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20歳になったら妖怪の類と生きる事になった。  作者: 積乱雲さいだー
第一章 原初の妖怪冬物語
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第二話【家まで走れだった】

1975年 春


桜が散るゆく今日この頃、仲間がこの土地(青森)散華(さんげ)した。


「一体、何が・・・」


遠出していた、俺だけが助かり、孤独となった。


近くで見ていたと言う妖怪から聞いた、とある人間が大虐殺したと。


正直、信じられない、優しさが取り柄の人間が無差別殺しなぞ・・・。


どうしてだ!――我々はただ思うがままに生きていただけだ。人間と同じように。


なのに何故・・・!


確かに人間を殺した事もある、喰った事もある!だから、殺される覚悟はある!


――だが(むご)過ぎた。


分散し破裂し解体され溶かされ刎ねられ、様々な方法で殺されてたそうだ。


憎い、憎い、憎たらしぃ・・・。


こんなに憎しみを感じたのは初めてだ。


殺したい、殺したい、その人間を、人間を殺したい!!!!!


だが、俺は現場を直接見たわけではない。死滅したという事実しか知らない。

でももう関係ない。恨みが募る、今更止まれない。

理不尽だろうが殺す、殺しつくす、気に入らない奴は――


――殺す。


最後にお前にもう一つ情報をくれてやるよ、人間は”式神”

連れていたらしいぞ。


嚇怒の俺には冷静に聞けてはいなかったが、今思い出した。


数年前に妖孤を連れた、爺さんが居ると。


全てを思い出し、全ての利点が合い俺は現下で怒り狂い――


――人間と妖孤に拳を振う。


今、過去を払拭するために。全ての憎しみをぶつける。


_________________________________________


現時点 一月二十八 冬 深夜


「(あ、これ死んだわ)」


単純な頭をしてる人間の心のセリフ。


空を切る音、まるで近くに戦闘機でも通ったみたいな音が全身に伝わる。

だが、気づくと俺は妖狐に担がれ化け物から離れていた。

鬼はいきなり殴りかかって来てたのだ、それを妖狐が助けてくれた。


気づけば、化け物からは百メートル以上は距離をとっていた。


一瞬だけだが、空を飛んだ感覚だった。

目を瞑っていたから、よく分からなかったけど。


「無事か?」

「あ、あぁ、お陰様で。しかし、一体なんだよこの化け物は・・・」

「鬼じゃよ」


鬼・・・だと?ここまで恐ろしい風格してるものなのか?大きさだって、八尺(はちしゃく)位だと思ってたのに、電信柱と同じくらいの身長じゃねぇかよ。

色彩も鮮やかな赤ではなく、不健康な人間の血液のようで、おどろおどろしい見た目の色だ。


しかしだな、怒り狂い方も尋常じゃない、人間が嫌いて言う浅はかな理由でここまではいかないと思う。

明らかに、俺にというより妖狐に怨みがあるのか?

