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EIGHTEEN LIVES:再生の迷宮〜二度目のチャンスのダンジョン〜  作者: ルーク
【 旅路に縛られし者へ、ようこそ 】

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5/19

1階:ボーンアーチャー

 骸骨が振り向いた。


 ケイルは、それが何を目撃したのかを確認する間も惜しんだ。


 全力で駆けた。


 脇扉から外へ飛び出し、薄暗い灰色の光の中へと滑り込む。そしてその瞬間、彼は最初の過ちを犯した。


 直線に走ってしまったのだ。


 ドスッ。


 左肩のてっぺんを、白い熱が引き裂いた。


 凄まじい衝撃に身体が回転する。瓦礫の山の背後へと転がり込み、地面を滑りながら、彼は片手で傷口を強く押さえた。奥歯を噛み締めすぎて、顎の骨が軋む。


「あ……くそ、この……ッ!」


 続く罵声を強引に飲み込んだ。


【警告:ダメージを検出しました】


【残機:17 / 18】


 矢は彼の肩の肉を荒々しく削り取り、背後の壁に当たって跳ね返っていた。数インチ低ければ、そのまま撃ち抜かれていただろう。


 自分の手を見つめる。赤かった。


(十七――)


(あと少しで、十六になるところだった)


(俺が馬鹿みたいに真っ直ぐ走ったせいで)


 心臓が激しく鐘を鳴らし、その鼓動が耳の奥で直に響く。


 この状況を整えるために、一時間も費やしたのだ。石を投げ、秒数を数え、塔の周りを這い回った一時間。それなのに、パニックに陥ったせいで、わずか二拍子の間にすべてを台無しにしかけた。


(もう二度と御免だ)


(もう一つだって失うわけにはいかない。特に、あんな奴相手には)


 息を吸い、吐き出す。


 それから、今日一日ずっと続けてきた行動をとった。


 耳を澄ます。


 「弓兵」は今、出入り口に立っていた。灰色の背景に、背の高い黒い影が浮かび上がっている。塔から足を踏み出すたび、骨が石に触れる硬い音がカチリと鳴った。骸骨の頭が、ゆっくりと左へ、それから右へと振られる。


 捜索しているのだ。


 瓦礫の影に隠れた彼を見失ったらしい。


(動かなければ、あいつには見えない)


 背中を石壁に押し付け、目測で距離を数えた。


 扉から瓦礫まで。八歩。いや、七歩か。


(射撃の間隔は七秒)


(俺たちの距離は七歩)


 思わず笑いが込み上げそうになった。


(タイミングさえ合わせれば、タダで一発殴れるような距離じゃないか)


 そのとき、システムが提示したヒントを思い出した。


【ヒント:ボーンアーチャーは、対象が3歩以内に接近すると短剣を抜く】


 笑みが消え失せる。


(そうだ。それがあった……)


 市場の露店で計算でもするように、彼は一つずつ、じっくりと思考を組み立てていった。


 遠くにとどまれば、撃たれる。


 近づけば、刺される。


 もし、奴が矢を放った直後に接近すればどうなる? 奴の手には弓があり、つがえられた矢はないはずだ。弓を放り出し、短剣に手を伸ばす。


 その一秒こそが、確実に計算に組み込める隙だ。


 それこそが、彼に与えられた唯一の一秒だった。


 視線を落とし、スキルウィンドウを確認する。


【瞬歩:使用可能】


【効果持続時間:1.2秒】


「一点二秒……」


 彼は低く呟いた。


(距離を詰めるためには使うな。それは走れば済む)


(あの刃を避けるために使うんだ)


(その後で、奴が反応する前に叩き込む)


 口の中がカラカラに乾いていく。


(丁半博打だ)


(だが、手持ちのコインはこれしかない)


 彼は右手を動かし、錆びた鉄棒をきつく握り直した。


* * *


 放たれる瞬間を待つ。


 それは、まさに予想通りのタイミングで訪れた。


 弓兵は瓦礫に向けて弓を持ち上げ、一瞬だけ躊躇した後、ケイルの左側にある何もない壁の隙間に向けて矢を放った。


 ドスッ。


(一)


 ケイルはすでに地を蹴っていた。


(二)


 石の陰から飛び出し、全力で疾走する。右手には鉄棒。左腕はだらりと垂れ下がり、焼け付くように痛む。


 残り、七歩。


(三)


 弓兵の頭骨が、鋭く彼の方を向いた。


 気づかれた。当然だ。犬に追われる子供のように、なりふり構わず走っているのだから。


 奴が矢筒へ手を伸ばす。


(四――ッ!)


