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045 身代わり作戦


「裏切り者」


晶の様子を融が見に行くと、目を細めて恨めしそうに見る晶にそう言われた。


(お前にだけは言われたくない!

しかし、僕は月城晶と良好な関係を作らねばならない。

なぜなら、将来、裏切った月城晶が差し向ける改造人間が、僕を殺しに来ないようにするためだ。

生き残る可能性を上げるための努力は惜しまない!)


「なによ」

「海で遊びたいか?」

「は?」

「遊びたいなら、手を貸そう」

「なにするつもりよ」

晶が融に向ける視線は、不信感に満ちている。

「ちょっと待ってて」



これは融一人でやることにしていた。

進馬たちに協力を求めると、美涼の耳に入って面倒なことになりかねない。

(作戦内容は、一人抜け出した修学旅行の時とほぼ同じ。身代わり作戦)


融が連れてきたのは、晶の親友、水着姿の武東鋼だった。ちなみに本人の許可は得ていない。

木陰の下でグゥグゥ眠っていたのを、勝手に連れてきた。


「身代わり作戦だ」

「あなたアホでしょ」


融は最後まで説明を続ける。

「ほとんど説明が要らないと思うけど、一応詳しく説明させてもらう。

寝ている鋼に、晶の制服を着せてここに座らせておく。その間に、晶は鋼の水着を着て海で遊ぶ。以上」

「すぐに見つかって、今まで以上に叱られるわ」

「見つからないような工夫も考えてある。まず、鋼には月城晶マスクを被ってもらう」

「なにそれ!いつ作ったのよ」

「次に、売店で買ったパーティー用のかつらを被らせる」

「色とか微妙に違うわよ」

「海で遊ぶ晶を隠す工夫は、同じく売店で買った麦わら帽子にサングラス、そして、観光客向け文字入りTシャツ!!」

爆熱の太陽(筆文字刺繍風プリント入)

「ダサい」



それでも、晶は海で泳ぎたかったみたいだ。

他にあてもなく、融の作戦に従って女子トイレで鋼と服を取り換えてきた。

鋼の方が身長が高いため、ほんの少し制服が小さいように見えるけど、問題無い範囲内だった。融が月城晶マスクとカツラを被せる。

(カンペキ)

武東鋼の水着に着替えた晶は地味に精神的ダメージを受けていた。

身長は鋼の方が高いのに、若干サイズがきついのだ。

Tシャツを着て、サングラスに麦わら帽子で顔を隠す。


「見回りの先生が来た。隠れろ!」

融と晶が物陰に隠れて、身代わりにした鋼の様子をうかがう。

じっと観察したあと、教師は何も言わずに立ち去った。


「計画を聞いた時は、心の底からアホだと思ったけど、意外と何とかなるものね。時間が無いわ。さっ遊びに行きましょう」

融は、身代わりをやっている鋼をちらっと見てから、海へと向かう晶を追いかけた。

(どうでもいいけど、眠っているはずなのに、なんであんなに正座の姿勢が良いんだ?)




一方、融たちが調査した工場では、一人の管理者によって隠ぺい工作と、侵入者の情報収集が行われていた。

地元の警察は、署長に賄賂をやって黙らせた。報道関係には部下を複数人潜り込ませてあった。連絡して事件の隠ぺいを指示する。

軍用ロボットの戦闘記録を回収。壊された工場機器も動画で記録しておく。管理者は社内の情報分析担当者へデータを送信しなければならない。

戦闘記録には軍用プロテクターを装着した小柄な一人の女性超能力者が映っていた。

戦闘能力は高いようだけれど、詰めが甘い印象を受ける。監視カメラは破壊しているのに、こうして映像が残ってしまっている。軍用ロボットの返り討ちにあい、結局工場から何も持ち出せていない。

管理者は壊された屋根を修理するために、建築業者に連絡することにした。

さいわい、壊されたのは玄関付近の屋根で、今管理者がいる部屋みたいな見られて困るような物は何もない。

下手なことをして、これ以上怪しまれることは避けたい。普通の企業として修理を依頼するつもりだ。

管理者は通信妨害を解いた。




管理者は、建設業者と修理について話していて気が付かなかった。

ピッと電子音がした。

「データが送信されました」

機械合成音による女性の声が告げる。

融が残していったセンサーが、調査機関に位置情報と薬品データを送信した。

この杭の形をしたセンサーは、土壌汚染を調べるために地面に刺すのが正しい使い方だ。

間違った使い方をしたために、調査機関にはありえない数値が送信されてしまった。位置情報から工場の連絡先を割り出して、通信を試みるも、建設業者との通信を終えた管理者が、通信妨害を再起動した後だったために連絡が付かない。

違法な薬品による重度の土壌汚染のデータに国の上層部は大騒ぎになっていた。

中央の軍の対化学兵器テロの特殊部隊や警察組織、専門の科学者の調査団が集結し、緊急出動した。

住民のパニックを避けるため、すべては秘密裏に行われていた。


代表会議の家族である子供たちの修学旅行先が近くにあることが分かり、彼らの避難を優先して行う命令がすぐに出される。



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