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魔術侯爵家の幼馴染み  作者: 伏綸子
18/29

お引っ越し日和

 昨日に続いて天候は清々しい程の晴れ。湿気も無く洗濯日和と言っても過言ではない。近所の奥様方ならあら、お隣さん今日はお洗濯日和ですわねおほほほほ、と他愛ない会話を弾ませている事だろう。


――だが、今日は俺とアリスのお引っ越し日和なのだった。


 歓迎会が終わり各自解散した次の日俺とアリスは必要最低限の荷物を持参して再びグラムウォルフ宿舎を訪れていた。

 宿舎が徐々にその姿を見せてくる。

 これからはこの宿舎が自分の第二の家となり新たな仲間達と暮らす事になる。そう思うとお荷物にならないだろうか、仲良くなれるだろうかと言う一抹の不安が胸をざわめかせた。


「......」

「あんなにはしゃいでた人が何今頃畏まってるよ」


 黙りこくった俺の顔を覗き込んでアリスが破顔一笑しながら言う。

 彼女の言う通りこんな事でメソメソした所で結果に変わりは無い。


「べ、別にはしゃいでなんか無いし......」

「ふう〜ん。じゃあ私の記憶違いかしら? 昨日は確か、エイナさんにお酒を勧められたレンがノリでガブ飲みして魔法を乱射――」

「――忘れろ!!」


 うー。アリスの言った通り昨日ははしゃい――じゃなくて賑わいを見せていたので珍しく俺も気分が沸き立ちその所為か、宿舎の三分の一が崩壊してしまったのだった。


「あ、あれは魔が差したと言うかなんと言うか......」

「魔が差してあの大きい宿舎を崩壊させられるのなら貴方は危険人物に登録よ」


 確かに。仮に俺がエイナさんの立ち位置だったら俺は確実に地下室で隔離だ。危なっかしくて廊下も歩けさせられない。

 俺も精神をしっかり制御出来るようにお酒に慣れねば......。


「さて、着いたわね!」

「おお! もう直ってるよ!!」


 ナントイウコトデショウ。支柱が破壊されほぼ半壊状態に至っていた宿舎が美しさと高貴さを兼ね備えた真新しい宿舎になっているでは、ありませんか。

 一体全体何があったんだ!?


「あら、レン、アリス! もう来たのね」

「昨晩はす、すいませんでした......」

「別に良いわよ。寧ろ貴方のおかげで余りに余った資金が使えたわ!!」


 資金と言うのはグラムウォルフに課せられる依頼の達成報酬だろう。これだけ設備が整っていたのだ。他に使い道が見つからずただ山の様に積もっていたのかもしれない。


「そ、そうなの?」

「ええ! しかも、ベッドも超高級よ!! 貴方たちの部屋も変貌しているから後で見に行って来なさい」

「ほら、レン。今すぐ行きましょ」


 アリスが珍しくせっかちだ。顔には出さないよう踏ん張っているが止まらぬ足の動きにその心情が伝わってくる。


「はいはい。じゃあ軽く挨拶してから行こうか」


 そう言って、同じ暗褐色(ダークブラウン)の扉を開く。――尚、扉も新しく設けたらしく昨日は見なかった白銀と紺碧色で彩られたグラムウォルフの月狼紋章が扉の中心に飾られている。


「す、凄いな......」

「え、ええ。王宮並の雰囲気を感じるわ」


 二人揃って感嘆の声を洩らす。

 以前の宿舎もなかなかにハイグレードだったが今回は格が違う。王宮の様に金の装飾もあるかと思えば木造建築な為、懇意的な空間にも感じられ我が家と思える節が残っている。また、金色と紺碧で彩色された月狼紋章が特有さを醸し出す。