 残り四歩。あと四歩。


 弓兵の手が、途中でぴたりと止まった。


 矢を掴むのをやめたのだ。


 指先から弓がこぼれ落ち、石の床に激しい音を立てて転がる。


 代わりに、奴の袖口から白く長いものが滑り出てきた。


 短剣だ。刃は黄ばんだ骨でできており、針のように細く、その倍は鋭そうだ。


【警告:近接戦闘に突入しました】


 残り、三歩。


 弓兵が一歩踏み出し、鋭い突きを放つ。


 ケイルの心臓が跳ね上がった。


「――瞬歩!」


【瞬歩が発動しました】


* * *


 世界の動きが止まった。


 完全に止まったわけではない。引き延ばされたのだ。まるで、すべてが蜂蜜の中に沈められたかのように、じっとりと遅くなる。


 脇腹を目指して突き出される短剣が、白い光の線となって虚空を這う。


 ケイルにはそれが見えていた。


 はっきりと、その軌道が見える。


 弓兵の手首が返る瞬間。腕に走る微小な震え。刃のすぐ横にある、自身の肩幅ほどの、がら空きの空間。


(動け)


 彼の足が横へと滑る。


 短剣が脇腹をかすめて通り過ぎた。あまりの近さに、シャツの生地が裂け、腕の産毛が逆立つのが分かった。


 すぐそこに、弓兵の顔があった。


 手を伸ばせば触れられる距離。


 骨に刻まれた細かなひび割れさえ、数え切れそうなほど近い。


 弓兵の空ろな眼窩が、スローモーションの中でゆっくりと彼へと向けられる。


(今だ――)


 鉄棒を振り抜いた。


 錆びた鉄の塊が、水平に、速度と全体重のすべてを乗せて空間を裂く。


 それは、骸骨の側頭部を正確に捉えた。


 ――バキッ!


 凄まじい音が響き渡った。


 頭骨が真横へと弾け飛ぶ。骨の破片が、白い紙吹雪のように宙を舞った。


 ケイルは止まらない。


 軸足を鋭く旋回させ、腰を捻り、弓兵の肋骨に向けて真後ろからブーツを叩き込んだ。


 バキバキと不気味な音が響く。


 弓兵の身体が宙を飛んだ。


 骨の砕ける音を立てて塔の壁に激突し、あり得ない方向に手足を折り曲げたまま、地面へと崩れ落ちる。


【瞬歩が終了しました】


 世界の流れが、一瞬で元の速度へと引き戻された。


 ケイルはよろめき、辛うじて踏みとどまった。胸を激しく上下させ、鉄棒をぶら下げたままその場に立ち尽くす。耳の奥で、風のような轟音が鳴り響いていた。


 弓兵が再び立ち上がることはなかった。


* * *


【魔物を討伐しました:ボーンアーチャー】


 一瞬の間、誰も動かなかった。


 やがて、ケイルの口から咳のような乾いた笑いが漏れた。


「やったぞ……」彼は喘ぐように言った。「本当に、やり遂げたんだ」


 鉄棒に目を落とす。先端の近くの錆が剥がれ落ちていた。凹んだ部分には、小さな骨の破片がこびりついている。


「よし。今の動きは悪くなかった」


(最高に、最高に格好良かったじゃないか)


 新たなウィンドウが開いた。


【武技を習得しました】


【武技熟練度:5%】


 ケイルは瞬きをした。


「武技?」


(今の戦いのことか。あのステップ、スイング、そしてキック――)


(なるほど、こうやって戦い方を学んでいくわけか)


 胸の奥に、少し間抜けで、誇らしげな温かいものが込み上げてくる。


 だが、その温もりは三秒ほどしか持たなかった。


 今度は、彼の肩が負傷を思い出したのだ。


 冷水を浴びせられたかのように激痛が戻ってくる。左腕が急激に重くなった。視界が目まぐるしく揺れ、彼は壁に背を預けて激しくへたり込んだ。


【警告:失血を確認しました】


【推奨:試練ポイントを消費し、緊急治療ポーションを購入してください】


【Yes / No】


「おいおい……」ケイルは弱々しく呟いた。「これは不味いな」


 下を見る。


 袖は血を吸って黒く重く変化していた。細い血の筋が腕を伝って手首を通り、石の床へと絶え間なく滴り落ちている。以前、ハスクに付けられた古い傷まで再び開き始めていた。


(かなりの量が出てるな……)


(本気でどうにかしないと死ぬぞ)


「Yesだ」彼は言った。「Yes。当然Yesに決まってるだろ」


【試練ポイント×1を消費しました】


 彼の右手に、親指ほどの小さなガラスの小瓶が現れた。中には、かすかに緑色に輝く液体が満ちている。


【アイテム:緊急治療ポーション】


(これ、どうやって使うんだ?)


