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魔術侯爵家の幼馴染み  作者: 伏綸子
25/29

帝国戦開戦

 午前十時。センテルズ王国西部の盆地にて。

 王国側と帝国側で山脈が平行に連なっておりその真ん中で山脈の壁となるように川が流れている。この土地は最後の戦争以来、放置されたままだ。だが、自然はその回復能力を発揮し木々が生い茂るまでに至った。自然味が溢れる美しい土地だ。沢山の生物が棲息している程でもある。

 だが、悲しいかな。再度この土地が選ばれたのは運命の綾なのかもしれない。

 帝国側と王国側が川を境界線にして、二つに別れて陣取っている。川は帝国と王国を分断する長細い川だ。川とは言えど深さは膝がギリギリ水に付かない程度である。

 同盟国側はグラムウォルフ隊を遊撃手とし最前線に配置し、その背後に重装備のセンテルズ王国軍が敵を迎え撃つ形になっていた。他の同盟国も同様で王国の左右に各国の魔剣士(グラムラー)部隊――又は聖剣士(カリブラー)部隊――が先頭になっている。とは言え、貴重で重要な戦力となる魔剣士(グラムラー)部隊や聖剣士(カリブラー)部隊は最初の攻撃を終えれば遊撃に徹する事になっていた。

 そして帝国側の配置は、と言うと……。


「周りから囲い込む列隊形ですか。厄介ですね。規模は帝国が多い故にこちら側は不利だと言うのに」

「この場合両端を潰すべきねウィク。でも代わりに中心部分が柔らかくなるわ」


 グラムウォルフ隊の本部となる天幕(テント)内で隊長のエイナと副隊長ウィクトリアが上空からの映像を複写させた紙を見て初段作戦を練る。

 天幕(テント)内にはグラムウォルフ隊の隊員であるルーラ、ベイセル、セシャリ、アリーセ、そしてシグルスが二人を真ん中に円を描いて立っていた。因みに俺とアリスは後から合流した為天幕(テント)の入口付近で突っ立っている。


「数では不利ですが質は上々です。並大抵の帝国兵なら私たちの軍兵が処理するでしょう。だからこそ端に誰かを配置したいのですが……」


 二つの山脈が川に沿って連なっている為、移動にこそ障害は無いが今は最低限戦力を削減したくないらしい。

 それもその筈、敵国軍の現在の配置を見ると五帝士やそれ以外の魔剣士(グラムラー)は同盟国側と同様に我々と正面衝突させるように配置している。これを見るに五分五分の戦いを強いられる、と容易に予想出来るのだ。だからこそ重要戦力を端に追いやり真ん中が多勢に無勢で負けるリスクを避けたいのだった。

 しかし、それを理由に両端を薄くし敵に攻められては一巻の終わり。ここは必然的に細かい調整が必要になる。


「なら俺が行きましょうか。幸いそこには知り合いがいる。現地で指揮を執るのも楽になります」


 隅で傍観者に徹していた俺は困窮顔のウィクトリアに妙案を述べた。


「知り合いと言うのはヴォンヌとその他の二人ですか。……ええ、悪くない案ですね。良いでしょうここは任せます」


 俺は「了解」と一言述べてから元いた隅っこに身体を戻す。

 少し狭い天幕(テント)のこの隅だが圧迫感も無く程良く感じる広さで身体もフィットし心地良い。嫌な事があったらここで芋タイムを送っても良いかもしれない。

 と、冗談はさておき。ウィクトリアの話に耳を傾ける。


「現帝国には報告書上、魔剣士(グラムラー)が十名います。ただ不可解な点が幾つかありまして……」

「先程から感じるあの魔力のことよね副隊長。でも何故かしら日が出るまでは感じなかったのに」


 手を頬に当て首を傾げるルーラ。

 それはここに着いた二時間前から不思議に感じていた。歴戦の魔剣士(グラムラー)等ではないだだ漏れの魔力。明らかに魔力の効率が悪そうだが中々に多い魔力量を体内に秘めているのが見て分かる。


