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20歳になったら妖怪の類と生きる事になった。  作者: 積乱雲さいだー
第一章 原初の妖怪冬物語
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第一話【20歳になったら狐が来た】


 「今年の冬も一段と寒い」と人々は毎年のように言う。

「それ去年も言ってたわね」と声をかけるが聞こえるわけもない。

 

私はいつになったら”認識”してもらえるのだろうか。

明日?来年?再来年?でも『待つ』ことは慣れてる。


だが、お前が私に気づかず死ぬって事もあるからなぁ。

その時で次の”子”に期待するしかないのぅ・・・。

狐はそうして長い時を過ごしてきた。



――人からしたら更に長い時間を・・・。



『山本経輔』これが俺の名前だ、二十歳になるまでは、なんら変わらない普通の人生を送ってきた、特別能力があったわけでもないし、どちらかと言えば勉強や運動は苦手で陰キャラ側の人種だ。

 

休みの日などは家で一日中ネットサーフィンが当たり前、外出は趣味の写真撮影以外、皆無と言っていいだろう。


淡々と平凡な道を歩み、普通に高校を卒業し、当たり前のように社会に出て。

語る事も無いと断言出来るほどのつまらな過ぎる人間。


それでも”面白い事”を全く願った事のな無い人ではない、だからなのだろうか――


――ここまで、予想を遥かに超える出来事が起きるだなんて。


___________________________________________


平成三十ニ年:一月二十八日:夜:時刻 零時四十分 天気:快晴夜


『丸見え』それは気配が感じるとか薄うっすらではなく完全に認識可能状態の意味。

実際の辞典やウィキじゃこう言う意味じゃないだろうが、分かりやすさを重視結果だろう。


でも経輔の心情はそんな事すらどうでもいいで事。


一方、丸見えになってしまった妖怪側も驚いていたのだ。


「(まさかこのタイミングで見えてしまうとは・・・。誕生月だからか?)」


よく心霊スポット系の番組で出てくるワード『霊道』の用にその場所に居るだけで霊感が宿る可能性もある、なのでそれが関係しているのか・・・。


それとも、普通に経輔自身が誕生日と同時に覚醒したのか、色々考察したいとこだが、今は私が『丸見え』という事実がある以上、深く考えては妖怪でも疲弊はする。


とりあえず唐突に見える状況に確実に混乱するだろうし、落ち着かせなければならんな。


しかし、経輔はずっと動向が平っ気ぱなしだな・・・。


「おい、気を落ち着かせい」

「・・・お、落ち着いてますですよ?」


駄目だこりゃ、典型的なパニクリ方しておる。


「(――い、以外に友好的なのか・・・?いや!見た目はそこそこ可愛いが油断しちゃならねぇ、てかそう言うもの程毒があるってばあちゃんから教わったし)」


逃げなければ、一瞬で使命感が体中にめぐる。

血流が速く、速く、速く流れる、脈拍が上昇していく。

鼓動がいつもの倍だと感じとれる程に・・・。

激昂(げきこう)したときに近いリズムを刻んでゆく。


それに平和にまみれた人生だったとはいえ危機感ぐらいある。だからこいう時こそ沈着冷静に対処するんだ・・・。


「(まずは助けを求めに一階に下りる。それしかない!)」


右腕をゆっくり後ろに回し、ドアノブに手をかける、利き脚に力を込め、振り向く、同時にドアノブを下に引き、握った手を手前に押し出すが――


「っ!?」


 何故か、扉が開かない、上下にドアノブを勢いよく動かしても、前と後ろにも何度も何度も動かすが、びくともしない。


理解不能・・・。同時に思考も停止しかけた、手には冬だと言うのに汗がビッシリだ。


寒さで震えているのか恐怖なのかそれすらも分からない位のパニック状態。

無意識にドアノブを上げ下げし続ける。

更に俺の恐怖心を煽るが如く、窓際から降り、こちらにゆっくりと近づいてくる。少し手前で止まり、表情を窺われ、その後深い溜息をつく。


「・・・お主、仮にその扉が開き家族の元へ行けたとして何と言う?」

「――うっ」

「部屋にケモミミの生えた幼女が居るとでもいうのか?」

「(確かに・・・。この状況まんま説明したとこで笑われるか、精神病院送りかの二択だ)」

「どうじゃ?正論じゃろ?」


なにも言えない自分がそこにいた、未確認生物に知能で負けてどうするよ・・・。

最初に『沈着冷静』とか言ってたやつ出てこい鼻にポッキー詰めてやる。


いや、頭の中で下らない言葉を浮かべてる場合じゃねぇわ。


「・・・この言葉を信じてほしい、私はお主の味方じゃ」


――味方。


そうだな少し怯えすぎだな・・・。


だからって、そう簡単に信じてたらこれからの未来、詐欺にでも会っちまうよ、疑いは持ちつつ、今度こそ冷静に対応するんだ。


「でもここだと、込みあった話も出来ん、お主以外の目もあるし。よし、外に出る。準備せい」

「・・・え?」


か細い声で否定の意味を込めた「え」なのだが、勿論幼女には伝わるはずもなく、俺の手を取り外へ連れ出そうとする、なんというか相手もこれじゃ『埒が明かないな』という感じが見受けられた。