「あらレン君、アリスちゃん。もう来ていたのですね」

「早いうちに来た方が楽だからね」

「午後になると北西部メインロードは人の往来が激しくなるので」


 アリスが俺の言葉に付け足すように言った。

 ウィクトリアも納得した動作を見せて俺らに近付いてくる。


「では、取り敢えず荷物を置きに二人の部屋へ行きましょうか」

「い、いや。場所さえ教えてくれればいいよ」

「はい、部屋の位置も覚えたいので私たち自信で行きたいです」


 ウィクトリアは一瞬訝しげな顔を浮かべたがそうねと言って割り切り部屋への生き方を教えてくれた。俺の部屋は地下一階にあるらしい。


「――って俺だけ隔離されてるじゃねぇか!?」

「あら? この紙じゃないわね」


 ふ、ふぅ。本当に良かった。昨晩の一件で俺の危険人物登録が決断されていたのかと思った。正直言うと俺が胸の中で抱いていた一抹の不安と言うのはほぼこれなのだ。


「あ、あったわ。えーっと、これがレン君の部屋の鍵でこっちがアリスちゃんの部屋の鍵ね」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


 異口同音の言葉を三人で交わす。

 それより、気になっていたのだが何故宿舎の玄関に受付台(カウンター)があるのだろう。更に言えばウィクトリアも何故そんな受付嬢みたいな格好をしているのだろう。実に似合っていて雰囲気とその相貌から受付嬢として調和仕切っている!!

 全く違和感を感じない。こう言うのもやってみたいな......。


「ふふ。受付嬢レンバージョンの服あるから後で来てね?」

「さっすがー! 俺、これからはここで働くよ!!」

「何言ってんのよ」


 俺の横っ腹にアリスの肘打ちが入れられ悶え苦しむ。

 突っ込みの入れ方が痛い。もっと優しく出来ないのかね。

 俺はアリスの性格に、はあっと溜息を付いた。


「そ、それはさておき。早くこの荷物を下ろしに行こう。重くて疲れるよ。強化魔法インテンシフィケーションも使えないし身体を鍛えてない俺じゃ、骨が折れるよ」

「? グラムウォルフの隊員は魔法の使用を殆ど制限されていないわよ?」

「「え?」」


 衝撃の告白に俺とアリスは首を傾げる。

 そう......だったのか? 使用許可が下りているのなら最初から使っていれば良かった......。


「へ〜。......ところで、アリスは知らなかったのか?」

「私も知らなかったわ。だって王都で魔法を使ってる所なんて見たことないもの」


 制限は無くても魔法を行使すること機会はほぼ皆無らしい。しかし訊くまでもないが、攻撃力のある魔法は禁止だ。これに関しては異論なく得心した。

 そんな新情報を聞いた俺らは思い出したとばかりに背後の荷物を各部屋に置きに足を走らせる。

 階段をのぼり、長い廊下に敷かれたレッドカーペットを踏み締める。

 暫く歩いたレンは表に数字で二〇〇と施された真っ白な扉の前で脚を止めた。


「これが新しい部屋か......」


 レンの部屋は修復前の宿舎と違い、階段付近から少し離れている。でも、ウィクから渡された紙を確認しながら行ったため今度は右左折を繰り返さずに到着したのだった。

 部屋の鍵穴に白鉄製の鍵を差し込み右にグルリと垂直回転。ガチャリと鍵が開いて、扉の取っ手を掴んで引く。


「ふう。さてどんな部屋か、な......!?」


 ギィィと言う軋み音無く開いた扉の先の光景に俺は思わず声を失った。

 めっちゃ綺麗だ!? 何で? ここは昨日に引き続いて灰色一色の汚い部屋になるべきでしょ?