「あの十人のことだな? 恐れるべきは魔力量だけだろう。自爆されなければ俺一人でも対処可能だ」


 ベイセルが腕を組んだまま傲慢さを醸し出して言う。


「油断大敵ですベイセル。そう言って前の二人はお亡くなりになられたじゃないですか」

「ふん、アイツらは新人だ。未熟故に負けただけだ」


 ウィクトリアの声を一向に気にも止めないベイセルを見てエイナは呆れ顔だ。この傲慢と慢心さが足枷にならないと良いのだが……。


「やはり貴方には任せられません。シグルス、アリーセ。いざとなったらベイセルの援護をよろしくお願いします。身の危険を感じたら撤退をしても構いません」


 名を呼ばれた二人は「了解」と反応を返して了承した。


「そしてベイセル。迂闊な真似はしないように。今の貴方はレン組んだままやアリスさんよりも脆弱です。これだけは心に刻んでいてください」


 ウィクトリアは至極冷徹な眼差しと口調で忠告すると、ベイセルは苦い顔を浮かべ引き下がった。

 今までに無く緊張が走るグラムウォルフ隊に俺すらも手足がすくむ。

 レイさん。敵の情報は?


《はい、ご主人様(マスター)。例の十人騎士ですが、新参者の魔剣士(グラムラー)です。しかし理性は皆無であり、精神的支配で操り人形に堕ちています》


「――――え!?」

「ちょっとどうしたのよ。急に馬鹿みたいな声上げて」

「ご、ごめん。考えてたら驚いちゃって」


 ウィクトリアを中心に描かれていた円が俺へと向けられる。

 熱い視線による汗が俺の背中をソッと撫でる。


「レ〜ン〜く〜ん〜?」

「レ〜ン〜 た〜い〜い〜ん〜?」

「な、な、なんで御座いましょうかお二方!?」


 次は背筋が凍り冷汗をかく。

 マズい。実にマズい。レイさんと会話を始める時は迂闊な真似はしないように心に決めておかねば……。


「雑念があるようですので後程、私の天幕(テント)で身体中を隅々までお世話してあげますね」

「あ、ちょっと待ちなさいレン隊員!」


 最上位回避魔法【神速逃避(にっげろ〜)】を発動!!


「き、消えた……」

「相変わらず本気の出し所がズレていますね」

「昨日のあれはどこに行ったのよ……。あの馬鹿……」


 いずれも唖然とした様子の三人を後に俺はその場から一時撤退を余儀なくされた。



 〇 〇 〇



 時刻は午前十一時五十分。第一線南部戦地。

 いよいよ開戦の刻は十分後に迫った。依然として緊張感が兵士の中で漂流している。だがその士気に、瞳に一切の曇りはなく誰もが勝利を掴もうと血の気に満ちていた。

 その気持ちは連鎖的に誰かを通じて感染していくようで、第四連隊の最後尾から拡大し今では大隊長三人にもその影響が現れていた。


「早く爪を研ぎたいなー!」

「今日の毒針は最上級の物にしましたわ」

「新しく買って頂いた大剣。試し薙ぎしてみたいですね」


 と、このように異口同音の御様子である。

 獣人のルミナは手に()めたピカピカの湾曲型の鉤爪を胸の前に突き出して指輪ように見て優越感に浸っている。その様子は耳がピクピクと動いてることから容易に理解出来た。

 対してミシェルは自然に浮き出た闇を隠し切れずその悪者(サイコパス)感が滲み出てしまっている。暗殺者が被っていそうな、灰色一色に目元と口元が黒と深紅で配色された仮面を身に付けていた。

 カッコイイので今度何処で買ったか、伝授させて頂くとしよう。

 そして唯一常識が通用するヴォンヌは、以前俺が真っ二つにチョン切ってしまった大剣(グレートソード)のお詫びに新しく買ってやった物を器用にブンブンと振り回している。振り回し速度が速すぎて旋風を起こしているが無視した。闘志は高まっていた方が利点が多々ある。

