5-8 第一皇子脱走
ご愛読、ありがとうございます。
今回は第一皇子が帝城かは脱走。残された皇女はどうするのか。
モンゴルにクーデターが起き、皇帝が弑された。信帝国は無介入を決めたが、なぜかクーヤには現地の様子を探らせたりする。
〇闘刃姫寮 食堂 転移181日目
昨日帰ってからは各自やることがあったので、今日朝からモンゴルに関してのことを全員に共有することにした。
「へー、こないだの襲撃事件にはそんな裏があったんだね」
「でも、皇女が狙われて、皇子が狙われないのはおかしくないか?」
「そうだよな。普通は生まれより男じゃねえの」
「いずれにせよ、信帝国が放置って言うなら、私達に関係ないな」
「まあ、戦争に巻き込まれるのはまっぴらだ」
「戦争となれば手加減もしてやれないじゃない」
俺に感化されたのか戦争回避の考えが多いみたいだ。
「そういやあのM4カービン銃ってなんだよ?」
「ああ、あれはサブマシンガンの磁力加速装置の段階を3倍にして作ったコイルガンだよ。当然バレルはステンレス鋼に変えてある。射出時の速度は倍で約マッハ2だよ」
アオイはでかい胸が上を向くほどドヤって来た。
「私も手伝ったんだよ」
ナータがそっくり返っても薄い胸は上を向かない。
「今はねえ、弾丸の形を流線型にして口径を大きくしたマークスマンライフルとマテリアルライフルを開発中なんだ」
西側の銃の口径は世界基準と米英基準がある。世界基準はメートル法だが米英基準はインチ法だ。
米のアサルトライフルは22口径の5.56mm、マークスマンライフルは30口径の7.62mm、マテリアルライフルは50口径の12.7mmとなる。
なぜインチ基準がまかり通るのかと言えば、インチ法を使う米がNATOに対して圧倒的な力を持つからである。
ちなみに航空機の距離高度の単位もマイル、フィートを使うのは同じ理由である。
速度の単位は航空機、船ではノット(海里/時)に変わるので注意が必要だ。
なぜ、アサルトライフルが主流になったかと言えば、それまで主流であったバトルライフル(30口径)はフルオート(連射)で撃つと反動が大きくて制御できないからである。
ベトナム戦争で東側のアサルトライフルのAK-47にひどい目に遭った西側が反動の口径を小さくしたライフルを開発したのだ。
ちなみにAK-47は口径はバトルライフルと同じで、火薬量を減らして反動を減らしている。
マークスマンライフルはアサルトライフルでは弾丸が軽く遠くまで飛ばないので、バトルライフルと同じ弾丸を使って銃の精度を上げて、狙撃に使えるものを小隊に入れておくことで、アサルトライフルの射程が短いと言う弱点の補強を狙ったものだ。
マテリアルライフルは第一次世界大戦では対戦車ライフルと呼ばれるもので、口径の大きな破壊力のある弾丸を使って、狙撃することを目的としたライフルである。
記録では4000mを超える狙撃記録もあるほどの武器である。
ちなみに装甲の発達した現代の戦車にはまるで歯が立たない。
ここで書いたことは一般的なことで、例外も多いのでいじめないでね。筆者としてはアオイの開発理由を説明したかっただけです。インチヤード法をごり押しする米の横柄な態度にも文句を言いたかった。
ちなみにライフルの口径を6.8mmにする動きが米に出てます。
「しかし、それを戦争で使ったら一方的で虐殺にならないか?」
アオイの使うサブマシンガンは弾は小さいし、威力も低いので殺傷能力は低い。
「無駄に多くの人が死ぬより良いんじゃない」
圧倒的な力を見せれば、味方も死なず、相手の損害も減らせるのか?
「ヒイちゃんやマールの異能を生かすなら良いと思うけど」
マシロもそう言うのか。
ヒイの異能は狙撃、マールの異能は命中だ。確かにライフルの機能と合致する。
「クーヤ殿はなぜ敵に情けを掛けるのか?それで味方の損害が増えてもいいのか?」
おお、ジュレイが怖い。
「アオイに聞く。お前は蓄石を使うことを考えているだろう」
ジュレイに言われて俺は疑問と言うか、恐れと言うか・・聞いてみた。
「うん、考えてる。だってアサルトライフルは魔力がウージーの三倍いるんだよ」
すぐにアオイは肯定した。
「魔力が豊富な俺達と違って、普通の人間はアサルトライフルは魔力不足で撃てないだろう。いやサブマシンガンでも無理だ」
「あ、」
アオイは気付いたようだ。
「どうしたアオイ、」
アカネが青い顔をしたアオイを気遣う。
「兵器の歴史と言うのは、新しい画期的なものが出来れば敵はすぐに模倣する、を繰り返してきた。兵器を誰でも使える物にしてしまえば、いずれは敵も作る。人間をなめちゃいけない」
蓄石を入れることで、誰でも使える兵器となれば戦争が変わる。
「特にナータ、ファティマ王国は対魔人兵器として欲しいんじゃないか?」
「うん、欲しいよ。父上には貸して貰えるよう頼めないかと言われてる。でもここに居られなくなりそうだから断ったよ」
アオイはホッとした顔をする。
「ねえ、僕の事ちゃんとした従者にしてよ。秘密を守る契約もするから」
まあ、今までもナビさんが見張ってたと思うよ。
「解ったナータ、おまえを俺の従者にする」
ナータの身体強化、インストールが解禁された。
ナータの覚悟を見て、俺も覚悟を決める。
