿下の思うとおりに」
「では将軍を集めよ!軍議を開く」
******
〇反乱軍本陣
「ナラン軍が現れました!」
「よし!包囲陣形を取れ!」
「いえ、全軍矢のように突っ込んできます!」
「なんだとお!!」
テントの中にいた将軍たちは我先にテントの外に出る。ナラン軍の突進はそれほどに虚を突いたものだった。
こちらはナラン軍。
平地の入り口から馬を敵の本陣向けて疾走させた。
反乱軍の本陣は平地の反対側に在って、平地の中央は開いている。
本陣の前にも数万の兵が用意されていたので、左右の兵力が事前の作戦通り包囲を仕掛けたので、自然に鶴翼の陣が形成されていった。
ナランは相手の陣に一切構わず錐のように全軍で突っ込んで行く。
「何だこれは!?」
「力が湧いてくるように感じます」
力が湧き上がる感じに驚くナランに隣を走るジュチも自分もだと返す。
一番前の兵が敵兵と当たった時、敵兵が弾き飛ばされる。
まるで人も馬も身体強化されたようだ。
バアタルはテントを出ずに、戻って来たボルド将軍に状況を聞いた。
「どうなのだ?」
「少々犠牲は増えるかもしれませんが、我が軍の勝利は間違いないかと」
ボルド将軍は所詮は小勢であり、ここまでは届くはずもないと思っている。
「フフフ、早くナランの首を見たいものだ」
バアタルももう勝ったつもりで酒の杯を掲げた。
その時である、テントの出入り口から入って来た、十数名の少女と少年が居た。
もちろんクーヤといつもの装備を付けた闘刃姫である。
彼らは敵がナラン軍を注視した時、テントの裏にヒイの家を出し、ゲートを通って現れたのである。
『ご主人様、サラの異能、蒼き狼の加護が消えました』
クーヤはどういうことか分からなかったが考えている暇はない。
入り口には、ヒイ、マール、マシロ、アカネ、アオイ、ライヤ、ナータが陣取り、テントへの侵入を阻止する。
バアタルとボルド将軍への刺客はミノンとミヤだ。
護衛や他の敵にはクーヤ、ジュレイ、ドーテ、ハイジだ。
そして敵の確認がサラだ。
ミノンとミヤにサラからの指示が飛ぶ。
指示は従者通信で行われるので聞こえない。
クーヤ達が空けた道をミヤとミノンが飛んでいく。
テントの外では闘刃姫の襲撃に気付いた兵や将軍たちが、騒ぎ始めた。
しかし、ヒイ、マールが矢で次々と倒していく。
近付けた者もアオイ、ライヤ、ナータのサブマシンガンでハチの巣にされる。
マシロ、アカネは出番がなくてちょっと不服そうだ。
ミヤやミノンが椅子や机の上を飛んでいく。
ミヤがバアタルの脇を抜けた時には、その首が舞い上がっていた。
さすがにボルド将軍はミノンに向かって剣を振った。
しかしミノンは双剣使いだ。
一方の剣で将軍の剣を受けとめると、もう一方の剣で首を薙ぐ。
一瞬にしてテント内に立っている敵は居なくなった。
サラは仮面を外した。
「戦闘をやめよ!第二皇女サランゲラルである!第一皇子バアタルとボルド将軍は討ち取った!武器を捨てて投降せよ!」
クーヤ達は日本で買った拡声器を使って反乱軍に呼びかける。
そのまま皇太子に向かって歩いていくつもりだ
時々矢が飛んで来たり、突っ込もうとするやつがいるが、マシロの結界を超えることはできない。
ジュレイとドーテが皇子と将軍の首を持って、前にいるので説得力がある。
ほとんどの敵兵はバアタルを皇帝に担ぐ目的で集まった兵だ。その目的が無くなったことを察して逃げ始めた。
皇太子ナランの近くに来た時には周辺の護衛兵以外は敵の追撃に移っていた。
「兄上、ご快勝おめでとうございます」
サラは跪いて勝利を祝った。
ナランは馬から降りて妹を迎えた。
「ありがとう。しかしお前に跪かれる覚えはないが?」
「先程、兄上の頭上に蒼き狼の姿が見えました。これはご先祖から兄上に皇帝を名乗るようにとの思し召しかと」
サラはそう言って頭を垂れる。
『ナラン殿に異能蒼き狼の加護が見えます』
なるほど何かの条件があって異能が移ったのか合わさったのだな。
クーヤは兄妹をほほえましく眺めた。
「おお、世辞でも嬉しいぞ。クーヤ殿お味方助かりました。お礼は帝都が治まってからになりますが必ず届けます」
「ボルド将軍の首を取ったのはミノンです。彼女の親は旗本と聞きます。褒めてやってください」
ミノンは仮面を取って跪いた。
「金羊族のミノン、よくやった。褒美は親に渡せばよいか?」
「はい」
ミノンは小さく頷いた。
「ところでサラよ。お前は私と一緒に来るか?」
「いえ、兄上、しばらく私はクーヤ様の元で産業革命を勉強したいと思います」
ナラン皇太子はクーヤを見て軽くお辞儀をした。
クーヤもそれに返した。
その後各所からの報告がナランの元に来たため、クーヤ達は帰ることにした。
「兄上が皇帝に即位するときにはまた連れて来てください」
サラはクーヤにそう頼んだ。