 とは言え、士気が昂り過ぎて統率が執れなくなるのも看過できない。


「あまり、はしゃぎ過ぎるなよ。敵国にも強者が集っているんだ。理性を忘れて無闇に動き回っては戦死するだけだからな」


 興奮状態に陥っていた兵士達に向け戒めるように呼びかける。


「僕だってそれぐらい分かってるよジェラルド〜」

「ルミナ。確かにジェラルドさんの言っていることは一理あります。なのでここは頭の中に入れて置いてください」


 ルミナが当たり前だ、と右から左に流すもヴォンヌは聞き逃さず忠告を受け入れた。

 ヴォンヌは戦闘経験があるのかこの場に及んでも理性を保てている。

 そういう面ではかなり先輩級なのだろう。生きた年もあちらの方が圧倒的に長い。


「――そろそろだ!」


 セシャリが叫んだ瞬間前線列の中心部でエイナの【焼滅炎鳥(ブレイズ・フラップ)】が空高く打ち上がる。

 それは開戦の灯火となるように宙で留まりその炎を煌めかせ続けた。

 敵国側も同じように【焼滅炎鳥(ブレイズ・フラップ)】ではないが同系統の魔法が彼らの頭上で嵐の如く吹き荒れている。


「黒い。あれがアンダー・ルーンの【戦之序章(アーレス・サイン)】か……」


 報告書にも記されていた度々放たれる【戦之序章(アーレス・サイン)】。それは敵を一網打尽に葬る超広範囲殲滅型のブレイズ系統魔法だ。

 闇の炎を現出し、敵に向かって襲いかかるその光景は、【死神の吐息】とまで名付けられる程だ。


「――向かってくるぞ!!」


 兵士の一人が青褪めた形相で第二前列から逃げていく。

 これは、並の兵士では対処しきれない代物だ。これを防ぐには膨大な魔力を消費して対魔力障壁を創るか、それとも相殺するか、ぐらいだろう。

 だが、一瞬でも自分の魔力と接触すれば制御を離れた魔力は自分の支配下に置く事が出来る。つまりは自分が他人の特大魔法に干渉できる程の魔術センスがあればこれも防ぐ事が可能だと言うことだ。

 そして、それはグラムウォルフ隊、ミスティルテイン隊、オルダー隊の中でも限られた人しか持ち合わせていない技術だ。

 とは言え、対魔力障壁を展開するぐらいならどの隊員でも可能な事だった。


「さて……リロイさんも大丈夫らしいな」


 俺の右、五十メートル先で優雅な立ち姿のオルダー隊隊長リロイクロート・メルダに目配せをすると反応が動きで返ってくる。


「――――氷結地獄・吹雪ヘル・インフェルノ・ブレス!!」


 俺が足で地面を踏みしめたと同時に半径五メートル内の地面が漂白されたかのように白で埋め尽くされる。

 そして、凍った地面の数センチ上で魔法が浮かんだ。俺の魔力色である水色の魔法陣はゆっくりと回転し始めると、どこからともなく氷柱が飛び、寒風が吹き荒れた。


「ちょ、ちょっとジェラルドぉー。今足が危なかったよ!」

「ちょっと退っていてくれ」


 上空から高速で降り掛かる黒の炎は、魔法陣から吹く吹雪に押され徐々に相殺されていく。


「す、凄いですね……」


 ヴォンヌが感嘆の声を洩らす。

 炎が消えると、兵士達は開いていた口を閉じて一気に前進する者へ後を続く。


「さて、あとは俺がやる。ヴォンヌ、ルミナ、ミシェル。大隊長として前線で派手に暴れて来い!!」


 俺は【身体能力(インテンシフィ)強化(ケーション)】を瞬時に発動し地面を蹴ると敵軍にいる、例の十人へと向かって行った。

遅れてすみません。m(_ _)m


またバタバタしましたぁぁぁぁぁぁ!!

新しい環境に慣れるのも一苦労ですねぇ。


それはさておき、

今回はやっと始まりました帝国戦。

どうやって文を始めようかと色々考えましたが、結局グラムウォルフ隊から始まりました。最初のはアリスとの談話から始めてゆっくりと帝国戦に話を持ち込もうかと思ったのですが、中々に難しかったので、ウィクトリアの最終作戦会議から文を書いていくことにしました。

これはこれで自然な形になっているかな? と思った次第です。


さて、私。

時間が無くなってきたので、

ここら辺としますね。(今電車なので)


次回は続けて書こうと思います。

読書の皆さん最後まで読んで頂きありがとうございました!

これからも引き続き「魔術侯爵家の幼馴染み」を読んでいたたけると嬉しいです!!


では、また次回お会いしましょう。(^o^)/



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