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雪降れ
科学室には、不気味な雰囲気を放つ人体模型。
内臓が露わになって、目を見開いていた。
僕は、人体模型の腹部にそっと触れた。
プラスチック製の内臓は、冷たく、生気というものがまったく無かった。
あたりまえと言えば、あたりまえだが。
「どうしたんだい?」
誰もいなかったはずの準備室から、不意に声がした。
振り返ると、そこには理科教師がいた。
若い華奢な教師で、女子からの支持の高い、榎本だ。
「いえ・・・すみません、特に用は・・・。」
「いいですよ、人体が好きですか?」
「あの・・・そういう訳では無いですね。」
「そうなんですか、私は結構好きですよ。不思議と惹きつけられるんですよね。」
人体に惹きつけられるとは、どういう意味なんだろうか。
人間が好きということでいいんだろうか。
「とにかく、今日は早く帰りなさい。危険ですからね。あんな事件もありましたし。」
「そうですね。じゃぁ・・・今日は帰ります、さようなら。」
「はい、さようなら。」
僕は、榎本に背を向けて扉を開けた。
科学室から出ると、急に寒くなった。
科学室は暖房が効いていたんだろう。
僕は、鞄の隣に置いていたジャンバーを羽織った。
肩に鞄を提げて、薄暗い階段を、ひとり降りた。
窓から見えた空は、6時を過ぎたせいか、漆黒の闇のように暗かった。