 空気の読めない事態に驚いてしまう。

 部屋の内装は無いそうですと言う鉄板ネタまで潰しに来る部屋だ。けしからん。もっと世間を知るべきではないだろうか。


「ま、まあ、いいか。えーっと、収納はあそこか」


 ベッドに放り投げた背嚢(リュクサック)から服を出して収納棚に次々と仕舞う。歯ブラシ、タオル等も並べようと思ったが貴族宿泊施設(ホテル)の如く綺麗に数日分常備されていた為、必要無かった。

 数部屋ほど空いているらしいので貴族宿泊施設(ホテル)として使っても異論無さそうだ。


「さて、殆ど片付いたしそろそろ戻りますか」


 誰しもがする部屋の探検を後回しにして一階へと戻る通路に着く。

 玄関では、ウィクトリアとエイナとアリスが雑談を交わしていた。

 アリスは遅いわよと言って急かすように手招きをした。


「レン君、部屋はどうかしら?」

「完璧すぎて寧ろ気持ち悪いくらいです」

「確かに、全部あったからあんなに荷物を詰め込む必要も無かったわね」


 アリスが会話に便乗する。


「ま、時期になれると思うわ。あ、あとこれが日程表。仕事が無い日は基本、鍛錬か休養。でも......」

「......?」

「レン君は帝国の動向についてどれくらい知ってる?」


 ウィクトリアが勘づいたのかエイナの言葉の続きを言う。

 俺が知っている情報は限り少ない。ただ、数年前の戦争が繰り返される可能性があるのは認知していた。それは、誰かに訊く以前にあの、王都襲撃事件で掴み取れる情報だったからだ。


