5-19 サラ
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5章を終了します。
サラの兄の帝位争いを勝利に導いたクーヤと闘刃姫達は、日常に戻ろうとしていた。
〇闘刃姫寮 転移224日目
昼ご飯を済ませたサラとミノンは休憩でサラの部屋に居た。
「クーヤ様が居なかったけどどうしたの?」
「モンゴルでのことを報告に帝城の天帝様のところへ行きましたよ」
サラはフーとため息を吐いた。
「姫様、気分の気持ちに正直になった方が良いですよ」
「な、なに、どういう意味?」
ちょっと慌てるサラ。
「クーヤ様の事です。好きなんでしょう?」
ミノンはテーブルの上を拭きながら言った。
「な、なに言ってるの?私がそんなわけ・・・」
動揺するサラにミノンは手を止めて顔を上げる。
「だって前もだったけど、特にモンゴルから帰ってからは、クーヤ様を目で追っていましたよ」
「そ、そうだったかしら。でも私恋なんかしたことないから解らないわ」
「クーヤ様を見るとドキドキするとか、胸がいっぱいになるとか」
「確かに、特にモンゴルから帰ってからは彼を見てるとなんかこう胸が締め付けられるようで目線を外したことがあったけど」
ミノンは顔を背けてニヤッと笑った。
「それって恋ですよ」
「そうなの?詳しいわね」
「向こうでメイド同士の話って、たいがいコイバナだったので」
なぜかミノンは得意顔だ。
「ミノン、あなたはどうなのですか?」
ミノンはちょっと首を傾げた。
「私、このままここで働かせてもらえばいいかなって思ってたんですよ」
「今は違うの?」
「うーん、欲が出てきたんだと思います。妾でいいんでクーヤ様の近くに居たいんですよ。ここにいれば仕事もあるし、人として生きられるし、そのうち結婚も出来るかなあって考えてたんですけど」
「モンゴルじゃあ無理?」
「それはもちろん、だって貧乏獣人旗本の娘なんて、まずまともな嫁ぎ先なんてないですし、下手すると身売りさせられます。その点信帝国は豊かですから天都じゃあ、まず人買いは居ませんから」
「ごめんなさいね。私達が悪いのですね」
「いえいえ、昨日今日始まったことじゃないし、天都に、いえ、クーヤ様の元に来れて本当に感謝してます。だって、ヒイちゃんやミヤちゃんでもクーヤ様のお嫁になれるんですよ。私もって思っちゃいますよ」
ミノンは明るい顔で笑う。
モンゴルではこんな顔で笑う子じゃなかった。
そうね、クーヤ様だけに頼らずにモンゴルを豊かにしていかなければ、それが私の仕事なのかな。
「姫様、そろそろ休憩時間が終わりますよ」
「そうね、行きましょう」
******
〇帝城 天帝執務室
執務室には天帝様、コウメイ様、宰相が居た。
俺はモンゴルでの出来事を語った。
「ふーん、結局第一皇子と将軍を殺したんだ」
コウメイ様が抑揚のない声で言った。
これは俺を責めているのか。
俺は反乱軍が第一皇子と手を結んだ時に、コウメイ様から二人を殺すように言われていた。
「でも、あの時二人はそんなに悪いことはしていなかった」
「だがあの時にやって置けば、ウランバートルの人達は襲撃されなかった」
コウメイ様は冷たい目で俺を睨んだ。
「しかし、何もしていない人間を罰するのは、人としてどうかと思います」
「考えが甘い。日本という国はそれほど平和ボケしているのか」
ウー、この世界へ来た時は気が張ってたから、かなりドライにやってたんだけど、慣れてくるとやはり日本人が出てくるんだよな。
「兄上、それぐらいで・・・クーヤの甘さで助かっている部分も大きいことを忘れてはなりません」
天帝様が居れをかばってくれた。
「そうですな。いろいろ仕事を押し付けるのには好都合です」
宰相何を言うんだ。俺って利用されてたの?