「よし、これからどんな敵が現れるかもしれない。兵器の開発は許可するが外部には必ず秘密にすること」
「そうか、敵が真似することも考えないといけないのか」
ジュレイも納得してくれたみたいだ。
「ジュレイ、分かってると思うがライフルが実用化されれば、刀など無意味になる」
「へ、そ、そんな」
あ、分かってなかった。
何百mも先から音速を超えてくる弾丸に、刀でどう対処しようと言うのか。
そうだ、俺には相手に防御も反撃もできない武器を使っていいのかと言う考えが頭から抜けない。
日本人の平和ボケだと言われればそうなのだが、俺の信念として残しておきたい。
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〇帝城 天帝執務室
俺は昨日の約束を守って天帝執務室に来ていた。
今日は対モンゴル帝国の大筋が決定される予定である。
挨拶をすると一人足りない。
「あれ、第一皇子はどちらに?」
天帝様がムスーッとした顔をして言った。
「逃げた・・・」
「は!?」
俺は変な声が出してしまった。
「この製鉄所見学関連の予算と貴族や自分のお付きなどを引き連れて、今日の朝、帝城を出た」
「そんなことをしてどうなると言うのですか?」
「知らん!ただ本人は皇帝になれると息巻いておったらしい」
天帝様は頬杖をついて明らかな不機嫌顔だ。
「まあ、ボルド将軍も兵の集まりが悪ければ、彼を利用すると言うことも考えられる」
コウメイ様がぼそっと言った。
「どうするんですか?」
俺が聞くと天帝様は呆れた顔をした。
「うん、我が国が動くどおりがあるのか?」
そうですよねえ。
「ただ、あいつが皇帝になると、まずいんじゃないかと思いまして」
「その時は断交するだけじゃ。あんな奴と付き合えると思うか?」
ああ、完全に見限られてる。
「まあ、クーヤ殿には今後もモンゴル帝国の動きを見張っていただきたい」
コウメイ殿がモンゴル帝国の話を打ち切るように言った。
「モンゴル帝国については今後の様子を見ると言うのが、今日の結論じゃ」
ええー、それだけ!?
「それじゃあ、俺が来た意味はあるんですか?」
「もちろんじゃ。そこに居るサランゲラル皇女だが、皇子に全部持ってかれて無一文となった。また、本国はクーデターで支援も期待できん。かわいそうじゃろ」
あ、そうか。彼女はもうあてにする勢力は、逃げている皇太子しかいないんだ。
「はあ、そうですねえ」
彼女は項垂れていて一言も発しない。
「しかもだ。モンゴル帝国がボルド将軍の物になれば、命も狙われる。帝城も金がないなら置いておけん」
ええ、追い出しちゃうの。可哀そうにと思ってたら、天帝様がこの馬鹿者めって顔をする。
「お前のところで面倒を見ろ」
俺はサランゲラル皇女を見た。
俺に向かってほほ笑んだ。
やられた。
今日の会合は俺に皇女の世話をさせるための茶番劇だったのか。
ここまでやられては俺に断るすべはない。
「分かりました。皇女様、我が闘刃姫寮においでください。お守りいたします」
俺は頭を下げた。実際俺がこういわないとこの茶番は終わらないからな。
闘刃姫寮であればお金がほとんど掛からないし、不特定多数が出入りする帝城に比べて警備しやすい。
何より、一騎当千の戦士が常時たくさんいる。
最悪亡命することになっても仕事を斡旋できる。
「ありがとうございます。闘刃姫寮なら世界一安心できます。さっそくメイドと二人でお邪魔いたします」
女神張りの笑顔で応えてくれた。
ああ、あとはマシロに皆への言い訳を頼むか。
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〇闘刃姫寮
俺はワンボックスでサランゲラル皇女とそのメイドを連れて寮に戻った。
皆を食堂に集めて挨拶をした。
一応こうなった経緯はマシロから説明させてある。
「モンゴル帝国から来ました。サランゲラルです。サラと呼んでいただけると光栄です。
皆さんの服装はとてもかわいくて興味があります。それも含めていろいろ教えて欲しいです」
服装に興味があるならこれから作る紡績、織布、染色、縫製の各工場の一つを任せられるかな。技術はインストールで何とかなるしな。
サラの後ろに居た少女がこそっと前に出る。
細く小柄で金髪の巻き毛で頭の両側に角が丸まっている。
「サラ皇女のメイドをしています金羊族のミノンと言います。よろしくお願いいたします」
勢いよくお辞儀をするとまたサラの後ろに隠れた。
「黒狼族のヒイだよ」
「猫人のミヤです」
「日本人のマシロです」
「同じく日本人のアカネだ」
「同じくアオイだよ」
「白虎国王女のジュレイだ」
「台湾山岳民族族長の娘、ドーテだ」
「ドワーフ族族長の妹ライヤです」
「エルフ族の一応王族のマールだ」
「ファティマ王国王女ナータだよ」
「天華商会のキメイです。よろしくお願いします」
ありゃキメイまで来たのか。
それにしてもここの住人は増えたもんだ。
「三階の空き部屋に入って貰う。マシロ、家具は用意できてる?」
「はい、すでに運び込んであります」
俺達は居候を抱えてどうなってしまうのか、心配だ。
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
次回は話が1か月帆に飛ぶ予定です。