「あまり、知っていません」

「そう......。実はもう既に軍隊の招集が開始されてるらしいのよ」


 息を呑み絶句した。アリスも俺も。そして、その事を知っているエイナでさえ不快感を露にしていた。

 母の言葉が脳裏を過ぎる。たった短い「気を付けてね」と言う言葉。その言葉が頭の中で幾度も繰り返された気がした。


「だから入隊してすぐで悪いが早速戦場での闘い方を身に染み込ませてもらう」

「も、勿論。この部隊に入ることになった以上その覚悟は出来てます」

「私もこの為に今まで頑張って来たのだから当然よ」


 そう。アリスが俺と共に魔法を学んで居たのはこれが目的だった。これは最初にアリスの父から聞いていた。


「ついでに、招集はどれくらい進んでいるんですか?」

「一昨日の時点で二十万の兵士を帝都周辺に招集しているようです」


 二十万!? 本格的な戦争に用意されるような人数だ。これはただ事では無さそうだ。子供の頃のように他人事には思えなくなってくる。


「でも各地から続々と兵士は集結されてるらしく多く見積ると四十万近くは......」

「そんな人員何処から集めてきてるのよ!!」


 驚愕に染まるアリスの顔から忌々しそうに叫ぶ声が聴こえる。

 それは呆然としていた俺でも心に響くほど悲痛な絶叫だった。


「そ、それは......」

「......占領した国からです」


 俺はまた言葉が見つからず黙りこくる。

 ただ、帝国の残酷さと苛酷さを頭で理解するだけ。


「私たちはその国を相手に闘うのよ。それが我々グラムウォルフ隊の使命であり、責務なの」


 今でも頭の片隅でこれは他人事だと決め付ける自分がいる。だが、別の自分がそれは違うと糾弾している。恐らく正しいのは後者なのだろう。

 そう、頭ではそう理解しているのだ。頭では。


「だから、明日からは実戦練習よ」


 エイナはそう告げた。



 〇 〇 〇



 前日とは差し替わり、しとしと雨が降る午後の円形闘技場(コロッセオ)で俺は魔剣姫エイナ・ヴィデーンを相手に自分の魔剣を振るっていた。

 乱れる呼吸で魔剣を勢い良く斬り付ける。

 だが、華麗にその剣筋を流され隙を作られてしまった。

 魔法にのみ特化したレンでは実戦経験豊富で剣も魔法も人並み以上にこなすエイナ相手に勝てる可能性は低い。

 しかも、今は魔法ではなく剣戟の実戦練習。魔法の使用を制限された状態ではレンの本領も発揮出来ない。


「はぁ......はぁ......」


 頬を滴が伝う。雨なのか汗なのかも分からない。

 水滴を拭って一瞬だけ空の色を窺う。

 訓練を始めたのは朝日が昇り始めてからだったのにいつの間に西の空へと沈んでいる。


「どう? これでも序の口よ」

「......結構......キツイです。身体が追い付けない」


 寒さか疲労か分からない震えが全身を襲っていた。

 立っているのが精一杯。今にも手に握っている魔剣を落としてしまいそうだ。


「貴方は剣より魔法特化型だものね。......でも、だからこそ身体を鍛えないとすぐに死ぬわ」

「...........」


 エイナの冷酷で鋭く尖った言葉が心身を抉るように襲い掛かる。

 見知らぬ怖気で身体がブルりと震えた気がした。


「解ってます。......もう一度お願いします」

「......」


 エイナが剣先を正面に向け、魔剣を顔の横に構える。あの構え方は基本アリスの刺斬剣(スモールソード)刺突剣(レイピア)等の比較的、軽量の武器に使われる構えだが......。


「――グッ!?」


 間合を刹那にして詰め、魔剣で風を斬る彼女には重さなど支障にさえならない。

 肉薄した際のスピードと剣を振る衝撃が受け止めた剣から骨の髄へと伝わりレンを大きく後退させる。魔剣を薙ぎ飛ばされなかっただけマシだった。

 強化魔法インテンシフィケーションと剣術だけでは勝てる気がしない!?


「はああああああああああ!!」


 強化魔法への魔力供給量を倍増させて威力を上げる。

 風を斬り空間すらも裂きそうなその勢いで魔剣を横に振ろうとしたその時――エイナは体勢を低くし魔剣の剣身で俺の攻撃をキーンっと受け流した。

 瞬く間の時間。俺はいつの間にか腹部に拳を喰らっていた。


「グハッ!!」


 防御魔法無しの死を隣り合わせにした訓練。

 それは想像以上に苛酷で苦行なものだった。



 〇 〇 〇



 目が霞む。

 誰かの声が聴こえる。

 立ち上がろうとするが身体が悲鳴を上げるだけで動かない。

 そんな感覚だけの世界に囚われたような時間はそう長くは続かなかった。


「リカバリー!!」


 身体の痛みが潮のように引いていく。

 だが、相変わらず身体は動かない。目も暗い闇の中から出てきた時のように朦朧としていた。


「......レ......。......レン......。レン!!」

「五月蝿い」


 耳元で泣き叫ぶかのように俺の名前をアリスは呼んでいた。

 脳が徐々に覚醒する。視界も明瞭へと変化していった。


「......ごめんね。レン君、流石に強くやり過ぎた」


 手を正面で合わせペコペコしながらエイナが謝る。

 俺、何があったんだっけ?


《はい、ご主人様(マスター)。魔剣姫エイナ・ヴィデーンに叩きのめされて数十分間意識を失っていました》


 ああ。何となく思い出した。訓練開始から殆ど休養を取らずに二日間永遠と闘っていたのか。そして挙句の果てに力尽きたと。成程、成程。

 状況は理解出来た。アリスの瑠璃色の瞳に滴が垂れているのはよく分からないが。

 あ、雨か。

 はっと目前の光景に目を見張り自問自答をする。

 雨は降り止むどころかザーザーと激化して二日間空を覆い続けていたらしい。


「アリス、俺......死ぬかも」

「もう大丈夫ですよ。そんな冗談は置いといて早く宿舎に戻りましょう」


 うぅ......。もう少し心配してくれてバチは当たらないと思うのだが?

 ウィクトリアが翳していた手を引き、ゆっくり立ち上がる。

 硬く濡れた地面に横たわる俺は未だ動けない。


「まだ動けないんだよおおおおおお」

「それは勿論、うちの隊長を相手に二日間闘い続けたのですから当然です」


 そうですね。はい。

 諦めまいと意味不明なプライドが邪魔した結果だ。これは俺の意思じゃないので俺に責任を押し付けないで欲しい。

 てか、誰の意思......。あ。

 ふと頭に浮かんだ。レイ(あいつ)存在(こと)を。


《...........》


 脳内で声を掛けるも無言を貫き通すレイさん。

 やっぱりな!! 本当に嫌な事は絶対にしない俺があんなことする筈が無いもんな!


