5-17 決戦前
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すいません。決戦まで行きませんでした。
皇太子の味方をするかどうかを決めるため、皇太子に面会を要求した。
そこでクーヤは皇太子軍が反乱軍に対し、圧倒的不利だと告げる。
〇モンゴル皇太子軍 転移223日目
俺は反乱軍が広い草原で倍の兵力が待ち受ける作戦を取ることを伝える。
「信じられん。奴らの兵力は3万弱だったからこちらで3万を集めたのに・・・」
皇太子は頭を抱えた。敵は明日にもその草原に着く、今から先廻りはできない。
「まあ、君達の父親が貴族達に嫌われていたってことだろう」
「確かに東部は定住する部族が多く、西部は放牧する部族が多い。父の政策は東部寄りだと言われている」
「だとしても下劣な第一皇子を皇帝に据えるとはどういうことですか?」
俺はかなり失礼なことを言ったつもりだが、皇太子とジュチはそれどころではないらしい。
「うん、皇帝は馬鹿な方が操りやすい。第一皇子なら女を与えておけば、政治に口は出さんだろう」
俺はボルド将軍が考えていそうなことを言ってやる。
「奴らはそんなことを考えているというのですか」
「歴史を見ればそう言う奴はいくらでもいるだろう」
どうもこいつらは若いからなのか、裏を考えることをしないようだ。
隣に座るサラが耳に顔を寄せる。
「大丈夫でしょうか?」
さすが不安になって来たか。
「あなた方には新しい情報に対して即応力に掛ける気がしますが、どのような対策を取るつもりですか」
ジュチがムッとした顔になる。
「無礼な、モンゴル騎兵は敵に背は見せぬ。戦うまでだ」
「ジュチ!」
皇太子がジュチを窘める。
「我々には引き返すという手段は取れません。ここで引き返せば臆病者と蔑まれ、二度と皇帝候補に名乗り出ることはできなくなるでしょう。相手が待ち構えるなら、相手の陣を見て攻め手を考えます」
皇太子は潔く胸を張った。さすがに帝王としての教育が施されれているらしい。
「なるほど、ではあなたは皇帝になったとして、どのようなモンゴルにしたいと考えますか?」
皇太子の顔つきが引き締まったように感じた。
「私は父のやり方を踏襲し、産業を起こし、庶民を豊かにしたい」
「なるほど、でもそれは庶民が力を持つのを嫌う貴族達を敵に回すのではないですか」
「しかし、我が国を変わっていかなければ、いずれ大きくなった信帝国に飲み込まれるか、資源を搾り取られることになるでしょう」
ふむ、この男は戦争に才はなくても施政には才がありそうだ。
「そうですか。私はあなたに手を貸しても良いと考えています」
俺がそう言うと皇太子が不思議な顔をする。
「あなたが我らに力をとは、何をしていただけると言うのですか?あなたは領地も持っておられないのですよね。当然兵も持っていない。いや、持っていても数日後に行われる戦いに間に合う訳がない」
何を言っているんだと言うことですよね。
「私には異能がある。だからあなたを待つことができたし、敵に奇襲を掛けることもできる。あなた方の戦いが始まろうとした時、敵の本陣に闘刃姫が現れたらどうですか?」
「そりゃあ、敵は大混乱だろうけど、でも敵はこちらの倍。押し込まれるでしょう」
「あー想像力がありませんねえ。闘刃姫は当然第一皇子とボルド将軍の首を取って勝利宣言をします」
「信じてよろしいのですか?」
「闘う前にやっていただけないのですか?」
皇太子とジュチが質問して来た。
「あなたが頼めばやりますが、戦う前だと周囲にいる兵をまあ、1万は殺さねば難しいですし、皇太子殿下の戦果になりません」
敵が皇太子軍に向いてるときじゃないと敵兵が攻めてくるからね。
「敵兵を殺すのは問題ないじゃないですか?」
「私達に虐殺をやれと?さすがに数万相手だと手加減はできませんよ」
ジュチは戦後、信帝国がモンゴル兵を虐殺したとと受け取られないことを考えてない。
あくまで我々は目立たずに第一皇子とボルド将軍とその護衛ぐらいを倒して、その功は皇太子軍に渡したい。そうでないと天帝様に怒られる。あくまでも内政不干渉だからね。
「よろしくお願いしたい。ここに来た時は潔く戦って死のうと考えましたが、勝てる目が出来ただけでもありがたい。しかし、もし勝ったあと私は何を持って報いればよいのでしょう?」
皇太子が策を受け入れてくれてホッとした。
「そうですね。お父上のお考え通り留学生を派遣していただければ。予算が苦しければ交通費、宿泊費等すべてこちらで持ちますよ」
「それでは報酬にならないのではないですか?」
「それではインフラが整い次第、鉄鉱石・石炭・羊毛などを輸入したい」
「そのような・・・」
皇太子はもう開いた口が塞がらないと言った様相である。
俺達も闘刃姫寮へと帰った。
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〇闘刃姫寮
その日の夕食後。俺は皆に囲まれていた。
「聞いたよう。あんた、モンゴルの皇太子に参戦するって言ったんだってえ」
アオイが絡んで来た。
「そ、そうだよ」
「ちょっとお、今まで専守防衛やってたくせに、どういう風の吹き回し?」
確かに今までは俺達にちょっかいを掛けようとするやつらだけ相手にしてた。
