5-12 武闘会予選開始
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今回は武闘会が始まりますが、ほとんどサラの話です。
モンゴルの皇太子と反乱軍の決戦が迫る中、サラとミノンは反乱軍に加わった第一皇子を倒すため、クーヤの従者に立候補して来た。
〇天帝執務室 転移217日目
クーヤはサラ達の願いを天帝に話した。
「まったく武闘会の開会式から帰ってくればそれか。兄上、どう思う?」
「そうだな、第一皇子は馬鹿だからな。皇帝になったところで、信帝国に歯向かってくることはあるまい」
「ならば、ことの成行きを見守った方が良いか?」
兄妹は保守的になっている。
「一つ言わせていただいてよろしいか?」
「なんじゃ、情に訴えても無駄じゃぞ」
天帝はクーヤの話を折ろうとしてきた。
「いえ、産業革命の話です。来年度より学校が開始され、地方から学生が勉強しに来ます。5年後各地に工場が乱立します。10年で供給が需要を上回り始めます。つまり工場で作った物が売れなくなります。どうなされますか?」
天帝が困った顔をする。
「工場を建てるのを制限するか?うーむそれだと地方が騒ぎそうじゃな」
「もちろん需要の予測によって工場を制限をするのは賛成です。しかし、物が行き渡ればそれ以上は売れません」
「確かに、行き渡るまでと行き渡ってからとは需要が違うのは解る。でもそれは仕方のないことじゃないか」
コウメイ様まで信帝国の中でしか考えていない。
「外国に製品を売りましょう。余った製品を外国に売るのです」
「そんなことをすれば、その国の産業を潰してしまう。恨まれるぞ」
「技術も売りましょう。そうすれば手工業から工場生産へ移行が出来、相手国も豊かになります」
「そうなれば我が国の製品が売れなくなるじゃないか」
「わが国は品質と付加価値で勝負するのです」
これはまず成功しない、安さには勝てないのだ。
まあ、気休めだ。でも競争をしないと衰退していくからな。
「なるほどな、技術を世界中で共有して、ずべての国が豊かになっていくのだな」
この世界は火薬がない。
つまり破壊力の大きな兵器がない
製品が売れなくなった国が、弱い国を植民地にしていくようなことは起きにくいだろう。
ペリーが日本に行ったような恫喝外交がやりにくいのだ。
まあ、うちのアオイとナータがそのうち作りそうだけどな。破壊力に特化した兵器。
「だから、モンゴルは皇太子が勝った方が良いと言いたいのか?」
流石コウメイ殿、分かってくれてる。
「そうですね。前皇帝は製鉄所に興味を示していました。しかし、皇帝を弑したボルド将軍がその道を歩むとは思えません」
「ふむ第一皇子にそれが解る脳があるとは思えんな」
辛らつだなあ。
「それでも、この度のモンゴルの反乱に、我が国が介入する価値があるとは思えんが」
「南越とか西域とか信帝国の周辺国は敵対してますよね。同盟国を作っておくとあとあと楽が出来ますよ」
クーヤはこれくらいやって置けば、サラへの言い訳も立つだろうと考えていた。
「それでも信帝国は内政不干渉だ」
天帝がそう言うとクーヤはホッとした。
「クーヤ殿がそれをやるというなら、我らは止めるつもりはないぞ」
コウメイが個人の責任でやれと言って来た。
「ちょっと待ってくださいよ。何のフォローもしないつもりですか?」
このまま進められるのは拙い。
「狙うなら、決戦開始直後だ。奴らは決して前線に出ない。最後方にいる。そこを狙え」
もう、俺達が単独でやることになってる。
「クーヤよ。やらないならそれでもいい」
天帝はクーヤを諭すように言った。
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〇闘刃姫寮
マシロとアカネは武闘会の予選が終わって、寮の食堂に帰って来た。
「あー疲れた」
夕食前だがライヤしか食堂にいなかった。
「みんなは?」
「アオイさん、ナータはまだ工場、ヒイちゃんとミヤちゃんは移民の夕食準備、サラさんとミノンは執務室に呼ばれてる。
ドーテとジュレイとマールは移民の輸送でしばらく帰れないよ」
「アタイ達が頑張ってるのにだーれも見に来てくんないの」
アカネが零すとライヤが愛想笑いを浮かべた。
「仕方ないよ。工場は移民の受け入れ準備でごたごたしてるから。
でも、準決勝決勝ぐらいは見に行くから。
それでうまく行ってるの?」
「まあ、順調だよ。カクタスさんが強いし、あと2・3人強い人もいるしね」
「近衛隊長さんや警らのマオさん辺りが出てると面白かったんでしょうけど」
「あの人達は忙しいからね。ただ闘刃姫は出ないのかって言われるんだよね」
「玄武王都の試合がもとで開催されたからね」
「ジュレイかドーテが間に合えば、優勝者と試合させることも考えたんだけど、間に合いそうもないし」
「その日だけ帰ってくれば?」
「そうかその手もあるね。一回クーヤさんに相談して見るか」
三人が盛り上がってきたところにサラとミノンが執務室から出てきた。