《お陰で一撃入れられました!!》


 嬉しそうに言うな!! その代償として俺がボロボロになってんだよ!!

 単調な声が筈の声が嬉々として抑揚の付いた声音になって脳内を響かせる。

 はぁ......。取り敢えず休みたい。

 そう思いアリスに声を掛ける。


「アリス、肩貸してくれないか? ......アリス?」

「......はい」


 何故か目元を隠すように前髪を垂れ流したアリスが囁くような小声で返事をする。

 アリスが俺の右腕を自分の左肩で担ぎ上げ一歩一歩ゆっくりと帰路を進む。

 久しぶりに触れた彼女の身体は細く柔らかかった。


「......何か......久しぶりだな。これ」


 アリスが俺の呟きを微かに聴いたのか、コクリと小さく頷いて。


「......うん」


 俯いていた顔を上げて少しだけ嬉しそうにそう言った。


 連日の雨で舗装された通りにも、歩く度にピチャっと水溜まりを踏む音が鳴る。時間的には午後の五時。人々が家へと踵を返す時間帯でもある。それはレン達が通っているのは路地も例外ではない。

 満身創痍で帰路歩く姿を周囲の住民に好奇の目で凝められるのはなかなかに痛いものだ。


「......腹減ったー」

「私もお腹空いたわ。二日間も剣を降るのはやっぱり大変ね〜」


 ジトリと睨みつけてから大きく溜息を吐く。

 踵を返してはや数分。新しき我が家はもうすぐだ。引っ越して早々遠征任務にでも行ったような気分で宿舎を懐かしく感じる。

 実家に帰った時のあの胸を暖める優しい気持ちが溢れる。


「たっだいま〜!!」

「やあ、レン君。おかえり」


 暗褐色(ダークブラウン)の髪をなびかせ微笑ましくお出迎えをしたのは超イケメン優男ことシグルス・ヴェッテルさんだ。

 二日ぶりに再会を果たしたが煌めく顔の美しさが未だ頭にこびり付いて離れない。だからだろうか、この人だけは懐かしさを全くと言っていい程感じない。印象に残り過ぎなのだ。


「あ、シグルスさん。只今帰宅しました!!」

「はい。既に二人の食事は作ってあるから先に食卓(テーブル)で並んでいてくれたまえ」

「はい! ありがとうございます!!」

「ただいまシグルス。それとご苦労さま」


 エイナはシグルスの肩に手を置いて一度そう耳元で囁いてからレンの背を追った。


 シグルスの述べた通り台所(キッチン)から漂うスタミナ料理の匂いが食卓のある部屋全体を包み込んでいた。

 実に食欲をそそる匂いだ。二日間水だけで生活していたので食欲旺盛なのは当然なのだが例え断食せずともこの匂い相手に抗う術は無いと言える。

 着いてきたシグルスが台所から食卓に皿を並べる。

 俺は勧められた通りに椅子に腰を掛けた。

 目の前で続々と列を成す肉料理。野菜も多いのにその倍をいくある肉の数に涎が垂れてくる。


「はい、もう食べて良いですよ」


 その瞬間目の前にあったフライドチキンが消えた。

 横に目をやるとエイナがそのフライドチキンをムシャムシャと食っている。

 俺も手を伸ばす。だが、狙い定めていたそれが又もや影すら残さず消えた。


「何で取るんですか!!」

「ふふ、ふぉれはふぇんふぉう(これは戦争)ふんれんふぉの(訓練後の)ふぁいふぉの(最初の)ふぉふひは(食事は)ふぁやいふぉの(早い者)ふぁちなのよ(勝ちなのよ)