「ちょ、ちょ、せ、せめて防寒具を!」


何故ここで冬の常識を、口にしたんだ、馬鹿か俺は。


「そうじゃな、すまん」


厚着のコートを羽織りマフラーを適当に巻き外へ出る。

親には「夜散歩してくる」と伝る、深夜だから止められると思ったが、酒でへべれけな親達はすんなり了承してくれた。


これから、未確認ケモミミ幼女との恐怖の極寒ランデブーが始まるのだ。



午前:2時0分 夜空快晴: 満月 



昔ながらの街風景、現代チックを残しつつの街並み。

だがその場所も、今は丑三つ時で少し幻想的な雰囲気を醸し出す。遠望する先も異様な感覚だ・・。

冬独特の澄んだ空気、先ほど飲んだアルコールが白い息と同時に抜けて行く感じだ。歩く位置的には経輔は道路側でその隣に幼女がいる状態。

パキパキと足音とペタペタと横で歩くケモ幼女を見て『足寒くねぇのかな?』と思いつつも自分から声をかける勇気はない。

気づけば町から離れて、周りに街灯も少なくなっていた。

緊張度が増す。


「経輔よ、頭は冷えたか?」

「あー・・・、まぁ冷えたよ、脳内は」


東北の冬は容易にマイナス氷点下にいく、着込んでたって寒い、ましてや夜なら尚更だ、でも不思議と俺は寒さがあまり感じられない、てかむしろ暑い。


しかし、原因はもう分かっている、鼓動の高まりで体内温度が急上昇してる。


簡単にいえばビビりすぎてる。そりゃそうだ死ぬかもしれんし、震えて何が悪い!


「そろそろ、詳しく話すが良いか?」

「大丈夫だ・・・。問題無い」

「そうか」

「(すいませぇぇぇん!!!ホントは大問題ですぅぅ!)」


後悔を心の中で叫ぶ。


「・・・私は妖狐”妖怪”じゃ。経輔が死なぬよう守る役目がある」


――ん?


よ、妖狐だって?『な、何言ってるんだこの子は』と思ったが、確かによくよく見ればそうだな、そう見えるな・・・。


「――守るって?」

「無論『妖怪、悪霊、悪魔』様々な失せ物からじゃ」


 いきなり出て来た幼女妖孤は、俺の命を守るなどとぬかしたが、今まで妖怪どころか心霊体験もした事ない人だぞ、なのに二十歳になった今、妖怪が見えてしまうんなんて。どうやってルート選択ミスすればこうなるんだ・・・。

それに守ると言ってるこいつも妖怪じゃないか!


陰陽師の家柄でもないんだぞ?


・・・ドーマン、セーマンってか。


・・・やかましいわ!!


悲しくなるほどの雑なノリツッコミ。


「私はのぅ、昔、お主の曾祖父さん”和彦”に辱めを受け、家に取り憑いた妖狐じゃ」

「・・・え?」

「だが、腐れ縁と言うやつでな、色々話をしたり、戦っているうちにお互い力を認め合って”式神使い”同士の仲になったのじゃ」


 今、妖狐が言っている事を聞いて色々な辻褄(つじつま)があった、数分前に思い出した『狐と男』の話だ。やはり祖母の昔話は真実だった、おかげでこの子が妖怪なのも信じざるを得なくなった。

 不安は少し晴れ、今の状況は夢でも幻覚でもなく”現実”だと実感出来た。


――ようやく、恐怖が澄んだ空気と共に吹き飛んだ。


「そうか・・・君があの妖狐か。良かったよ少しだけ謎が解けた」

「本題はこれからじゃぞ?」

「なのか、そういやさっき俺が死ぬとか言ってたけどそれに関係するのかやっぱり?」

「――ん、経輔・・・動くな」


『動くな』と言われる前に俺は停止していた。


――悪寒、とてつもない慄然(りつぜん)


妖狐の右側に、小刻みに震える青ざめた女性が右目で確認ができた。


すぐ近くだ『妖狐、一つ飛ばして幽霊さん』状態、鳥肌がとまらない、俺自身も震えはじめる。


「あんまり見るな」


言われなくてももう見てない、怖すぎるわ!


