第8階層:ウィックイーター
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この旅路に加わってくださり、そしてカエルの物語にチャンスをくれたことに心から感謝します。
―― ルーク
その銀色の衝撃波は、夜空に浮かぶ鋭利な三日月そのものだった。
キラが放ったS+級の超絶スキル『裂空の弧月』の一撃は、カイルの投げた炎によって熱く融解し始めていたウィックイーターの巨大な胴体を、大気を割る轟音とともに真横から綺麗に両断した。
ドガァァァン!!
切断された上半分の大質量が、激しい火花と溶けた蝋の雨を撒き散らしながら地面へと轟音を立てて崩れ落ちる。中央の巨大な「口」が引き裂かれ、断末魔の湿った咆哮が洞窟全体を激しく震わせた。
ボスの肉体は地面に激突すると同時に、凄まじい光の粒子となって暗闇の中へと完全に霧散していった。
【 第八階層ボス:ウィックイーターを討伐しました 】
世界に、再び完全な静寂が戻る。
その瞬間、彼らの背後にあった三つの黒石のアーチの頭上で、チリン、と心地よい鈴の音が一度だけ響き渡った。
カイルが息を切らせながら見上げると、中央の『二つ目のアーチ』だけが、突如として鮮やかな緑色の光を放ち始め、確かな進路を指し示していた。
「……やったな」カイルは膝に手をつき、掠れた声で笑った。「正解は、二つ目だ」
「うん。やっぱりカイルの作戦通りだったね」
キラが彼の隣へと歩み寄り、その繋いだ手にそっと自分の指を絡ませた。彼女の瞳は暗闇の中で未だに妖しく真紅に潤んでいたが、その口元には、いつも通りの上品で穏やかな笑みが完璧に修復されていた。
(流石は私のカイル。どんな絶望的な場所でも、君は私のために道を切り開いてくれる)
(さあ、次の階層へ行こう? 邪魔な虫はもう誰もいない。この地獄の先まで、ずっと二人きりで登っていこうね)
衣服の奥、彼女の手首に染み付いた血の匂いは、激しい戦闘の硝煙と焦げた蝋の臭気にかき消されてカイルに届くことはなかった。カイルはただ、彼女の手の温もりに安舵しながら、緑色に輝く二つ目のアーチの先へと歩みを進めた。
彼らの魂の最奥に潜む『S』は、脳内の暗闇の中で、今や狂おしい愉悦の笑声を響かせていた。
(あはは、お見事! 本当に最高の一幕だったわ、カイル!)
(ボスを倒して道を無理やりこじ開けるなんて、どんどん『怪物』に近づいていくじゃない。その隣にいる血塗られたお嬢さんと、貴方は本当にお似合いの二人よ)
(さあ、次はいよいよ第九階層。第十階層の守護者のフロアを目前に控えたその場所で、一体どんな美しい破滅の物語が紡がれるのか、私は本当に楽しみで仕方がないわねぇ?)
彼女は躊躇わなかった。
突撃する彼女の身体を、一筋の銀色の閃光が包み込む。
【 スキル『疾走』を検知しました 】
【 橘 キラが主導権を握っています 】
世界が劇的に速度を落とす中、キラは燃え盛る蝋の嵐を滑らかにくぐり抜けた。彼女の跳躍は重力を無視したかのように高く、美しかった。空間を裂く風の音が、まるで彼女の歓喜の歌のように響き渡る。
その両眸は、暗闇の中で爛々と真紅に燃え上がっていた。
「アハハハハッ!!」
彼女の喉から、歓喜に満ちた、どこか狂気じみた笑い声が漏れ出た。
むき出しになった、淡く脈動するボスの『コア』。
キラは空中で身体をひねると、新しく手に入れたS+級スキル『裂空の弧月』を完全に発動させた。彼女の短剣から放たれた三日月型の銀色の衝撃波は、これまでで最も巨大で、最も鋭利だった。
パシィィィィンッ!!!
耳をツんざくような大音響とともに、ウィックイーターのコアが粉々に砕け散った。
その瞬間、無数の叫び声が一斉に掻き消え、巨大な蝋の山は支えを失った泥のようにドロドロと地面へと崩れ落ちていった。そして次の瞬間には、凄まじい光の粒子となって暗闇の中へと完全に霧散していったのだった。
【 第八階層ボス:ウィックイーターを討伐しました 】
世界に、再び完全な静寂が戻る。
チリン、と心地よい鈴の音が、彼らの背後にある黒石のアーチの頭上で一度だけ響き渡った。
カイルが息を切らせながら見上げると、中央の『二つ目のアーチ』だけが、突如として鮮やかな緑色の光を放ち始め、確かな進路を指し示していた。
「……やったな」カイルは膝に手をつき、掠れた声で笑った。「正解は、二つ目だ」
「うん。やっぱりカイルの作戦通りだったね」
キラが彼の隣へと歩み寄り、その繋いだ手にそっと自分の指を絡ませた。彼女の瞳は暗闇の中で未だに妖しく真紅に潤んでいたが、その口元には、いつも通りの上品で穏やかな笑みが完璧に修復されていた。
(流石は私のカイル。どんな絶望的な場所でも、君は私のために道を切り開いてくれる)
(さあ、次の階層へ行こう? 邪魔な虫はもう誰もいない。この地獄の先まで、ずっと二人きりで登っていこうね)
衣服の奥、彼女の手首に染み付いた血の匂いは、激しい戦闘の硝煙と焦げた蝋の臭気にかき消されてカイルに届くことはなかった。カイルはただ、彼女の手の温もりに安堵しながら、緑色に輝く二つ目のアーチの先へと歩みを進めた。
彼らの魂の最奥に潜む『S』は、脳内の暗闇の中で、今や狂おしい愉悦の笑声を響かせていた。
(あはは、お見事! 本当に最高の一幕だったわ、カイル!)
(ボスを倒して道を無理やりこじ開けるなんて、どんどん『怪物』に近づいていくじゃない。その隣にいる血塗られたお嬢さんと、貴方は本当にお似合いの二人よ)
(さあ、次はいよいよ第九階層。第十階層の守護者のフロアを目前に控えたその場所で、一体どんな美しい破滅の物語が紡がれるのか、私は本当に楽しみで仕方がないわねぇ?)




