034 修学旅行の準備
修学旅行の荷物には制限が設けられた。
過去に学生が常識では考えられないような問題を起こしたらしい。
学校から一つのトランクが配給され、それに入るだけしか旅行先へと持っていくことはできない決まりになっている。
融のトランクには土壌汚染などを調査する機器や軍用プロテクターなど、通常の修学旅行では絶対に不必要な物まで収納されていた。
(何とか収まったぞ。必要な物のいくつかは、現地調達すればいいかな)
そんな余計な物を持っていく融の荷物でさえ収まったというのに、荷物制限に苦労している生徒は少なくなかった。
(女子は荷物が多くなるらしい)
杏菜と美涼も苦労していた。二人ともぐったりしている。
「こんなトランク一つじゃ入りきらないよ。最低でも倍は欲しいよ」
「私も、いろいろ荷物を選択し直しているわ」
同じ女子なのに、鏡子は余裕だった。
「私は半分くらいしか、必要なかったよ?」
鏡子の何気ない一言に二人が食いついた。
「荷物にまだまだ空きがあるというのなら、私の荷物を入れてくれないかしら」
「ズルイよ、美涼!抜け駆けだなんて! ねえ鏡子、私に協力してくれたら、向こうでアイスおごってあげるよ」
「どっちがずるいのよ。そっちが買収するっていうのなら、こっちも本気出すわ」
二人が鏡子に山吹色のお菓子をプレゼントする話を、融と進馬は少し離れたところから見ていた。
「女の子はいったい何を持っていったら、そんな大荷物になるのだろう」
「どうしても持っていきたいモノは、誰にだってあるんだよ」
融がつぶやくと、隣で杏菜たちのやり取りを見守っていた進馬がしみじみと言った。
「ああ、ぬいぐるみはかさばるからな」
「自分に必要な物を持っていくだけさ。物の価値は人それぞれ違うのだよ」
進馬は腕を組んでうんうんと頷いている。
二人の甘い誘惑に鏡子はあっさり買収されていた。
あとで杏菜と美涼に、鏡子に持たせた荷物を聞いてみた。
「旅行先で着るカワイイ服!たくさん!」
「私は枕よ。あれじゃないと安眠できないの」
修学旅行の二日目に班行動で自由に街を観光できる時間があった。
その班を決めて話し合いをする時、融たち五人はすでに決定されているかのように、スムーズに同じ班に集められた。
融たち以外の生徒の心は一つだ。
どの生徒も不良グループに巻き込まれたくないのだ。
「よかった。一人だけ違う班になったら、どうしようって思ってた」
鏡子は心からホッとしていた。
「どうしても行きたい人気観光スポットがあるんだけど!」
杏菜がネットの恋愛パワースポットについての観光案内の画面を表示する。
「班長は絶対私よ!異論は認めないわ」
班員の名前を記入する欄のトップに、自分の名前、波川美涼を勝手に入力している。
「地方限定にねこグッズさえ買えれば文句ないよ」
進馬は、カーニバルな羽のついたにねこのぬいぐるみの商品カタログを見ていた。
友人たちが自由時間に行く所について話し合おうとした時、融は彼らに協力を求めた。
「実は、みんなに相談があるんだけど……」