その幽霊は首を右に90度に曲げ、凝視し続けてくる。


「(くそっ!いつまで見てくるつもりだよ!)」


だが、少しずつ首は戻っていき、霧のように消えていった。

同時に悪寒も去ってたみたいだ。


「・・・はぁ、妖狐?もう大丈夫かな?」

「おい、それは私じゃないぞ」

「はい?」


次は口だけで目がない妖孤がこちらを満面の笑みで見ていた。


「ヨシエェーー!!!!!」


その妖怪は高笑いしながら、走り去っていった。

ちなみに叫びの件だが、某フリーホラーゲームの○○の森の敵キャラにそっくりだったもので、ついそんな言葉が・・。


初めて憔悴していく自分に滑稽すらあった、これが限界突破の気分か。


「最初の青女はぶるぶるという妖怪じゃな」

「それ、聞いたことはあるな、結構スタンダードな奴だよな?」

「まぁ、数は少ないが有名じゃな。だが本来、夏の方が活発なのじゃが、珍しいこともあるな」

「流石に詳しいな・・・」


気づけば妖孤、淡々と会話していた。

自分自身も驚きを隠せない。

数分前の自分に見せてやりたい――「妖怪と()()についての世間話してるぞ」って。




・・・・・・・・。




――唐突の凍てつく寒風、頬に粉雪が張り付つき、それを手の甲で(ぬぐ)う。熱で溶けた粉雪が指先へ垂れ、雫となって地に落ちる。

一瞬の静寂・・。その時全身の毛が逆立った。

急に呼吸がしにくくなる、肺に異物が入り込んでいるような感覚が数秒間続く。

胸元を衣服ごと掴み、歯をガタガタと震わせる、だが寒さではない――恐怖。


精神が累卵(るいらん)しそうだ。


突然、地鳴りが鳴り始め、いや・・・どちらかといえば”(いかずち)”にちかいだろうか。


そんな轟音は経輔と妖孤のすぐ後ろで止まり、怒声じみた言葉が後頭部から脳へと響きわたる。


「こんな時間に食事か・・・?」


妖孤は既に振り向き、なにが居るのかを確認している。


「(まずいのぅ、これは)」


俺も振り向くさ、でも動かないんだ、分かってるんだ!

見なきゃいけないのは・・・!


でも――


――マジで動かねぇ。


そうだな、妖怪で例えるなら、『子泣き爺』がおぶさってるんじゃないかってくらい体が鈍く。自分の体重が倍になっている感覚が実感できる。


またもや恐怖を煽るように声が聞こえてくる。


「でも妖孤、好物は『油揚げ』だろ、人間を喰うのか?」



――油揚げ。


――きつねうどん。


――妖孤。


連想していくにつれ、最後の言葉に、救われた。


――そうだ・・・、俺には守ってくれる式神がいる、大丈夫だ!振り向け!


確認しないと恐怖が増すばかりだろ!

もしかしたら怖くない可能性だってあるし・・・。

だから振り向くんだ!

針の穴に糸を通すよりも慎重に、目の端からどんどん視界に入れていく。


目の前には”黒い壁”が見えた。


「違う、壁じゃねぇ・・・」


上を見上げると答えはあった。


初めての都会に行った時、高層ビルやタワーなどに驚いた時の感情と少し似ている。でも、確実にベクトルが違う。

圧巻の一言、見上げる首にジワジワと痛みがくる。

畏怖の念が込み上げて、ただ逃げたい気持ちでいっぱい、この場から去りたい。家に帰って、美少女アニメで癒されたい。


「ちょうど小腹が空いててな、その人間、譲ってくれよ」

「これは私の主だ」

「・・・なに?」


――二十年目の誕生日プレゼントは『低反発枕とヘッドホン』だけの筈だった。


これから先、未来永劫貰う事も無いであろう”(プレゼント)


しかも、亡き曾祖父からの贈り物。


今までで一番、”凄く”それでいて「いらない」と思った。


不思議な体験から一時間、妖怪だと理解してから十分。

まだ心の準備も出来てない、一日ゆっくり考えさせて欲しい。

それなのに、俺の目の前には”赤黒い巨人”がいる。


おい兵長呼んで来いよ・・・。


「人間に魂を売ったか!下劣な妖孤めが!」

「阿呆、三十年前から決まっていた事だ」

「三十年前だと?まさかお前!あの時居た(じじい)の式神か!」

「ん、知っておったか」

「――さん、ゆるざんぞぉぉぉーー!!!殺すぅぅぅうぅぅぅう”!!」


――威喝、人を驚倒させる程の声量。


どうして、怒りが爆発したのか分からない。さっき妖孤と会話してる気がしたがそれが原因だろうか。


いやそんなのどうでもいい今は自分の事で手一杯。


俺の心臓も股関限界で、臓器も尿も飛び出そうだ、いわゆる失禁。


『涙、嘔吐、血』そんな描写が何故か脳裏に写りこむ。


これから数秒後の自分を想像してしまった。


――死、初めて身近に感じる。


――生、今だけは何処(いずこ)へか走り出す。


先程まで音を受け付けなかった耳に妖孤の声が聞こえた。


「しかし、油揚げか、久方ぶり食べたいのぅ」


「(呑気すぎる・・・)」


――――――――――――――――――――――――



これから始まる物語は、序章から命を落としかねない現状で、でもこれが山本経輔にとっては大切な事。


妖孤の力を、そして俺が踏み込んだ世界を”知る”には、良い機会だ。


さぁ始めよう。


人間と妖怪が交わる”日常戦闘(ライフワーク)”を。

最後まで読んでくれた方は本当にありがとうございます。

なにか誤字や気に入らない所があった場合、助言をくだされば嬉しいです。

これからも投稿していくのでよろしくお願いします。

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