5-9 クーヤの忙しい一日①
ご愛読、ありがとうございます。
今回はクーヤの忙しい1日の始まりです。
皇帝をクーデターで失ったモンゴル帝国の第一皇子と第二皇女はその時信帝国に製鉄所見学に来ていた。
第一皇子は見学に使うすべての予算を奪って、皇帝になるためモンゴル帝国に戻った。
第二皇女は一文無しになって、闘刃姫寮に預けられることになった。
〇闘刃姫寮 サラの部屋 転移181日目
サラたちは夕食、入浴を終えて、おしゃべりの誘いもあったけど断って自分の部屋に入った。
おしゃべりは断ったけど、闘刃姫達はサラたちに起こったことを考えて許してくれた。
「ミノン、勝手にここに住むことを決めてしまったけど、怒ってないかしら」
サラは自分のベッドに腰かけてメイドのミノンに言った。
「いえ、ミノンは姫様の行くところには、必ずついて行きます」
素晴らしい忠義に聞こえるが、ミノンにも訳がある。
もともと帝城の下働きをしていたミノンをサラが見出して、自分の専属にしたのであるが、ミノンは貧乏旗本の娘で給金を貰え無くなれば、親にすぐさま売られてしまう身の上だった。給金の良い皇女のメイドをやめられるわけがない。まあ、今は皇女の立場も危うくなっては居るが・・・。
「姫様はこれからどうするおつもりなのですか?」
そう、ミノンはこれからどうなるかが最大の関心事だ。
「そうねえ、モンゴル帝国のことはここからじゃどうしようもないし、私の勢力って言っても微々たるものだし、まだ残ってるのかも分からないわ。私はナラン兄上が皇帝になってくれないと、この国で日干しかしら」
こんなことをあっけらかんと言う姫様にミノンはどう言って良いか分からない。
「心配だよね。でも大丈夫。クーヤ殿はね、女一人でも仕事を与えて生かしてくれるわ。なんなら従者になれば今の生活を維持できるよ」
サラはミノンの生活は心配しているようだ。
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〇闘刃姫寮 転移182日目
次の日、朝、ミノンは飛び起きた。
「寝坊した!」
もうカーテンの外はだいぶ明るくなっていた。
寝具が気持ち良すぎたせいだ。
サラを見るとまだ寝ていた。
ミノンは今までの生活を思い出す。
夜明けとともに起き、自分の支度をして、サラの朝の準備をする。
そう言えば、昨日部屋に掛けられた円盤型の数字が掛かれたもので、一日の活動を決めているらしい。
表面の周囲には白地に一から十二の数字が黒く書いてある。
黒い針型の物が2本、中心から伸びており回っている。
短い針が七になったら朝食が始まると言っていた。
長い針は短い針が数字を一つ進む間に一周する。
今、短い針が六を過ぎたところで長い針が六のところ。
つまり今度長い針が十二になれば朝食が始まってしまう。
ミノンは慌ててメイド服に着替えて、髪を整える。自分は適当でいい。
桶に水を汲んで、姫様のベッドの横に持っていく。
「姫様起きてください!朝です」
サラはすぐに目を覚ます。
顔を洗い、歯を磨き、その間に髪を整える、服を着替える。
円盤を眺めると十のところに来ていた。
ミノンは化粧道具を用意して化粧を始める。
周りでドアを開け閉めする音が聞こえる。ああ皆さんが朝食に行く。
「ミノン、慌ててはいけません。私は皇女としての威厳を保たねばなりません。落ち着いてやってください」
化粧を終えると長い針は一のところへ来ていた。
「もう朝食が始まっています。行かないと!」
ミノンは叫んだ。
「慌てないで、あなた、まだ顔を洗ってないでしょ」
ミノンはそう言われて残った水で顔を洗い、歯を磨いた。
長い針は二のところに来ていた。
「さあ、行きましょ」
階段を降りるとマシロとアカネ、アオイがいた。
アオイは目をこすって髪も寝起きのままだ。
「おはようございます。ごめんね。見苦しいとこ見せちゃって」