「だって、ウランバートルの街の街襲って、娘達もさらって後宮に入れようとしたりしたんだぞ」
俺だって考えなしに参戦する訳じゃない。
「じゃあさ、なんで私たちまで参加するって言ってくれたの?今までだったら聞いてくれてたよね?」
う、厳しい所を突いて来るじゃないか。
「手伝ってくれないのか?」
「そんなこと言ってないじゃない。私達が聞きたいのはどうして今までと違う決断をしたのかってこと」
アオイの追及は厳しいし、他の皆もうんうんと頷いた。
「仕方ないだろ、君達が後宮にさらわれたらと思ったら、我慢が出来なかったんだよ」
俺の答えにアオイたちは納得してくれそうもなかった。
「フーン、で、誰がさらわれるのを想像したの?」
「そ、それは・・・誰でもいいじゃないか!」
全員からの圧がすごい。
「白状なさい!」
ビッっと指を指される。
「は、はい、ヒイです」
俺は白状してしまった。
「ぼく、さらわれたりしないよ」
「はあ、やっぱりか」
「そうだと思った」
「やれやれ」
「旦那らしいや」
「親分は」
あれ、「なんで私じゃないの」とか言われると思ったのに。
「バアタルはロリコンではないので、ヒイちゃんはさらわないと思いますよ」
サラ、俺もロリコンじゃないから。
「クーヤさんはね。最優先はヒイちゃんとミヤちゃんなの。二人は特別なのよ。
まあ、ミヤちゃんは強すぎてさらわれるイメージがなかったんでしょうね」
マシロさん止めをありがとう。でもあと数年は保護者でいられるよね。
「でも、6万人相手にするのに、どうしてリスクを考えないのですか?」
「ああ、それ、俺達は強くなってるよ。そりゃ魔人や身体強化した者とは互角だったけど、普通の人間なら無双できるぐらいにはね。どうも従者を増やすたびに強くなってるみたいなんだ。サラとミノンを加えたことでさらに強くなってるはずだ」
マシロの質問に俺は答えた。
「ごめん、アタイは強くなってる実感はないんだが」
「うん表面的にはそうさ。強くなってるのは魔力回路と魔力総量、俺一人でも6万人に勝てる。だから君達も異能の効果がかなり上がっているはずだ」
今度はアカネの質問に答える。
「兄上との話し合いでちょっと疑問があるんですが。なぜ相手が待ち受けてるところに突っ込んで行けないのですか。軍を停止して相手を狭隘な場所にもっていけば、半分な軍でも戦えるのではないですか」
「うん、その通りなんだけど相手がそれに付き合ってくれんだろうし、冬になる前に決着を付けなければならない。時間を掛けるわけにはいかないんだ。第一皇子がいる以上、時間を掛ければ掛けるほど皇太子軍は不利になる」
反乱軍が人口の多い所にいる以上、勢力が伸ばしやすいからな。
「と、とにかく明日からサラとミノンを中心に戦闘訓練をしてくれ。戦闘は奇襲でゲートで本陣を奇襲する予定だ。敵の犠牲は最小限にする。それから、もちろん参加は自由だ」
それから俺は皇太子軍と反乱軍の動きを確認しながら、戦闘訓練を繰り返した。
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〇広大な草原
反乱軍の待ち構える草原に来た。草原と言ってももう草は刈れて、カーキ色の平原だ。
もう3時間もしたら、皇太子軍もこの平原の反対側に現れる。
俺はミヤの闇属性の気配を隠す「隠形」を使っているので、まず見つかることは無い。
反乱軍からは慌ただしく二騎、三騎と四方へ出たり入ったりしている。
皇太子軍が回り道をして、ここへ来ないかもしれないと偵察しているのだろう。
だがここを通らないと言うことは、山を抜けなければならない。
移動速度が半分以下に落ちるし、隊列が伸びるので見つかればアウトだ。
結局ここへ来るしかないのだ。
6万の兵隊はほとんどが馬に乗っていくつもの四角形に並んでいる。一つの四角に千人ぐらいがいるのだろうか?
その後ろにいくつかの白いテントが並んでいる。
そのテントのうちどれに第一皇子が居るのか?
最低でも第一皇子を首にして皇帝軍になりえないことを示さないといけない。
ボルド将軍も首にできればいいが・・・。
一つのテントから裸の女が飛び出してきた。
後を追って上半身裸の男が出てきた。・・・第一皇子だ。
抜き身の剣で女を刺して何か叫ぶと、またテントへ入って行った。
恐らくウランバートルで攫われた女性の一人だろう。
ありがとう、おかげで第一皇子のいる場所が分かった。君の犠牲は無駄にしない。
俺は兵に片付けられる死体にお辞儀をした。
第一皇子は上衣を着て、真ん中の大きなテントに移った。
俺が行くまで、そこに居ろよ。
皇太子軍はそこまで来ている。
ここはそのテントの中。
「ボルド将軍、ナランの軍はどうだ」
「はい、あと3時間ほどでここに到着します」
テントの一番奥に座ったバアタルはふんぞり返った。
「なあ、もう、俺が皇帝を名乗っても良いんじゃないか?」
「モンゴルでは皇帝候補が複数いる場合は、戦って勝ったものが皇帝になると決まっています」
「ふん、もう勝ったも同然なのにな」
二人はナラン皇太子がまだ反乱軍が倍になったことも、バアトル第一皇子が加わったことも知らないと思ってる。
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次回は決戦が開始されます。