話をできる状況じゃないと分かっているが、妖狐自身に聞かなければならない。

それに理由も分からないまま死ぬのはごめんだ。


「あのさ、鬼とは知り合いなのか?」

「んー・・・知り合いと言うより顔合わせした事あるくらいじゃな」

「えぇ?じゃあなんであそこまでお前に対してブチキレてんだよ・・・」

「多分じゃが、和彦に関係しておるな。昔、あの鬼の仲間を全員退治したからのぅ」

「そりゃ、怒るわ」

「私は傍観してただけじゃ、だがその場にいた事を広められたのじゃろうな、実際にその後は和彦の式となったからのぅ、否定はせんわい」

「てか、待てひいじいちゃんそんなに強かったのか!?」

「うむ、強いぞ――と、詳しい話は後じゃ」


妖孤の視線の先には全速力でこちらにくる鬼が見えた、あれに轢かれたら確実にお陀仏や。


「経輔、自宅まで走れ!」

「いや、なんでだ!それじゃ家族全員危険だろ!」

「大丈夫じゃ、”最強和彦”の強い結界が張っておる、この町での一番の安全圏じゃ」

「し、信じていいんだな?」

「お前にはその選択肢しかないぞい!」

「くっ・・・あぁー!もう分かったよ!こうなったらヤケクソじゃあぁ!」


自分の身体に鞭を打つように、膝を思い切り叩き。

肺の空気を全部吐き出し、涙目のまま『人生一番の走り』をイメージし走り出す。


『体育祭の50メートル走』よりも、『遅刻した時の走り』よりも速く、速く、走る。今までの自分の最高速度を保ち、走り抜ける。

だが体力が限界に達するのは直ぐだと自分では確信があった、何故ならこの町の土地はとても起伏が激しく、上り坂下り坂の量が多い。


走る事に全く向いてないのだ。


三分も経たずに、息切れし始める、今まで筋トレもせず怠けて生きていた俺に今すぐ正座させて説教してやりたい。

それに、誕生日だったし、食卓は豪勢で胃は最高に満たされ状態、更に初アルコールまで摂取している、いつもの倍疲れる。


「経輔!しっかりせい!ファイトじゃ!」

「ぬ、ぐぁい、まだまだぁぁぁー!!!」


ほぼ、火事場の馬鹿力状態で走り続ける。


心臓が爆発しそうだ。


「くっ・・・絶対にぃ!逃すかぁぁ!!こ、ろ、す、ぅゔ!!!」


鬼はそう叫ぶと、両腕を広げた。


「――”囲い結界”!!!」

「なんだと!?まずい!経輔もっと早く走れぇい!なのじゃ!」


何かを察したのか、妖狐は血相変えて、叫ぶ。


だが、とても運が悪くこんな夜中に人気(ひとけ)なのない小道に、前方から軽自動車が向かってきていた、俺は下りを全速力で走ってる途中、今止まったら、せっかくの体力がここで限界に達してしまう。


きっと、もう同じスピードを保ち走ることは無理だろう。


更に道幅も狭く、高速で通り抜けはほぼ困難。


不可能、今の俺には出来ない・・・じゃない。


やるんだ・・・やらなきゃ、死ぬんだぞ。


――止まらず、疾り抜け!


「うらぁぁぁぁあ”あ”!!!!!!」


経輔は対向車目掛けて、飛んだ、――なんと、バンパーを足場にして車の屋根に乗り、そのまま駆けるように、走り抜けた!


まさに神業、将来はスタントマンになれるかもしれない。


あと運転者さんすみません。


先程、屋根から降りた勢いで、足を少し挫いた気もするが今はどうでも良い、あと数メートルで自宅に着く、もう少しだ、踏ん張れ!



だが・・・その踏ん張りも、今までの映画俳優ばりの動きも意味をなさなくなる。



――不幸、ただただ不幸。


「嘘、だろ・・・」


よりによって、この日に限ってなんで!

また()()()()が来るんだよ!!!


「いつもは車通りが少ないのに・・・!」


もう一度車を乗り越える力は無い、助けを求める視線を妖狐に送る、だが鬼がこちらに追いつかないように、挑発をし動きを限定しつつ拳を避けながら走っている。


こっちに気を使えるほど余裕では無さそうだ。


それに車は止まる気も無くスピード全開で駆け上がってくる。


止まっても鬼に殺され”死ぬ”走り続けても轢かれて”死ぬ”


どちらを、選択しても、”死”。


いや、まだだ、生き残る為に選ぶ道筋は・・・!


『数秒でも命を保てる』確実な選択、だから即死する方は・・・。



――このまま走り続ける事!!!


――つまり正解は!


「止まる事!!!」


意を決し、スライディングで急停止を試みる。


「ずぅああぁぁ!!!!!」


靴裏から火で出そうだ、て言うかそれくらいの速度で走ってた事に驚く。


なんとか、ギリギリで止まる事が出来たが、早く起き上がらないとどの道、車に轢かれてしまう、脇道に逸れないと。


身体を動かした時、足首に激痛が走る。


「痛ッ!!!」


やっぱり脚に負荷をかけすぎたか・・・!


――まずった、これじゃ、結局死ぬ!