マシロが挨拶とアオイについて謝罪した。
「朝は無理ぃ、・・・起きれないぃ」
階段に寝転がろうとするアオイに苦労していた。
ミノンはその姿を見てホッとした。
食堂には一番奥にクーヤ、ヒイ、ミヤ、マールが居て、次のテーブルにはジュレイ、ドーテ、ライヤが居る。
マシロ達がアオイを引きずりながら来た。
ミノンはこれで全員かなと思った。
「またあいつは・・・」
クーヤが怒っている。
「ヒイ、ミヤ、ナータを起こしてきてくれ」
「アイ、」
「承りました」
二人の少女が風のように走って行った。
その後をのそりとオオカミがついて行った。
クーヤがサラとミノンのテーブルに来て、言った。
「今日は魔道具工場でも見学すると良い」
「はい」
「アオイについて行くと良い」
こうしてサラとミノンの闘刃姫寮生活は始まったのだった。
その日の昼過ぎ、天帝からクーヤに通信が来た。
『喜べ!武闘会の開催が決まったぞ』
「え、踊るんですか?」
『違う、武士の武、闘刃姫の闘じゃ』
「いつですか?」
『1か月後じゃ。そこでじゃ。お前のところから運営するものを出せ』
「慌ただしいことですね。どうしてまたこんな急に」
『お前達と魔人の試合が契機になった』
「はあ」
『お前達の試合を面白おかしく広げる者がたくさんいたのじゃ。それで庶民だけでなく貴族達も見たいと言ってきてな。今日の朝議で決まった』
そうか見られたのは玄武国の一部の人だけだもんな。
「分かりました。ただ、1か月では来られる人も限られますから天都周辺になりますね
『なるべく広く頼む。貴族達は自分の部下を出したいだろうし、けっこう参加人数は増えると思う』
「分かりました。マシロとアカネを派遣しようと思います。明日には行けると思います」
『解った。こちらも受け入れ態勢を取る』
クーヤは食堂に行き、食事で帰ってきてたマシロとアカネに伝える。
二人は訓練に毎日行く必要はないなと感じており、二つ返事で了承した。
必要知識はインストールで手に入れられるからだ。
今、訓練以外の仕事を持っているのはアオイとナータが魔道具開発、ライヤが工場関連のナオジのフォローだ。まあ、ヒイとミヤは俺のお世話と言い張ってはいるが。
クーヤは他の者もチャンスがあれば責任を持った職を与えたいと思っている。
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〇闘刃姫寮 転移215日目
サラたちが来て1か月が過ぎた。
秋の色が深まってくる季節となった。
執務室に居るクーヤの元にドーテが走り込んで来た。
「母ちゃんから連絡が来て、移住の用意が出来たって言ってきた」
ふーむ大分ましになって来たがまだ言葉は荒いし、所作に優雅さがない。
重要な仕事を任せようとすれば言葉や所作は大事だからな。
「よし、今日行くぞ。新しい村の用意はできてるな」
「うん、台湾村はすぐにでも使えるよ」
工場の近くに村を3つ作った。一つは台湾山岳民族を入れる台湾村、もう一つはバンコ族を入れるバンコ村、最後は村上水軍や鬼人族の家族で来るものに向けた村だ。独身者は寮に入って貰うつもりだ。
収穫が終わってからの移住だから、村としての移住は台湾が初めてである。
それだけに失敗は許されない。
クーヤが食堂に出る。
「あ、クーヤ、ちょうどいいとこに、武闘会が明日からなんだけど、最終確認に来てくれよ」
アカネが話しかける。
「クーヤ君、機織り機の試作が出来たんだよ。ちょっと見てくれるかい」
繊維工場の稼働も来年早々を見込んでいるので、アオイの方も忙しい。
「クーヤ様、製鉄所の製品ですがどれを優先させるか相談に乗ってください」
最近製鉄所の製品が多岐に渡るようになり、生産の優先を決めないと各後工程の日程が組めないようになってきた。
「待ってくれ、台湾は午前中で済ませるから・・」
クーヤは皆に頭を下げながらドーテの手を引っ張った。
