019 格闘訓練
五年生になった。クラス替えでは青山進馬、三崎杏菜とも一緒のクラスになり、いつもの五人は同じクラスになった。初等科では三年生と五年生でしかクラス替えは無いから、中等科になるまでずっと一緒だ。
そして、月城晶と武東鋼とは別のクラスになった。
(美涼とよくケンカしていたから、引き離されたんだな)
融はそう思っていたけれど、他の生徒たちはみんな問題児たちが優等生から隔離されたと噂していた。
問題児たちと同じクラスの生徒たちは、不良に目をつけられない様に大人しく過ごそうと心に誓ったのだった。
五年生から始まる授業がある。
格闘訓練と呼ばれる授業だ。
超能力が切れた場合の戦闘に備えての訓練だとされている。
(超能力者が、能力を使えなくなるほど消耗した場合、体力もほとんど残らなくなる。そんな状態で肉弾戦なんて無理だ。
だから、本当は闘争本能を刺激するための訓練じゃないかな?)
初日の授業はプロテクターの装着の仕方だ。
ダイバースーツの様なダボダボの戦闘訓練用プロテクターを着る。ベルト部分のスウィッチ一つで体に合わせて収縮し、ぴったりのサイズになった。
さらにその上に道着を身につけ、その上から脛と腕に防御用のプロテクターを付ける。
最後に、頭に透明な金魚鉢を被ったみたいに見えるヘッドギアを被って完成。遠目からは頭だけ防具がないように見えるほど透明なのは、感覚系の能力者のために視覚や聴覚を遮らない仕様になっているからだ。
さらに、お嬢様方の学校への要望により、髪がペタンとつぶれない様にもなっている。
戦闘訓練用の完全装備は、子供たちに怪我をさせないためだ。
拳や武器で殴っても、投げ飛ばして地面にたたきつけても、締め技だろうが関節技だろうが、銃弾だろうが絶対に怪我しない。
軍で正式採用されているプロテクターと、ほぼ同じ仕組みの物が使われている。
格闘訓練の担当教師が一番初めにした注意は、この戦闘服を脱いだ後、格闘訓練と同じようなことをすれば、絶対に怪我をする、最悪死ぬというものだった。絶対やらないようにと厳しい口調で注意を繰り返す。
融は前の時代でも戦闘はしたことがない。
それでも男の子なので、そういったことに興味がないわけではない。歴史の記録映像でもそういった物を好んで視聴していた。
相手も自分も怪我の心配がないとなれば、なおさら楽しみだった
(ワクワクするぞ!)
次に剣や槍などの武器を選ぶ。
初等部の格闘訓練では、銃や弓など飛び道具は無い。あくまでも超能力が切れた場合の格闘とされているため、超能力の使用も禁止だ。
例外とされているのが、自分への身体能力強化と情報伝達能力の使用だ。どちらも日常的に無意識に使い続けている能力だからである。そもそも、『勘』と呼ばれるものがどこまで超能力なのか、と定義付けすらはっきりしていないモノだってある。
それ以外の能力は外部へ影響する能力である。
使用するとプロテクターについたセンサーが反応し、使用が確認されると反則負けという仕組みになっている。
一番人気の武器は剣だ。美涼、進馬、杏菜も含め、ほとんどの生徒がそれを選んだ。
融が選んだ武器は槍。理由は剣よりも扱い方が大鎌に近いからだ。
鏡子が選んだ武器はナイフだ。彼女の両親が使っていた武器らしい。
それを見ていた融だけが歴史的英雄の未来を期待していた。
(やっぱり、歴史通りナイフを選ぶんだな。伝説の幕開けだ!)
それぞれの武器にそれぞれの指導教官がいる。
格闘訓練の担当教師は、全員実戦経験ありの元兵士だ。
目つきの鋭いオッサン教官が槍の指導を担当する。槍は融を含めて三人しか生徒がいない。
構えと突き方を習う。二人組のペアを組んでの打ち込み練習をオッサン教官と組むことになった。オッサンが常に目を光らせ、融への厳しい指導が続く。
(僕も生徒同士でペアを組みたかった!そっちの方が絶対楽じゃん)
もうひと組みのペアを横目で見ると、隙あり!と言われて槍の柄でブッ叩かれた。
(痛みは無いけど、叩かれるのはやっぱり嫌だ)
剣の担当教官は三人もいたけど、その分選択した生徒の人数もクラスのほぼ全員と多いため、サボりやすい環境にあった。
(選択ミスった!)
融がチラ見していたら、また叩かれた。
ナイフの担当教官は一人だ。大柄で禿げた白ひげのオッサンがいた。
雪村鏡子が一番大変そうだ。ナイフを選択した生徒は彼女一人である。
最初から最後までずっとマンツーマンで指導を受けていた。
白ひげの教官は鏡子が構えたり、斬り付ける型をやるたびにウンウンと頷いている。
勿論よそ見していた融は、オッサンに叩かれるのだった。
融は、授業の最後に、筋はとてもいいけどよそ見が多いから集中しなさいと指導された。




