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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

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第78話 共に


「あの……黒沢君?」


「うん? どうしたの? あっ、今日も物凄く美味しいです。っていうか、そろそろ食費とか渡した方が良いよね……何度もお弁当作って貰っている以上、それ以外でもお礼しなきゃ」


「ぁっ、いえ……そっちは別に、良いんですけど……」


 色々忙しかったのはイベント初日のみで、その後は時間通りログアウトしたので……ゲームの方は問題なかったのだが。

 なんだか、最近黒沢君がちょっとだけ変わった気がする。

 本日もいつも通りの場所で、二人でお弁当を食べている訳だが。

 前みたいに、ちょっと慌てた様子が無くなったと言うか……何と言えば良いんだろう?

 ちょっと客観的に物事を見ている様な、前とは違う冷静な雰囲気が目立つ。

 どっちの方が良かったというか、そんな事を言うつもりは無いけど。

 今の方がちょっと大人っぽいというか、静かな印象を受けるのは確かなのだが……。


「最近、何かありましたか? ちょっと、普段とは違うというか……」


「いや、これといって? 普段通りだと思うけど……何か、変だった?」


 正直、言葉にするのは難しい。

 けど間違いなく、雰囲気が変わったのは分かる。

 でも言葉には出来ないからこそ、モヤモヤとした感情だけが胸の中に溜まっていくのだが。


「あ、あのっ! 前に話した……デートの件、なのですが……」


 とにかく会話を繋ぐ為に、なんて言ったら聞こえが悪いが。

 ちょっと今の雰囲気が気まずくて、そんな話題を出してみた。

 私の中で、デートというモノが明確に形になった訳では無いけど。

 残りのイベント中に、sevenからそれっぽい事を色々教えてもらったのだ。


「私から色々言うと、それこそアダルティーな内容を含んじゃうかもだけど……シックスの場合は、多分そうじゃないもんね。いやでも、高校生なら普通か? う~ん……いや、ここは清純派で行きましょうか!」


 という、よく分からないお言葉を頂いた後。

 オフショットイベント中に、彼女から色々とご教授をいただいた。

 そもそもデートとは“相手を楽しませる”事が前提である、と教えられた。

 これに関しては、首がもげる程頷けるお話だったのだが。


「でもね、よく考えて? 相手は別の目的が~とか、とりあえず肉体関係をって場合ならまだしも……って違う! 今のシックスにはこういう話は無粋! とにかく、相手もこっちと同じ目的だった前提で考えて? その場合、デートのゴールってどこ?」


「え、えぇと? 一緒に楽しむ……でしょうか?」


「その通り! でもね? 相手をヨイショしたり、向こうを楽しませなきゃ~って必死になってると、自分の事が疎かになっちゃうの。相手が喜んでくれた、良かったー。確かにこれも正解。けど、それは本当にシックスも楽しんでる? 達成感と自己満足感は違うの、幸福の方向性が似てるけど違う。ソレに相手が気がついた場合……向こうからしたら、そのデートは“失敗”って事になっちゃうんだわぁ」


 なんて、とてもとても深い事を言われた。

 つまり私は、前提から間違えていたのだろう。

 そういうイベントをこなす為には、とにかく相手に退屈させない事。

 粗相がない様に、隣を歩いていても不快に思わせない様に。

 全部終わった後、相手に楽しかったと思って貰える様にしないと……なんて、色々考えていたのだが。

 sevenの言う通り、これら全てを相手も同じ事を考えていたら?

 両者とも気を使い合って、いくらでも言葉を飾る事は出来るだろう。

 しかしながら、本気で“楽しかった”と思ってもらう為には……それでは駄目なのだと教えてもらった。

 どんな事にも、“本気”があって。

 どんなに小さなことでも、“一番”になるのは難しいのだと最近知ったからこそ。

 今までの私みたいに、“ある程度”で収めてはいけない事例なのだと、改め自覚したのだ。

 だからこそ。


「もう少し、時間を頂けないでしょうか? 今の私じゃ、黒沢君の好きな物とか、楽しめそうな事とか、美味しいって笑ってくれそうな食べ物とか。全然知らないんです。だから……えっと、もっともっと教えてもらってから、ちゃんとデートした方が良いのかなって……そう、思いまして。なので、その! もっと黒沢君の事を教えて頂けると、嬉しい……と言いますか。そしたら、二人で楽しめる場所に行って、一緒に笑いたいなって……思いまして」