「そんな、俺一人でどうしろって言うんだよ?」
そのまま作業室に入るとクーヤは台湾に跳んだ。
山岳民族の村の上空に転移したクーヤは、空き地にヒイの家を建ててドーテを呼ぶ。
「ドーテ、移民の人数を調べろ」
クーヤは意味に必要な資材を検討する。
ドーテは母親と話し込んでる。
「移民はここからが101人、台中からが84人だ、です」
ドーテが移民総数を報告して来た。
「ゲートを通るのか、ですか?」
「いや、魔力の少ないものにゲートは危険だ。船で厦門に行って、そこからはバスで6日の旅だな」
「荷物もたくさんあるんですよ」
母親も参戦して来た。
「大丈夫ですよ。荷物はこちらで預かります。ドーテ、先に台中の人達を厦門に連れて行けるか」
「船が朝と昼だから明日の朝ならできると思うよ」
「良し、こうしよう。ドーテとお母さんは、これから台中に行って、明日の朝の便で厦門に行ってもらう。
こちらの村の人は明日の昼の船に乗れるようにここを出てもらう。足が悪い人や小さな子など歩くのが無理ならワンボックスで連れていけ。運転手が要るからインストールで用意しろ。バスは厦門の天華商会に用意させておく」
「俺はどう動けばいいのかな?」
「ドーテはまずスクーターでお母さんを連れて、台中に行き、台中で暮らしている人に明日の朝の船で厦門に行ってもらうように準備させる。その間にこの村の人には持っていく荷物をまとめてもらう。
その後、お前は母親を村に送って明日の移動の準備をさせる。
お前は荷物を収納に放り込んで、台中に戻る。台中の人の荷物を収納に入れて、明日の朝の船に乗る。
厦門に着いたら台中の人と協力して宿泊設備を建てる。これは毎晩やることになるから慣れておけ。食料は毎食収納に用意する。
夕方、お母さんたちが付くからその日は厦門で宿泊、あとはバス4台で天都に向かってくれ」
「バスってあのでっかいゴーレム車か。あんなのどうしたんだ?」
ドーテは巨大なゴーレム車が、いきなり現れたことに驚いていた。
「ああ、あれか、日本のとある自治体がイベントのために外国から買ったんだが、故障が多くてイベントが終わったら野ざらしになってたんだ」
「日本のジチタイとやらは馬鹿なのか?治せばいいだろう」
「直そうと思うとたくさんの金がかかるし、売るにもすぐに故障するから売れない。分解にも金が掛かるから放ってあるんだ。
100台以上あったけどただではまずいと言うので、1台大銅貨1枚で買ってやった」
「そんなに安いのか?」
「もとは1台金貨数十枚だ」
「そのジチタイと言う奴は本当のバカだな」
ドーテは信じられないという顔をする。
「いや、自治体の偉いさんがバスを売ってるところからワイロを貰ってるのさ。だから文句も返品もできない。もともとは庶民から集めた税金だからな」
「なんて言う奴、殺したい」
「日本にはそう言う奴がいるんだよ。税金を自分の金にするために活躍する奴がな」
「俺は旦那が居た日本って国はすごく良い国だと思ってた。そうでもないんだな」
「まあ、全部がそうと言う訳じゃないんだが、まあ、他の国に比べれば良い国だと思うぞ。帰りたくはないけどな」
「でも、いやだ」
「しかし、こちらが助かったのは確かだ。まだ車本体を作る力はないからな。
天帝様がせっかく整備してくれた街道を走らせるものがなかったから助かったよ。
船外機用の一番デカいゴーレムエンジンを入れてあるから速いぞ。
だいたい故障するバッテリーとモーター外すから品質も大丈夫だ」
オオ、忘れていた。
キメイに台中に船と船中食のチケットを届けさせないと。
しかし、キメイもやるなあ、すでに台中にも進出してるなんて、あの定期船を運航してるのも天華商会だからな。
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
次回もクーヤは忙しそうです。