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〇闘刃姫寮
その日、今日のご褒美にケーキを作ることにした。
さすがに生ものは日本で買えないので、現地調達を中心にした。
こっちの人間には見たこともないものだし、マシロ達も孤児院での共同生活で作ったことは無いそうだ。
道具も日本で買って、フルーツはイチゴは無理だがミカンのシロップ漬け缶詰で代用。
作り方はナビさんがネットで拾って指南した。
パティシエをインストールすればよかったのだろうが、自分で作りたいとみんなが言うので作らせた。
卵に砂糖を泡だて器で泡立てる。
当然、そこいらに飛び散る。
そこに小麦粉をふるって落し入れ混ぜる。
小麦粉が煙幕のように・・・。
丸い型に入れてオーブンで焼く。
スポンジが歪な形に。
スポンジを上下に斬って、シロップを塗る。
当然真っ直ぐ切れない。
生クリームに砂糖を入れて泡立てる。
味見でクリームが無くなる。
ヒイの顔に生クリームが飛んで危ない絵面になる。
スポンジにクリームを厚く塗って、ミカンを並べる。
つまみ食いでミカンが足りなくなる。
スポンジを重ね、生クリームでコーテイング。
当然のように凸凹になる。
上面をミカンや生クリームで飾って冷蔵庫で数時間冷やす。
クリームとミカンが山盛りに。
本当は1時間ぐらいで良いはずだが、しょっちゅう扉を開けて確認するので冷えない。
夕食後、全員が自分で作ったいびつなケーキを喜んで食べた。
あれだけつまみ食いしてどこに入るのか・・・甘いものは別腹とはよく言ったものだ。
「マシロさん達はこんなおいしいもの、いつも食べられたの?」
ヒイがマシロに聞いた。
「私達は孤児で貧しかったから、年に一回クリスマスぐらいかな。それもこんな小さいの」
親指と人差し指でコの字を作る。
この子達を幸せにしてやらねばとクーヤは思うのだった。
ただ、調理場の後片付けが大変だったことは言うまでもない。
夜、ここはマシロの部屋。
アカネとアオイが居て、サラが来ていた。
「それで話したいことって何?」
マシロはサラに聞いた
「私はモンゴルに帰りたくないと考えています」
「え、そうなの?」
「モンゴルに居ればお姫様でしょ」
居場所がなくなりクーヤに養われている3人はびっくりだ。
「私はナータの考えに近いかもしれません」
「ナータは魔道具オタクで、ここに居ればいくらでも研究が出来るからだろ。アオイと一緒で」
「失礼ね。私はあれほど狂ってないから」
サラの言葉に反応したアカネに突っかかるアオイ。
「私が帰れば、この内乱の功労者に嫁ぐことになるでしょう」
「ジュチさんとか?」
「いえ、彼の家族はあまり強い勢力とは言えないので、勢力を持った貴族が相手になるでしょうね」
「ヒエー、完全な政略結婚!」
「それならクーヤさんも功労者じゃないの?」
「彼は国外の人ですから、ナランはこれから国内をまとめなければならないのです」
「あなたは確か繊維関係の仕事がしたいのよね。でも兄を支えなければと考えているんだ」
「はい、ミノンもこちらに残りたいと言っていますし、私も兄の事がなければ・・・」
「でもこれって私達がおいそれとこうすれば良いとは言えないでしょ。私達は国に責任のある家に生まれた訳じゃないから」
「アオイ、それは言っちゃいけないよ」
「そうね、ごめんなさい」
「いえ、良いんです。私としては皆さんに聞いていただくことで気持ちの整理をつけようとしているだけですから」
「それで整理はついたの?」
「いえ、やはり兄が許すかどうかになると思います」
「クーヤさんにお嫁に欲しいって言わせるのはどうかしら?」
「やめてください。今回の事でさんざん迷惑をかけたのに」
「あの人、多分迷惑って思ってないわよ」
「アタイ達のクーヤだからな」
「話は変わるのですが、あなた達は同じ人と・・なんて言ったらいいのかな?」
「同じ人を好きになってるってこと?」
「ええ、そうです。なぜヤキモチも焼かずに平然と出来るのかなって?失礼ですが体の関係もあるのですよね」
「一つには私達が単独では、ここでも日本でも生きていけないと言うこと。つまり、この世界でクーヤさんの従者になる以外に生きる道はないってことなの。
それで私達は彼の従者になったわ。それで彼と精神的に繋がったの。
そうしたらもっと絆を深めたいという欲求が私達に起こって来たのね。
それでこちらからお願いしたわけ。
ヤキモチを焼かないのは彼に捨てられたくないからよ」
「分かりました。あなた達とずっと暮らしたくなってきました」
サラは礼を言って部屋を後にした。
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
次回で5章は終わる予定です。