 最後の方は自信が無くなって来て、ポソポソと情けなく言葉を紡いでしまったが。

 改めて考えると、なんか自分でも凄い事を言っている気がするんだけど。

 そもそもこんな重大イベントというか、まさに高校生! っていう雰囲気の、私には本来縁が無かった筈のお話なのだ。

 だからこそ待ってくれなんてお願いするのは、本来失礼なのかもしれないけど。

 でも、ちゃんと黒沢君には“楽しい”って思って欲しいので。

 それに最近は、なんだか内心疲れた顔を度々浮かべている気がして。

 どうしたのって、普通に聞ければ良いのに。

 私には、そんなコミュ力が無いので。

 だったら、自分に出来る事でこの人を元気付けたいと思ってしまったのだ。

 なんて、自分なりの決意表明的な意味だったのだが。


「え、えぇと……断られた、訳じゃ……ない?」


「へ? うんと? 断わる理由とかは無いので……もう少し準備期間が欲しいと、そういうご相談なのですが……」


 ポカンとした表情の彼にそんな事を言われてしまい、此方としても似たような表情で声を返してしまった。

 あ、あれ? もしかして今の、お断りに聞えるんだろうか?

 だとしたら“陽キャ”と呼ばれる人たちの言語は、私には少々難し過ぎると考えた方が良さそうなのだが。

 などと、内心慌て始めていると。


「プッ、アハハハッ! なんかもう、ホント……白川さんは、ズルいなぁ」


「え!? あ、あのっ! 私やっぱり何か失礼な事を言っていましたか!? だとしたらすみません! そうじゃないんです! 私が言いたいのは――」


「違う違う、そういう意味じゃないよ。うん、ありがと。なんて言うか……白川さんと話してると、本当に……頑張ろうって思えちゃって。色々あっても、頑張ろうって。だから、ズルいなぁって」


「……う、うん? えぇと?」


 よく分からないけど、彼は楽しそうに笑い始め。

 なんだか、ここ最近の無理している様な雰囲気が段々と霧散していく。

 そして。


「俺も、白川さんの事をもっと教えて欲しい……かな。どんな事をするのが楽しいとか、どんな物が好きかとか。色んな事を、もっと知りたい」


 そう言葉にした彼は、私が知っている“いつもの”黒沢君の笑顔に戻っていた。


「やっと、戻ってくれました」


「え?」


 何だか嬉しくなってしまい、此方も表情をフニャッと緩めてから。


「今、私の好きな黒沢君の顔をしてます。凄く柔らかくて、見てるだけでも安心する様な。ちょっとだけ、最近雰囲気が違ったので。なんだか、安心しちゃいました」


 ホッと息を零しながらも、にへへっと気の抜けた笑みを浮かべていると。

 相手はサッと顔を隠してしまい、しかもそっぽを向いてしまったではないか。

 あ、あれ? やっぱり私、変な事を言ってしまっただろうか?

 アワアワしつつ、なんと声を掛けて良いのか迷っていると。


「やっぱり、白川さんはズルいと思います……シレッとそういう事言うし……」


「へ!? いや、えっと!? 私やっぱり変な事言いましたか!? ごめんなさい! 不快にさせるつもりでは無くてですね!?」


 何が問題だったのか分からないが、とりあえずブンブンと頭を上下に振って謝罪しておいた。

 やっぱり……友達という存在は、まだまだ私には理解しきれない部分が多い様だ。

 周りの皆は、こんな高度な技術を駆使しながら毎日の生活を送っているのか……などと思うと、正直将来に不安しか残らないが。

 とりあえず、今は。

 黒沢君も嫌がっている訳では無い、との事なので。

 まぁ、良しとする事にした。

 最後まで私の何がズルいのかは教えてくれなかったけど。

 でも何かしらの要因があったと言うのなら、今後はズルくない様にちゃんとしないと。

 なんて、改めてグッと拳を握り締めたのであった。



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