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085 いつかやると思ってました



「私は、あいつが怪しいと思う。ほらあのオッサン。

雪で孤立した館や絶海の孤島なら、

殺人犯なんかと同じ部屋にいられるか!わしは部屋に戻らせてもらう!

とか言って、密室の中で殺されてそうな感じだわ。

二番目の被害者になりそう」


美涼は、AH‐040エミリヤ開発のスポンサー企業の上地部長の名前を挙げた。


「ええ、あきらかに怪しいわ。

性格も陰険そうだし、目つきも悪いし。犯人面ってやつ?

城のカードキーは社員が管理しているから、城の中に入る手段はある。

エミリヤのことも熟知しているから、バラバラに分解するための工具や技術も持っていそう。

動機は福山博士への嫌がらせかしら?

エミリヤと同じ、心を持ったロボットを作らない福山博士に、隠している技術を提供させるための脅し」

美涼の想像に同意する晶の意見を、融は否定した。


「だから、修理不可能なまでに破壊した。

でも、それはないんじゃないか。

上地は何もしなくても、ただ待っているだけでエミリヤが手に入る。福山博士からロボットを合法的に奪うことができた。

わざわざ事件を起こす必要があるとは思えない。

壊すにしてももっと穏便に、例えば事故に見せかけることも可能だったはずだ。

しかも、今回の事件で博覧会の宣伝費が無駄になる。

会社の利益のために動いたとしてもおかしい」


「保険金は?

多額の保険金がエミリヤには掛けられていたはず。

それでプラスになるんじゃないの?」

美涼は思いついたことを話してみた。


「ある程度の額は下りるみたいだけれど、上地部長の懐に入るわけではないわ。あくまで会社によ。

なのに、警察に捕まるほどのリスクを冒すかしら?

むしろ、上地部長は今回の件で会社内の評価が下がる可能性の方が高い。博覧会に出品していた目玉商品が無くなるわけだし、会社としても社会的なセキュリティーの評価も下がって、いいとこなしといってもいいわ」

融に意見を聞いて、晶も上地が犯人である可能性は低いのではないかと思い始めた。

でも、今回の事件では関係が無くても、何かやらかしてそうだとは思っている。見た目だけでいえばかなり怪しい人物だ。第一印象も悪い。



「なぜ犯人はバラバラにする必要があったのか。

世界に唯一の高性能ロボットを盗むのならわかるけど……。

破壊が目的でも、プログラムを消す方が早いし楽じゃない?

わざわざ、バラバラにした目的は感情的な理由かしら?」

バラバラにした理由。

美涼は、発想の視点を変えて考えてみた。


「動機は怨恨の線も出て来たわね。


強い恨みが、残虐な犯行につながった。

エミリヤに深い恨みを持つ人物……」


二人の視線が合わさった先には融がいた。


「犯人は、お前だ!」


二人の迷探偵の息はぴったりだ。

人差し指で融を指さしている。


「ないない。なんで僕がわざわざロボットを壊さなきゃならないの。恨むようなこともされてないし」


「みんなの前でふられたからよ。

ガラスの十代、プライドを傷つけられたことが許せずに、口論の末、ついカッとなってやった。今は反省している。

あなたが断られていたのを見ていた目撃者は、私を含め大勢いるわ。

嫌がるエミリヤに力ずくで無理矢理……。

あなたを犯人です。」


「この、桜吹雪を見忘れたとは言わせねぇぞ!

融を犯人に仕立て上げれば、事件は解決。

市中引き回しの上打ち首獄門。

これにて一件落着!

いつか絶対にやると思っていましたって、モザイク越しにワイドショーで面白おかしく、あることないことぶちまけてあげるから安心なさい。高視聴率がとれること間違いなし。

まずは卒業文集をさらすところかは始めないとね」


「弁護士を呼べ!不当逮捕だ。

だいたい、ロボットが恨まれていると考えるより、開発者の福山博士や所有権を持っている会社が恨まれていると考えた方が自然じゃないか?

怨恨を疑うのなら、そちらを調べてからにしろ」


融の弁解を無視して、美涼があることを思い出した。

「あれ?

ちょっと待って、こいつと私は同じ部屋だからアリバイがあるのだったわ。

うっかり忘れちゃってた。

残念」


(ひどい!)


「……疑いが完全に晴れたわけじゃないわ。

限りなく黒に近い灰色というだけなのよ。

疑わしきは罰せず。悪い奴ほどよく眠るということかしら。


波川美涼と転法輪融の共犯の可能性が出てきたということね。

とりあえず保留ということにしておきましょう」

晶は後半の言葉を美涼に聞きとられないように小声でつぶやいた。


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