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魔術侯爵家の幼馴染み  作者: 伏綸子
12/29

魔力鑑定

 王都セトディン中心部王宮内の会議室の中央。

 帝国軍兵による強襲作戦から一夜明けた日の早朝。

 センテルズ王国現国王エグラスはアリスの父でありクラーク侯爵家の現当主、アルベルトとレン・ジェラルドに与えた報酬と生きる怨霊(レイス)との闘いで幸いにも生き残った帝国軍兵への処罰について語り合っていた。通常、犯罪者は法の下で裁かれるが今回の事件は別だった。もし、レンが失敗していたら王都は甚大な被害を被っていただろう。故に、処罰は国王と貴族らで決定することになったのだ。


「帝国軍兵アレクセイ・バタイユから情報は吐き出せたか」

「ええ。情報部によると今回の強襲作戦は少数による攻撃、それに併せ新型魔剣の実験を目的としていた模様です。」


 エグラスが目を閉じて訊くとアルベルトがスラスラと報告書の内容を読み上げる。

 羊皮紙製の報告書にはアルベルトが読み上げた通り、強襲作戦の内容、魔剣運用。それと一つ、帝国軍兵の死体から奪取した新型魔剣の分析結果に関して纏められていた。


「因みにですが、魔剣によって産み出された生きる怨霊(レイス)は彼自身も驚いていた、との事です」

「......つまり、あの生きる怨霊(レイス)は彼らの知らぬ所で画策されていた、と?」

「そう考えられます」


 エグラスが自分の問い掛けを肯定され、深く溜息をついてから暫くの間黙り込んだ。


「エグラス国王陛下。彼からまだ情報を吐き出せるかもしれません。()、処刑するのは時期尚早でしょう」

「なら、早めに吐き出させろ。それから公開処刑にする」


 エグラスの処罰方法は残酷だが、こうしなければ王都に敵国の兵士を入れた我々の示しがつかない。

 彼は己の良心を、削ってまで民を想う人柄だ。偽善者とも言えるがこれは仕方が無いのだ。


「それでは、レン・ジェラルドについてですが......」

「彼への褒美はあれが最も良いだろう。その上我々としてもそちらの方が都合が良い」


 エグラスの顔に不敵な笑みが浮かぶ。


「やはり、国王陛下もそうお考えですか」


 アルベルトの真面目な仕事顔が失笑してしまい顔が綻ぶ。


「当然だろう? アルベルト」


 身分によって隔たれていた壁が無くなり、友人のように話す二人。

 二人はかつて背中を任せ合った程の間柄だ。何時もは身分の差を示す為、エグラスは国王らしく、アルベルトは貴族らしくで恭しい態度を取っている。だが、二人のみの空間では肩の荷を下ろしこうやって過去に戻って会話していた。


