表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
43/90

043 旅の別れ


声の主は月城晶だった。

「大人しくお外で待っているように言ったじゃん!」

「私が助けに来なけりゃ、あんたやられていたでしょう!」


二人とも走って逃げている。

融が後ろを振り返ると、暗闇の中、ロボットの電源ランプの赤い光が猛獣の目のように輝いて見えた。

「さっきの攻撃は何だったんだ?炎じゃないみたいだけれど?」

「ここは化学薬品工場だから、火はマズイかなと思って、これを使ったの」

晶の手にはジュースのペットボトルが握られていた。

「水を浮かせて、ロボットのセンサーの前で急激に加熱して、爆発させたのよ」




融も晶も工場の外へと出た。

「これで助かったのか?」

「まだ安心できないわ。そういうわけで、もう一発!」

また、水の塊がふわふわと浮きあがり、工場内部へと進んでいく。先ほどよりも塊が大きい。

「爆ぜろ!」

爆発音と共に、屋根に穴が開いた。近隣の家々に明かりが灯って、人が出てきた。


(なにやってんだ!)

融は晶の腕を引っ張った。

「早く逃げるぞ!」

「待って。まだ、とどめを刺せたのか確認してない」

「人が集まってきちゃうでしょうが!修学旅行勝手に抜け出しているのがばれたら困るのは、おまえだろうがよ!」




融と晶は人混みにまぎれて、逃げ帰った。アパートまで帰ってきた頃には空が明るくなり始めていた。


晶は疲れたので少し寝ると言って、部屋に戻った。融はプロテクターを脱いで、水でも飲もうとキッチンまで行くと勇助が起きていた。

「おはよう、君も朝のランニングかい?シャワーを浴びたらいいよ。

僕はこれからさ」

勇助はニッっと微笑んで、それじゃあと言って出かけてしまった。


融が汗を流し終えて、体を拭いていると、背後から誰かに抱きしめられた。

「勇助く~ん。おはよ~。あれ?なんか縮んだ?」

寝ぼけて、だらしない格好の泉が抱きついてきていた。朝が弱いところは姉妹でよく似ていた。

(撮影、撮影)


「ひゃ~、間違えちゃった!」

黄色い声を上げながら、逃げて行った。

その後、ちゃんとした格好で出てきた泉は、そんなことは無かったかのように振る舞うのであった。


朝食を勇助や泉と仲良く食べていると、メガネ型情報端末のアラームが鳴った。この音は融以外には聞こえないように設定されていた。

(きれいさっぱり忘れていた!)


修学旅行最終日は、リゾートホテル近くのビーチで遊ぶ予定になっている。

勝手に抜け出した事をばれないようにするには、その日の朝食後の点呼の時間までに戻らなければならない。

「すみません!すっかり忘れていたのですけれど、もう帰らないといけないのです!」

融は立ち上がって、慌てて部屋に戻る。

「晶!晶!起きろ。間に合わなくなっちゃいますよ!」


へんじがない、ただのすいみんちゅうのようだ。


「急ぐのかい?」

「ええ、とっても。今すぐにでもここを出ないと間に合わなくなりそうなくらいに……」

「それは大変だ。送ろう!」

融は晶の分まで荷物をまとめる。

「晶、出発するぞ!お姉ちゃんたちとお別れをちゃんとしろ」

「あー。ねーちゃん、ばいばい」

「この子、本当に学校ではちゃんとやれているの?おバカなことやって迷惑かけてない?」


勇助が晶を負ぶって、階段を下りると、泉が呼んだらしい車が止まっていた。

「リゾートホテルまでお願いします」

サングラスの運転手は、昨日のバーベキューで焼きそばを山盛りにして食べていたおじさんだった。グッと親指を立ててニカッと笑った。

バックミラーを見ると、昨夜集まっていたご近所の皆さんが手を振っている。

窓を開けて、手を振り返した。

遠く姿が見えなくなるまで振り続けた。




送ってもらったおかげで、融は間に合うことができたのだけれど、結局月城晶は叱られることになった。


(僕は悪くない。何をやっても全然起きないお前が悪い。

だからお願い、恨まないでくれよ)

晶は寝ぼけた顔で、教師の説教を聞き流し、反省の色が見られないということで、みんなが海水浴をしている間中ずっと、廊下で正座することになってしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