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040 平和平等な世界



ハイエナにたかられながら、やっと工場に到着した。


融が予想していたよりも規模が大きく、立派な工場だった。フェンスと有刺鉄線が張り巡らされ、監視カメラも設置されている。

排水溝や、監視カメラの範囲外の辺りにセンサーを取り付けてみる。


(今のところ、数値に異常なし。よかった)


外側からは中の様子は全くわからない。完成しているのかさえ不明だ。

連絡先などの表示もない。

(やっぱり夜にこっそり忍びこむしかないな)



帰り道で、杏菜から画像が送られてきた。恋愛成就のハート形の石らしい。

画像の隅に、羽のついたぬいぐるみを抱えた進馬が見切れている。

美涼からの「こっちは楽しんでいまーす」というメッセージ付きだった。


融は今までのことを思い返した。

泉さんとの出会いは、いい思い出だろう。


バーベキューで肉を奪われた。

夜中に銃声が聞こえた。

昼飯を奪われた。

ソフトクリームを奪われた。


(……このままじゃいけない!)

融は、ワンピース姿の晶の画像を、説明なしで美涼に返信した。

波川美涼への嫌がらせである。

どういうことだと問い詰めるメッセージが、山ほど返ってきたけど全部無視した。




「リベンジだ!」

融は、今夜は自分がバーベキューをしたいと泉に連絡した。

返事はOKだった。

(この辺りの住民は、とにかく肉が食えれば、ほかの細かいことは気にしないみたいだ)


昨日の肉屋のあった商店街で、肉だけではなく野菜や麺も買う。

(肉ばっかり食うから、飢えた肉食獣になるんだ。野菜と炭水化物も食え!)


融は父親に連絡して、安くて早くて美味い焼肉のタレの作り方を聞きだした。

(やっぱり父親には警戒されている。「何するつもりだ!」って言われたけど、焼肉以外の使い方があるのか?)


晶に聞いてみると、炭はまだまだあるけれど網だけで鉄板が無いらしい。

(ふはははっ!金属のことなら融の超能力におまかせ!)

近所の空き地から廃棄された金属板を集めて、超能力の力技で圧縮し、鉄板に加工する。凸凹しているけど使えないことも無い。しっかり洗えば問題ない。


今日一日で、融は晶についてわかったことがある。

「晶には、肉をドンドン焼いて欲しい。君の過熱の超能力ならあっという間においしく焼き上がるはず!」

「そこまで言うなら、やってあげてもいいよ」

(何もさせずに暇になると、こいつは僕の分まで食いやがる!)




ソースが焦げるにおいにつられて、またご近所の肉食獣たちが集まってきた。

骨付きの肉の塊を焼くと、大人がそれを丸ごとひょいっと持っていって食べつくしてしまう。

だからまずは、腹を膨らませるために、焼きそばを作る。

炭水化物と野菜を食わせる。

(ばーかーめー。そうとは知らず、食ってる食ってる!)


その後に、肉だ。

スライスして、バーベキューというよりもタレをつけて食べる焼肉形式。

超能力による加熱で、あっという間に焼き上がった肉を皿に移して、分散させる。鉄板だけの一か所では、強いものが集まってしまい、焼肉弱者(主に融)が負けてしまい食べられなくなる。


昨日とは違い、焼きそばと焼肉の画像を進馬に送れるくらい、融の今日の夕食は余裕があった。

「ごちそうさま」




手を叩く、足を上げる、腕を振る、みんなでくるりとまわる。

老若男女が集まっていい加減に踊っているため、ワンテンポずれたりするのも地元ならではの味である。

地元民たちは、食べて飲んで、陽気に歌って踊った。

融はご近所さんたちとの交流もそこそこに、部屋に戻って早めに眠った。


深夜、工場に侵入するためだ。




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