「彼は才能に恵まれている。加えて魔法に関心もある。彼は将来的にこの国を支える柱となるだろう」

「流石、うちのアリスの教師を務めていることだけのことはあるな」

「是非うちの娘にも魔法を教えて欲しいものだね」


 久しぶりの談笑に互いが話を弾ませる。


「だが、グラムウォルフに入っても直ぐに上を取ってしまいそうだがね」


 アルベルトもエグラスの言葉にコクコクと大きく頷いた。


「彼は成長速度が異常だからな。実際は彼は書物を読み学んで魔法を行使している。教える人など誰も居なかったのにな......」


 エグラスが懐かしさを覚えたのか、窓から沈む月を覗く。


「それは楽しみだな」


 アルベルトも未来を見据えるかのように、昇る太陽を窓から眺めた。



 ○ ○ ○



 エグラスとアルベルトが会議室にて会話をしていた丁度その頃。

 レンとアリスは魔力鑑定を受けに魔法協会により設立された、魔力鑑定も兼ねている聖教会を訪れいていた。

 そもそも、王都に来たのは生きる怨霊(レイス)と闘う為や魔剣(レイ)さんを手に入れる為でもなかった。あれは副産物に過ぎない。

 忘れかけていたが本来の目的は魔力鑑定なのだ。

 因みに朝レンが自分の宿泊した部屋から外を覗いたら人が大勢集まっていたので、此処へはクラーク家から派遣された護衛と共に馬車を使ってやって来た。


「へぇ〜。此処があの聖教会か......」


 聖教会も又王都の雰囲気に合わせ白を多く使った建物だ。床は大理石、壁は白煉瓦を積み重ねて創られてている。建物の構造は大聖堂と何ら変わらないでとても広々としていた。

 違いと言えば魔法協会の象徴、燃える魔法書(グリモワール)が所々で見掛けるぐらいだろう。


「そう。此処が王都に一堂しか無い聖教会――センテルズ・カテドラル。通称、センドラルよ!」


 アリスが自慢げに話す。

 驚く程安易なネーミングだな......。期待して損した。

 それよりアリスが何時も以上に意気揚々としているのは何故なのだろうか。

 それも直ぐに分かった。


「それじゃ、入りましょうか!」

「そうだな。入るか」


 大聖堂の三つある大扉のうちの真正面に位置する赤銅色の扉をアリスがギィィィっという軋む音と共に勢い良く開けた。


「アッリスゥゥゥゥゥ!! ひっさしぶりぃぃぃぃ!!」


 扉が開いたと同時にアリスと同じ身長の女の子が飛び出し、アリスに抱き着いた。

 女の子の外見は金髪のショートに白と蒼をメインにした膝丈の修道服だ。剣を持てば騎士に紛れてもバレなさそうな格好だ。

 また、彼女自身の陽気な性格からアリスより若干幼く感じる。アリス見たいに美しいと表現するより可愛いと言った方が適切なのだろう。


「久しぶりね、ソフィア。何ヶ月ぶりかしら? 三ヶ月ぐらい?」

「そうだね! 大体それぐらい!」


 なるほど彼女はソフィアと言うのか。

 抱き着いた状態から少し離れ、二人が会話を始める。


「あ、ソフィア。此方レン・ジェラルド」


 賑やかに話す二人を眺めていたレンに気付いたアリスがソフィアにレンを口で紹介した。


「レン。此方ソフィア・ヴィデーン。魔剣姫様の妹さんよ」


 え......。

 あまりの衝撃にレンは絶句した。

 姉妹が全く似ていないのだ。魔剣姫エイナはお姉さんらしく大人びているがこのソフィアは騒がし......じゃなくて陽気だ。その上顔立ちも似ていない。このソフィアが成長し大人に成ろうともエイナには似ても似つかないだろう。


「こ、こ、こ、この人があのレン・ジェラルド様なの!?」

「そ、そうだけど......?」


 気持ちが昂り口が上手く回らないソフィア。

 アリスは何故ここまで興奮しているのだろうか、と不思議に思い疑問形になってしまう。


「あ、あの生きる怨霊(レイス)を単独で撃破し王都を救ったていう?!」

「いや、だからそうだけど......」


 何、俺の名前ってそんなに広まっているのか? それは困るな......。これからは偽名も考えないとな......。

 本能的に将来へと危険を察知したレンは自らの思考に耽る。


「あ、あの! 私ソフィア・ヴィデーンと言います!」

「あ、うん。僕イシス・ジェラルドと言います」

「何サラッと偽名使ってるのよ」


 二人の自己紹介に横からアリスが突っ込みと肘打ちを入れる。

 いや、だって......、面倒くさそうだし。

 レンは目でそう伝えようとするが氷結しそうな極寒な目を向けるアリスには伝わらなかった。

 何故こういう、友達がいる時は性格が変わるのだろうか。


「レン・ジェラルドです。十四歳です。魔法が好きです。彼女は居ません。結婚し――」


 肩をトントンと叩かれレンの言葉が途切れる。

 レンはそのまま振り返り青褪めた。


「やぁ、レン君。私の妹に何言ってるかな?」


 ノリで言ってしまったレンは、後悔した。何せ禍々しい雰囲気を撒き散らしてまるで、狼の様に現れたのはソフィアの姉エイナだからだ。

 何故ここにいる!?


「何故ここにいるって言いたそうね? 良いわよ教えて上げる。だがらちょっとこっちに来なさい?」

「いや結構です。殺されそうですので」


 現在の地位上エイナはレンの上司になってるので敬語は当然なのだが、何時も以上に恭しい。

 それもきっと魔女の様に不敵に笑うエイナの鋭い眼光のせいだろう。


「それより、早く鑑定して貰いましょう」

「そうだね! 行こう! 今すぐ行こう! そして帰ろう!」

「レン君は家に帰ってもすぐこっちに戻って頂くわよ?」


 なん......だ......と!?