(飲むのか?)


 システムは、親切にも何も教えてくれなかった。


 直感が「飲むな」と告げていた。


 どちらにせよ、彼の両手はすでに動いていた。


 小瓶の首を指先で挟み、手の付け根に叩きつけて強引に砕く。


 温かい緑色の光が、彼の指先から溢れ出した。


 それが、皮膚へと染み込んでいく。


 ケイルは息を呑んだ。


 血管の中に熱湯を注ぎ込まれたかのような感覚だった。熱は腕を駆け上がり、肩へと流れ込む。引き裂かれた肉が、一針ずつ縫い合わされていくのが生々しく伝わってきた。前腕の古い傷が塞がる。矢が穿った傷の縁が、引き締まるように閉じていく。


 眩暈が消えた。


 痛みも引いていく。


 彼は震える息を、長く吐き出した。


【体力回復:67%】


「六十七パーセントか」彼はぼやいた。「全快じゃない。まあいい、十分だ」


(それでも、この場所に来てから一番マシな気分だ)


* * *


 さらに別のウィンドウが滑り出てきた。今度のものは、一段と輝きが強い。


【ドロップアイテムを検知しました:2】


 ケイルは顔を上げた。


 弓兵の砕けた肋骨から、二つの小さな光が浮かび上がっていた。一つは、青白い銀色。もう一つは、淡く澄んだ金色。


 それらは彼の元へと漂い、目の高さで静止した。


【スキルを検知しました:アーチャー】


【階級:I+】


【アーチャーを獲得しますか?】


【Yes / No】


「Yes」


【スキルを獲得しました:アーチャー】


 暗闇の遥か後方で、ガラスの重なるような音が響いた。


【スキルを検知しました:鷹の目】


【階級:I+】


【効果:「アーチャー」装備時、視界の範囲を広げる】


【鷹の目を獲得しますか?】


【Yes / No】


「Yes」


【スキルを獲得しました:鷹の目】


 再び、ガラスの音が響く。


(二つのフラスコ。二つの新しいスキルか)


(まるでお祭りの子供みたいに、色んなものを集めてるな)


 にやりと笑みを浮かべ、それから次のウィンドウに目をやった。


【使用するための熟練度が不足しています】


【必要な経験値:5】


【現在の経験値:1】


 笑みが引きつった。


「おい、待て。なんだこれ?」


 もう一度読み直す。


「五ポイント必要なのに、一ポイントしか無いってことか?」


(つまり、まだ使えないのかよ)


(もっと魔物を倒すまでは)


 無事な方の手で、彼は顔をがしがしと擦った。


「まあ、そうだよな。条件がないわけがない」


(簡単に手に入ったら、面白くないもんな)


 壁に頭を預け、彼は紫色の空を見上げた。


 アドレナリンが急速に抜けていくのを感じる。足はスープのように力が入らず、口の中は鉄の味がした。ゆっくりと、だが大きく響く自分の心音だけが聞こえる。


(今、別の魔物が来たら確実に終わりだな)


(これ以上は戦えない。こんな状態じゃ無理だ)


 スキルのクールダウンを確認する。


【瞬歩:クールダウン 12秒】


(残機は十七。肩は動くようになった。満たされたフラスコが一つと、新しいのが二つ)


(上出来だ)


(これ以上、無理をするのはやめよう)


 彼はゆっくりと立ち上がり、鉄棒を拾い上げると、聖遺物保管庫《レリクアリ》への長い帰路につき始めた。


* * *


 中へ足を踏み入れると、壁がかすかに脈打つように鳴った。


 暗闇の中でフラスコが光を放っている。今や三つが満たされ、無数の空のボトルの間で、寂しげな小さな星のように吊り下がっていた。


 ケイルは冷たい床の上に身体を横たえ、大の字になった。


 まるで、世界で最高のベッドに横たわっているかのような心地だった。


「よし」彼は天井に向けて話しかけた。「一眠りするぞ」


 目を閉じる。


「一時間だ。俺を食べようとする奴が来たら起こしてくれ」


 システムは何も答えなかった。


(最高だな)


(本当に役に立つシステムだよ)


 彼は小さく笑みを浮かべた。


 そして、眠りに落ちた。


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