目を閉じる事も忘れ、諦めの境地に立たされた瞬間。


まさに戦慄、あとニ秒ほどでぶつかる瞬間に俺の目の前から車が消えた。フィードアウトする見たいに居なくなったのだ。


「へ?」


刮目(かつもく)すると薄い膜の様なものが、視界全体に広がっていた。


「な、なんなんだ・・・これ?」


触れてみるとじんわりと温かく、妖力なるものを感じた。

まぁ、勘だけど。

妖孤は拳を避けたと同時に、高く跳びはね、俺の真横に着地した。


「すまんの、やはり間に合わなかった」

「もしかしてだけどさ・・・閉じ込められたのか?」

「うむ、”籠の中の鳥”というやつじゃな」


積む、RPGのラスボス手前でMPもHPもほぼゼロに近い状態で、もしかしたら、ダンジョン最終で宝箱があり『秘薬』的なアイテムがゲット出来るとか『回復の泉』とか様々な可能性を信じるが、結局『なにもありませんでした』と分かった時の勇者御一行の気持ちってこんな感じなんだろうか。


自分の心情ずいぶん長々と表したが、とりあえずやばめ。


それにしても・・・妖孤は随分冷静だ、なにか策でもあるのだろうか?


俺なんて恐怖と不安と疲労で混沌としてんのに・・・。


「経輔、こっちじゃ・・・広けた場所に出るぞい」


いきなりの提案で戸惑いつつも、とりあえず妖孤の行く先を辿り、路地裏を通り、文字どうり広けた場所”国道”に出た。


そして、驚くべき光景を目にする、車は走っておらず、勿論人の気配も全くしない。

時間帯がそうだからかなと思ったが、二十年住んでる町の車両状況ぐらい分かる。

この先は工場だから、夜勤帯でよく出社する人が多い。

それでも一台も走っていない。

周りを見渡しながら、国道のど真ん中に立つ。


「(今、あの鬼はこっちに来ていない、今の内、気になる事全部聞いとこ)」

「あのさ、鬼ってあそこまで凶暴になるのか?」

「そうじゃの、本来常識の範囲以内の怒りならあそこまではならん」

「だよな・・・」

「仕舞には呪力まで応用しての結界とは、もうあれは鬼というより『邪鬼』に近いな」

「邪鬼か、嫌な名前だ」

「憎しみに囚われ、殺戮に身を投じた結果の”憎悪の権化(ごんげ)”とでも言えば良いかの・・・そんな妖怪が誕生してしまった」


本来存在しない、恐ろしい『怪異』それが、和彦曾爺ちゃんの所為だと思うと少しだけやるせなさを感じた。


でもなぜだろう、なにか”違和感”を感じるけど・・・、今は気にしてる場合では無いか、なんたって生死が係わってるからな。


それがフラグ回収に繋がったのか分からないが、爆撃が投下でもされた様な音が鳴ったと思った次の瞬間、手前に映った大きく薄らとした影がどんどん濃くなる、えげつない爆発音が鳴り響き、アスファルトを抉り、破片が飛び散る、電信柱や住宅に突き刺さる。

経輔と妖孤にも突風や破片が襲い掛かってきたが、またもや俺を担ぎ、後方へ避けた。さっきから救われっぱなしだ。


「ダイナミックな登場じゃな」

「げ、限度があるわ・・・!」


月明かりを遮る巨体、揺らめく邪悪な気迫。


俺たちを見下すように、そして今から殺すと言わんばかりの殺気。


自分はただ歯を食いしばり、小刻みに震える体を抑え、これから起きる事に覚悟を決める。


「もう逃げられないなぁ!!!さぁ!夜食の時間だぁぁ!!!!」


狂喜に満ちた様子で、叫ぶ。


冷や汗すら凍てついてしまいそうな程の風に吹かれ、手前に居る妖孤の髪と浴衣のスカートはヒラヒラと靡く(なび)

妖孤は足のつま先をトントンと地面に軽く叩き、邪鬼に対して挑発的な言葉を言い放つ。



ーー力を見せるには丁度いい相手じゃな。



その言葉と共に本格的な妖怪同士の戦いのゴングが鳴り響いた気がした。


後、俺の生唾を飲む音も鳴り響いた。

最後まで読んでくれた方は本当にありがとうございます。


なにか誤字や気に入らない所があった場合、助言をくだされば嬉しいです。


これからもマイペースで投稿していくのでよろしくお願いします。


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