「どうだった?」
マシロは事情は知っていたので聞いた。
「信帝国からの支援は受けられないそうです」
サラは諦めた表情で言った。
「そっかあ。天帝様とすれば皇太子との約束があるわけじゃないから、安易に動けないよね」
「そんなのサラが皇帝になれば良いじゃねえか」
「あのねえ、そんな事すれば第一皇子を倒してから、皇太子とも戦わなきゃならなくなるわよ」
「そうなのか?」
アカネの意見はマシロに簡単につぶされた。
「私達は従者には成れそうです。やはり暗殺の危険がありそうなので」
「国と戦うとなると私達では力不足です。あなた達の力になりたいとは思うのですが・・・」
「アタイはクーヤが戦えというなら、1万でも10万でも戦ってやるぜ。ライヤはどうだ?」
「そうですね。私もクーヤ様が死ねというなら喜んで死にます。もともとクーヤ様に拾って貰った命なので」
「あんた達ねえ。生きるとか死ぬとか簡単に言わないで。私達にはここで働くドワーフの人達やこれから来るドーテの村の人達の生活が懸かってんのよ」
「で、でもモンゴルの人達だって放っては置けないぜ。あのいけ好かない第一皇子に支配されるんだろ」
マシロに軽率な発言を窘められたアカネは負けるもんかと反論する。
「そうですね。バアタル皇子が政権を握れば、自身が奢侈な生活を送るために人民に多大な負荷を課すでしょう。かといって皆さんに一緒に死んでくれとは申せません。死ぬのは私達だけで充分です」
サラは静かに強く自分の意思を表すのだった。
そこにヒイとミヤが現れたので話は終わった。
夕食と風呂が終わって食堂にはサラ、ミノン、マシロ、アカネ、アオイの五人が残っていた。
「あなた達がなぜ従者になったのかはわかりました。でもあなた達は三人ともクーヤ殿と体の関係があり、いったいどんな将来を見据えているのでしょう」
三人がこの世界に来て、従者になった経緯を聞いて、サラが不思議そうに聞いた。
「まずね、三人は運命共同体なの。さっきも言ったけどこの世界でクーヤさんが居なければ、私達は言葉もしゃべれず、魔力を持たない価値のない人間なの。だからこの世界でより価値のある人間として生きたいの。その力を与えてくれるのがクーヤさんなのよ」
マシロは自分に言うように話す。
「でもあなた達は強いし、武闘会のような大きなイベントを企画できる。決して価値のない人間じゃないわ」
サラはとんでもないよ言い返す。
「だから、それがクーヤさんに与えられた力なのよ」
「姫様、私も家族には価値のない人間として扱われています。マシロ様の言うことはミノンには解る気がします。私もそんな力を与えてもらえるなら欲しいです」
「将来だったわね。将来は三人ともクーヤさんのお嫁さんになるつもりです。そのためにも与えられた力を使ってクーヤさんを育てていきたい。今はまだ信帝国の相談役ですけどもっと上を目指して欲しい」
「相談役より上って皇帝になるってこと」
サラは驚いて問い返す。
「うふふ、まさか。私達が考えているのは新天地、南北アメリカ大陸やオーストラリア大陸なんかはまだ開発されていないからそこで国を作ればどうかっていう話」
マシロは自信満々に話す。
「そのアメリカ大陸やらオーストラリア大陸なんて聞いたことがないけど、クーヤさんが与える力がすごいってことは解った。その与えられる力ってなあに」
「まず身体強化、体を頑健にするとともに魔力回路も強化、今まで魔力不足で使えなかった異能が使えるようになる」
「私が異能を使えるようになるの?すごい!」
「でもあなたの異能がどんなのか分からないから、すごいものかどうか?
それからインストール、これは日本で名人と呼ばれた人の霊を取り入れて、その人の技術を習得できるんだ」
「霊って死んだ人のことだよね大丈夫?」
「大丈夫だよ。頭脳や神経・筋肉なんかも身体強化されるからごく短い時間でその人の技術が手に入るんだ。私とアカネもイベントの総括者のインストールをしているから、武闘会の運営が出来るんだよ」
「武芸者も出来るんですか?」
「もちろんだよ。すぐに名人になれるよ。インストールのスロットは最初は二つあるから、武芸と機械の製造技術でも大丈夫だよ」
ミノンの問いにいつも見学してる機械工場の情報も混ぜておいた。
「じゃあ、繊維産業なんかもインストールできるの」
「そうね。日本は明治時代から繊維も機械も盛んだからね。大丈夫だと思うよ」
サラは喜んだが、次の瞬間なんとも形容しがたい顔になる。
「ここの従者って、みんなクーヤ殿に娶られるつもりなんですよね。私達もそうなるってことですか?」
「それは大丈夫じゃないかな。クーヤさんは無理強いしない人だし、キメイって人も女性の従者だけど他に好きな人が居るから」
サラは従者になる決意を新たにした。
ミノンはクーヤに娶られるのならいいなと思っていた。
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次回は武闘会と移民、モンゴル問題の推移の予定です。