「呑み込んでから言えええ!! 何て言ってるか雰囲気で解るけど耳が反応出来ねぇよ!!」


 ふぁいふぁい(はいはい)、と二度返事を返してからエイナは口内の物をゴクリと呑み込みそれから口を開いた。


「つまり、全部食べちゃうわってことよ」

「...........」


 歴戦の戦士が睨み合うように視線を交差させたまま無言の時が流れる。

 数秒の時が流れ、ふと扉がガチャリの音を鳴らした瞬間。


「レン君。制服をお持ち致しましたので後程こちらに着替え――」


 グラムウォルフ隊の制服を両手に、部屋へ入ったウィクトリアがその歩みを止め呆然と立ち尽くす。


「なに......してるんですか」

「いつものやつですよウィク」

「は、はあ......」


 フライドチキンを両手に口をムシャムシャと動かす二人が居た。

 ウィクトリアは瞼を半開きにし呆れ目で犬のように食う二人を眺める。

 数分して殆どの料理を異常なスピードで食い尽くした二人は膨らんだ腹を抱えるようにしてウィクトリアの存在に気が付いた。


「食べ終わりましたか」

「すいません。全部食べられるかと思ったので」


 我ながらに馬鹿だと苦笑を浮かべた。


「どうせ、食材は無駄な程溜め込んでいるので急いで食べなくても良かったのですが......。まあ、それはさておきこれがレン君の制服です! 基本、この服で生活して下さいね」


 そう言ってウィクトリアから全体的に漆黒な制服を受け取る。

 どんなものかと両袖を摘んで開いてみると所々に俺の魔法色である薄水色の線が身体の線をなぞる様に引かれている。

 左胸部にはグラムウォルフ隊の象徴、金と紺碧の月狼紋章が輝いていた。

 どうやらこれのローブバージョンもあるらしくそれもセットで手渡された。両方とも印象はほぼほぼ変わっていない。ただ、制服とローブを組み合わせるとカッコ良さが特段にアップする。


「おお! カッコイイ!!」

「でしょ、でしょ!」

「俺とアリスだけ制服無かったからな〜、はぶられたのかと」

「そんなことはしないよ」


 台所から皿洗いをしていたシグルスが横から笑って応える。


「ま、まあ、当然ですよね」


 俺もあははと空笑いで返した。


ご主人様(マスター)。この服には特殊な魔法陣が描かれております》


 魔法陣? 視覚では無く第六感的な視力で制服を観察する。すると、薄らと幾度にも重ねられた魔法陣が浮かび上がっているのが視えた。

 魔法陣の形式は......。判らない。古代の文字だろうか。類のない文字が羅列されていた。

 レイさんなら分かるだろうか。一応こう見えて博識だ。俺より魔法について詳しいだろう。


《はい、ご主人様(マスター)。これは確かに古代の文字ですが......》


 レイさんの徐々に小さくなり最後には口篭った。

 分からないのだろうか? なら頑張って解読せずとも別に構わない。


《...........》


 それも違うのだろうか。ただ、ひたすらに無音の時が脳内で流れた。


「まあ、いいか。それより身体洗ってこよーっと」


 レイさんの無言タイムも腑に落ちないが、服を見やると至る所に剣で斬られた傷が着いているのを見て、優先度を変えた。

 流石に穴だらけの服でふかふかベッドに寝たくない。

 俺は新しい制服を大事に持って浴室(バスルーム)へと向かった。

(( ̄▽ ̄;;)ア、ハハハハ…

遅れてすいませんでしたー!!

ちょっと立て込んで投稿が遅れた次第です。

すいません......。


今回はグラムウォルフ隊がメインですね。

やはり此の度もアリスの台詞が少ないです。

何してくれんだと罵声が飛び交いそうですが、全てことごとく躱しますので大丈夫です!!(/∀≦\)てへっ♪♪


次回はそろそろのんびりな所から抜け出そうと思います。

暫くの間出て来なかった帝国。その駒を久しぶりに動かそうかと考えています。

最近は更新ペースが下がって来ていますが、上げようかな......っと!! 思ってるのでご安心を??


最後に、

読者の皆さん最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!

評価☆☆☆☆☆やコメントとして頂けると幸いです。


それではまた次回お会いしましょう!!

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