 レンも薄らと感じてはいたが認めたくは無かった。

 家でのんびり過ごし魔法を自分の欲がままに学ぶ生活が崩れることを。

 俺、魔力鑑定しに来ただけなのに......。

 心が喪失感と絶望感に押し潰され砕けそうになる。


「は、はははは......」

「さ、行きましょう」


 魂無き抜け殻になったレンの手をアリスが引き、その背中をヴィデーン姉妹が押し聖教会へと入って行く。



 聖教会の内装は光が多く入り差すよう、壁の両側には大きなカラーガラスが取り付けられている。天井には嘗て天使と悪魔によって始まった天変地異が起きる程の争いをモチーフにした絵が描かれていた。

 大聖堂の真ん中を四人で堂々と歩く。

 祈りを捧げていた人達も顔を上げてレンに目を向けた。


「......ここまで見られると恥ずかしいな」

「ここは英雄らしい振る舞いをしないとね!」


 嫌に難易度をあげてアリスはそのまま歩いていく。


「すいませんヴィデーン様方、此方に来てもらえませんでしょうか?」


 四人を見かけた大聖堂の管理人らしき年寄りで神聖そうな服を着た神官が声を掛ける。

 貴族三人と、暫くは籠るべき俺が大聖堂のド真ん中を歩いていたら個室に案内し人目を避けるのも当然だろう。

 四人は小さく頷き神官の誘導する方へと向かって行く。

 案内されたの大聖堂からでも直ぐに行ける横の魔力鑑定所だった。

 この部屋は大聖堂と同じで建物自体広いが縦に長い廊下の両壁にドアがあり個室が多い。先程の神聖感溢れる大聖堂と違い魔法協会が建てた魔法鑑定専用の施設なのだろう。


「お話はお伺いしております。それでは、魔力鑑定の手順書をお渡しします」


 アリス、レン、それからエイナの順番で手順書を渡す神官。だが、エイナは「私はたまたま居合わせただけだ」と言って顔を横に振る。

 レンが手渡された薄く小さい、魔力鑑定手順書と書かれた本を開いた。そのまま流し読みをし、ある程度理解したのか「それではお願いします」と言って手順書を神官に返す。


「私も大丈夫です」


 アリスもレンに続き手順書を返す。


「それでは、アリス様は一番左の部屋へ。レン様はその右隣の部屋へどうぞ」


 導かれるがままにレンは言われた部屋のドアを開けて入る。

 すると目の前には紺碧色に光を放つ天井まで届く大きな柱型の魔結石が置かれていた。


「これに手を起き魔力を注ぎ込めばいいんだったよな......」


 手順書に記されていた手筈で事を進める。

 レンは右手を紺碧色に輝く魔結石の冷たい表面に置いて自分の魔力を流し込む。

 すると紺碧色だった魔結石は手の触れている部分から溶けるように色褪せ、黄緑色、黄色の順番で変わっていった。


「おぉ! これは壊れないぞ!」


 壊れないと言うのは以前にも実例があるからだ。

 それもウラニ村の森での岩石木っ端微塵事件から数日前のアリスの屋敷での事だった。

 魔力量の測定は紺碧色に輝く魔結石を使えばある程度測ることが出来る、と本で読んで知ったレンはアリスにその情報を伝え屋敷にあった測定用魔結石を借り出した。

 アリスを傍に「早速やってみよう!」と意気込んでいた矢先、魔結石は直ぐに色を変え粉砕してしまったのだ。

 その後屋敷にいた侍女(メイド)さんになぜ壊れたのが尋ねるとそんな魔結石ではお二人の魔力量は測れませんよ、と笑われたのだった。


「でもそろそろ、壊れそうだな......」


 魔結石は真っ黄色に輝きヒビが入っている。

 そろそろ神官が来るはずなのだが、全く来ない。

 これ、いつまで流し込めば良いのだろうか。


「ちょっとやばいかな......」


 既に魔結石全体がひび割れ輝くを失い始めている。

 すると、コンコンっと叩く音がなりドアが開く。


「レン様、お待たせ......」


 神官はヒビの入った魔結石を見た瞬間唖然とし、「ははは」空笑いしながら立ち呆けた。

 またやってしまったな、と後悔で視線が宙に浮くレン。

 二人を傍に再びドアが開く。


「ねぇ、レンま......」


 アリスはその光景を見て「またやらかしたわね」とでも言いそうな怒号の顔をし、レンは顔を引き攣らせ硬直する。

 無論、今回もレンの魔力鑑定も叶わなかったのだった。

やっとですよ......。

やっと本来の目的が果たせました。

これな関しては俺が右往左往してばかりでなかなか進みませんでしたからね!( ´ ▽ ` )

もっとテンポ良くが行くべきでした......。


さて、

読者数最後まで読んで頂きありがとうございます!

次回は一旦ウラニ村に帰ろうと思います。

前回の三部旅での教訓を活かして書こうと思っています。


あ、あと

評価、感想等頂ける今後の課題にも繋がりより上手く書ける様に成長出来ると思うので是非お願い致します!

それでは!

また次回お会いしましょう!


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