「ああ、勘違いするなよ。ちゃんと依頼して金を払ってたろうが」
天帝様がフォローした。
まあ、おかげで従者を養っていけるから良いか。
「お前はクーヤに甘すぎる。もっと厳しく当たるべきだ」
コウメイ様が冷たく言い放つ。
「兄上、朕・・いえ私はそうは思わない。クーヤを私の部下にしなかったのは、クーヤの良さは自由にしておかないと発揮できないからだし、それで今まで信帝国にどれだけ貢献してくれたか分かりますか?」
天帝様の言葉にコウメイ様は考え込んだ。
「確かにクーヤが独自の判断で我々が助かったことも確かだ。しかし・・・」
「もうやめて!」
天帝様はコウメイ様の話を食い気味に遮った。
「私が天帝に成ったのは兄上の考えが危なかったからです。そうでなければ兄上の足をクーヤに直してもらってさっさと譲位していました」
「お前、そんな事を考えていたのか。俺はお前のために天帝の座を明け渡したのに」
驚くコウメイ様に宰相が笑った。
「コウメイ様には徳が足りません。徳とは人を許すこと。徳のない世界は殺伐としたものです。フォフォフォ」
「ゴホン、それでお前のところにいるモンゴルの皇女はどうするつもりだ」
味方のいないコウメイ様は咳払いで強引に話題を変えた。
「さあ、彼女の兄が皇帝に即位するときにでも決めるんじゃないですか?」
「お前は本当に自由だ」
コウメイ様は脱力したように言った。
俺は又聞きだが、サラはモンゴルに帰ると功臣と結婚させられるのが嫌だと聞いている。
まあ、こちらで仕事がしたいとも聞いているので、それはサラの判断に任せようと思っているだけだ。
もちろん仕事をするならそれなりのフォローはするつもりだ。
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〇闘刃姫寮 サラ
クーヤ様が帰って来たけど、信帝国はモンゴルにどうこう言うつもりはないようだ。
どうせ皇帝の戴冠式は冬を避け春になるだろうから、まだ半年はあるだろう。
私はその間に一回は兄と話してモンゴルの行く道を定めたい。
私は執務室に行き、クーヤ様に話しかけた。
私は産業革命の見通しとモンゴルについて聞いた。
「産業革命は技術学校が、そこそこ卒業生を輩出しないと始まらないと思うから、3年後くらいから本格化すると思うよ。モンゴルも資源は十分あるから、後は投資を活発にしないとな」
「投資ですか。お金がないと始まらないと言うことですね」
「まあ、そうだね。こればっかりは俺達が儲かることを見せないとな」
「クーヤ様はモンゴルには投資しないのですか?」
「俺は産業革命が始まったら信帝国を去るつもりだから、長期的には無理かな」
「え、どちらに行かれるのですか?」
「まだ決めてないけど、産業革命が始まるまでに決めるつもりだよ」
「ここはどうするつもりですか?」
「ああ、もちろんナオジ達に任せるつもりだ」
何と私は知っている。ここの工場が生み出す巨万の富を、それを他人のしかも平民に託すというのか。ナオジというものはドワーフの村の代表者に過ぎなかったはず。
「なぜナオジ殿に・・・?」
「うん、それは彼が信じるに足る人物だからだ。彼なら貴族達の圧力にも屈しないだろうし、俺の理念を通してくれると思っている」
それほど信頼するのはライヤさんの兄で孫従者だからだろうか。
そうか、クーヤ様は従者のネットワークで管理しようとしているのか。
クーヤ様からは聴けなかったのでマシロさんに従者ネットワークの事を聞いてみようとマシロさんの部屋に行く。
途中。
「姫様、そろそろ戻って貰わないと御髪の手入れが出来ません」
あちゃー、ミノンに見つかった。
マシロさんのところへ行く内容を説明すると・・・。
「私もついて行きます。私はここに残るつもりですから」
なんとミノンも付いてきた。
マシロさんは部屋に入れてくれた。
「従者によるネットワークか。確かにキメイさんと天華商会もそうだし、ナオジさんもやってるのかな」
「それって私達でもできたりしますか?」
「どうして?」
「モンゴルを豊かにするのにいいかなと思って」
「ちょっと難しいかもね」
「どうしてですか?」
「私も良く解らないけど、従者と孫従者の目的の範囲が狭くないと駄目みたいな感じがする。例えばキメイさんところだと情報の収集に特化してるわ。商売は個人の能力に頼ってるみたい」
「そうですね。国民を豊かにと言ったって、孫従者に求められる能力の範囲が広すぎて、対応できないようですね」
そう孫従者を作ったって具体的に何をやらせればいいのか分からない。
私自身が勉強しないとだめだね。
私が考え込んでいるとミノンが話し出した。
「あのー、クーヤさんに抱いてもらうにはどうすればいいですか?」
マシロさんと私はブッと吹き出す。
「君はいくつだい?」
「14歳ですが」
「じゃあ、あと2、3年待って、体が大人になったらナビさんが教えてくれるから、クーヤさんにお願いすると良いよ」
「どうして今はダメなんですか?」
「幼いまま妊娠すると母子共に危険だからさ」
「だから体が大人にならないといけないんですね」
「わ、私は?」
え、思っても居なかったけど聞いちゃった。
「サラさんは18だよね。ならもうじきナビさんから月経の停止を言ってくるはずだ」
「げ、月経の停止?」
「そう月経は女性の行動を制限するからね。だからナビさんが止めてくれるのさ。もちろん妊娠を望めばすぐに復活させてくれる。それで強く望めば、多分クーヤさんは抱いてくれる」
そうなのか、それならモンゴルに帰る前に既成事実を作って置けば、縁談を断れるのではないか。
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6章ではヒイが大変な目に合うかもです。




