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033 身長は悩み



工場が建設されているのは、自治区内でも特に貧しく、治安の悪い場所だ。旅行先のリゾート地からは少し離れていて、観光客は絶対に立ち入らないように注意されている。


調査中に何が起きてもいいように、融はまず軍用のプロテクターを買うことにした。

この時代、ネット通販で買えないものは無い。その気になれば戦闘機や多脚戦車、殺戮ロボットだって買えないことはない。


自分の身体データを入力して、ちょうどいいサイズの中から選ぶことにした。

「な、なんだってー!」

画面に表示された一覧にはすべて女性用と書かれていた。




融の身長は六年生の子供の平均値よりも低い。

三年生のころはまだ、そうでもなかった。

男の子友達、青山進馬よりもほんのわずかではあるけれど、融の方が背は高かった。

しかし、六年生になる前あたりから周りの状況は変化し始めた。

まず、波川美涼の身長が伸び始め、それに引っ張られるかの如く、三崎杏菜の身長も伸び始めた。この時期は女の子の方が男の子よりも、体の成長が早いものだ。

融は、子供だと思っていた女子二人に自分の身長が徐々に抜かれて行き、そして今では徐々に差を広げられている。

(まあ、男女差だから仕方がないさ!)

そう自分に言い聞かせて、動揺を抑えていた。


だが、その誤魔化しも打ち砕かれる。

同じ男子であるはずの青山進馬の身長も伸び始めたのだ。

融を追い抜くのなんてあっという間だった。眠っている時に体がミシミシいっている感じがする、なんてことを言い出す始末だ。


(おかしい!歴史上の融の身長は百八十センチ以上あったはずだ。大柄だとか、長身だとか書かれている記述も見た覚えがある。

はっ!そういえば、進馬は日ごろから大食いだった。もしかして、歴史では今の僕と違って融は大食漢なのか?身体を作る材料が不足しているから、身長が伸びないんじゃないか?もっと小さいうちから大量に食べておく習慣がなかったせいで、チビのままなのか。

いいや、もっと自分の可能性を信じるんだ!まだまだ勝負はこれからだ!)


いつも心の中ではお兄さんぶっているのに、今では外見上では彼らよりも小さいというのは融にとってダメージが大きかった。


(いいさ、僕にはまだ雪村鏡子がいる!

あんなタケノコみたいな裏切り者ども、気にするものか。

歴史上の英雄雪村鏡子は、小柄でやせ型の人物だった。

そうだ、歴史を信じるのだ!)


融は、隣に立っていた鏡子の頭を、何気なくなでてみた。鏡子はにこにこしている。

でも、そこで融は気が付いてしまった。

(腕の余裕がなくなっている!)


それまでは、融が頭一つ分くらい高かったから、鏡子の頭をなでるのに、頭の上まで楽々手が届いた。

しかし、久しぶりに頭をなでてみると、体を寄せて腕を少し伸ばさないといけなかった。


(確実に伸びている!なんでだ!?嘘、そんな。

……。

そうか、いじめがなくなって、ストレスによる成長の阻害が無くなったり、食事をちゃんと食べられるようになったりして、歴史に変化が起き始めているのだ!

さらに、毎朝僕とのランニングで適度な運動をすることによる血行促進。その後、必ずおごっていた牛乳効果もあるかもしれない)

融は、信じていた雪村鏡子にまで裏切られ、なんて恐ろしい子だと心の中で白目をむいていた。



そんな融の悩みなんて知らない、最近頭をなでてもらっていなかった鏡子はその日、一日中にこにこしていた。




結局、融は女性用の中から、色が黒くて地味で男でも着られないこともないデザインを選んで注文した。

苦渋の決断だった。


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