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017 お買い物に行こう



「明日は学校がお休みだからみんなでお買い物に行こうよ」

明日が休日で元気な三崎杏菜に誘われて、いつもの五人で町まで買い物に出てきた。


「女の買い物に付き合うのは疲れる」

(さっきと決めろ!同じような服を何度も試着するな)

カワイイ服が並ぶ店内で、融と進馬はぐったりしていた。

やっと選び終えたかと思えば、次は鏡子に服を当てて、選び始めた。

「でも、私、あんまりお金持ってきてない」

「僕が出す。だからさっさと決めろ」

融がそう言うと、鏡子は笑顔になった。

それでも遠慮しているのか、杏菜に勧められた中からそれほど値段が高くない服を一着だけ選んでいた。

「そういえば美涼は買わないの?」

進馬か美涼に聞くと、

「こういう服は趣味じゃないの」

と言った。

「じゃあ、次は美涼の服を選びに行こうよ!」

自分の欲しいものを買った杏菜は楽しそうだった。




美涼の行きつけの店だと言う場所についていくと、高級ブランド店だった。

美涼が店に入ると、店員が恭しく頭を下げて、美涼の名前を様付けで呼ぶ。

(かなりのお得意様だな)

高そうなスカーフと、新しく入荷したバッグの数点の中から三つ選んで、あっさり購入を決断した。

さっきまで、杏菜が選んでいた物とは値段のケタが違う。

「それじゃあ、また近いうちに来るわ」

美涼がそう言って、店から出た。

「あんなお店に初めて入ったよ」

「僕も」

残りの四人は圧倒されて、何もせずにじっとしていた。

「ああ、そうだ。このバッグはあなたにあげるわ」

鏡子が驚いて固まっている間に、遠慮する時間を与えず押しつけた。

「使いやすそうなデザインだから、普段使いにしてね」

美涼にそう言われた鏡子は、どうしたらよいのかわからず、融に助けを求める視線を送る。

(タダでくれるって言うんだ、受けっとっとけ。断る方が面倒な相手だ)

融がうなずく。

「た、大切にします」

震えながら、さっそく肩から提げていた。




「次は融ね」

杏菜に、そう言われた融は困った。

(別に欲しい服は無いんだよな。実家が勝手に送って来る奴を着ているから。

ああ、そういえば行ってみたい店があった。一人じゃ入りにくかったんだよな)

裏路地にある金属製のアクセサリーも扱っている怪しい雰囲気の店だった。

鋲のついた革の服、トゲのついた腕輪、髑髏のアクセサリーなどが店中に並んでいる。

「うわ、趣味悪っ」

美涼の好みではないようだ。

「いや、僕の超能力は金属と相性がいいじゃん。だから、シルバーアクセサリーとか普段から身に付ければ、何かと便利だと思って」

「じゃあ、宝石店でいいじゃない。金のネックレスとか白金の指輪とか」

「値段が無駄に高い必要はないだろ。それに、小さいやつは曲げたりしにくい」

進馬と杏菜がトゲのついた首輪を好奇の目で見ている。鏡子は店中にある銀の髑髏が怖いようだ。

(歴史上の転法輪融を参考にしてみたんだよね。

写真では銀の骸骨の首飾りとか、指輪に腕輪にピアスとかしていた。戦闘でも利用している動画を見た。認めたくはないけれど、たぶん大鎌と同じように相性がいいはず。

でも確かに、僕の趣味でもないんだよな、骸骨)

結局店にある中で一番シンプルなデザインの腕輪と、頑丈そうな鎖のアクセサリーを購入した。美涼もそれぐらいならいいんじゃないのと言っていた。




「じゃあ次は進馬ね」

進馬の趣味を、みんな初めて知った。

ファンシーなキャラクターグッズの店だった。店内は女の子たちでいっぱいだった。

「男だけだと入りにくい空気があるんだ」

進馬は前からここに来てみたかったそうだ。

他のキャラには目もくれず、大きめの特設コーナーに一直線に走っていく。

『にねこ』

キャラクター名が独特な文字で書いてあった。

二頭身の三毛猫をシンプルにデフォルメしたキャラクターのようだ。曲がったしっぽと、たれ耳が特徴だ。


「なにこれ、うさぎ?」


美涼が何も考えていない声でポツリとつぶやいた。

夢中で商品を選んでいた進馬が、動きを止めて近寄って来た。

「ウサギじゃない! に・ね・こ!」

進馬がキレた。店の他のお客がいるから、静かだけれど熱い怒りが伝わってくる声でキャラクターについて、マニアックに語りだした。身長体重生年月日に家族構成、性格趣味開発者や裏設定。何が魅力か、何が彼をここまで虜にするのか。

あの美涼が圧倒されて、はいわかりましたと言うまで続いた。

「わかってくれたらいいよ」

元の人畜無害な表情でにっこり笑って、買い物に戻った。

(まさか、あいつの中にあんな危険なものが眠っていようとは……)


「はい鏡子。きみにもにねこの魅力が伝わるといいな」

進馬は鏡子へ、布教活動という名のぬいぐるみのプレゼントをするのだった。

鏡子は、ぬいぐるみをさっそくブランドバッグに入れてみた。




それぞれ、荷物が多くなったため寮へと帰ることにした。

帰りはタクシーだ。

鏡子は、もらってばかりで悪いから、みんなの荷物を持たせて欲しいと言った。

始めはみんなそんなこと気にしなくていいと言っていた。しかし、鏡子がどうしてもと言うから、じゃあタクシーが来るまでの間だけ持ってもらうことになった。

(それで鏡子の気が楽になるのならいいか)




月城晶と武東鋼は人気のお店のアイスを食べながら歩いていた。

「あれは……」

全員の荷物持ちをさせられている雪村鏡子の姿が晶の目に入った。

「どうかしたのー、早く行こう」

先を進む鋼に呼ばれて、振り返った。

「ちょっと待って、向こうに……」

「何も無いじゃん。なんかあったのー?」

融たちは晶がよそ見しているうちに、それぞれの荷物を持ってタクシーに乗って帰ってしまっていたのだけれど、晶はそのことを知らない。

「……今度、雪村さんに会ったら、相談したいことがないか聞いてみよう」




晶からの誤解は深まっていった。




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