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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

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第77話 本気で挑め


「ふっ!」


 フルオート可能なライフルを使っているというのに、単発射撃を繰り返しながら相手を制圧していく。

 現在、地下鉄の駅構内。

 狙撃を警戒した為、とにかく下へ下へと逃げ来た訳だが。

 駅構内で派手に発砲を繰り返した事により、そこら辺に居るNPCは完全にパニック。

 逃げ惑う人々の中を、プレイヤー達が襲い掛かって来るが。

 こうも人が多くては、相手もフリーの状況で射撃する様な真似は出来ない為。


「遅い!」


 人混みの中を姿勢を落としながら潜り抜け、大型の銃を使っているのに近接戦。

 ハンドガンよりも貫通力の高い銃弾を使っているので、防弾ベストの上からでも結構なダメージを与えられるのは良いが……やはり、取り回しが悪い。


『夢月、M4のマガジンは残り1だ』


「チッ! かさばる癖にすぐ無くなる!」


『そう言うな、仕方ないだろ』


 弾切れを起こしたライフルで相手を殴りつけ、空いた手でハンドガンを抜いてから連射。

 敵が怯んだところでそのまま頭を撃ち抜き、急いでホルスターに戻してからすぐにライフルのマグチェンジ。

 その間も他のプレイヤーが此方を狙ってくるため、キルした後の相手を支えながら盾の様にしてリロードという、なかなか凄い事になっているが。

 もうっ! 忙しい!

 装填が終わってから、盾にしていたプレイヤーを担ぐような体勢で反撃を開始したが……。


『線路内に降りて、北側に走れ。少し行ったところに連絡用通路がある』


「了解!」


 盾に使っていた相手を他の人押し付ける様にして蹴飛ばしてから、その他に向かって更に発砲。

 とはいえ総弾数が30発しかないので、バカスカ撃っているとすぐに弾切れを起こす。

 ガチンッと音を立てながらホールドオープン……ライフルの場合も、ホールドオープンで良いんだろうか?

 よく分からないけど、弾切れのお知らせが響いた為。


「せいっ!」


 銃のストックを掴んで、近くの敵をフルスイングでぶん殴った。

 振り抜いた勢いのまま身体を回転させ、少し遠い相手には銃そのものを投げつける。


『相っ変わらず……』


「弾が無いなら邪魔なだけ!」


『まぁ、そうなんだけどさ』


 すぐさまハンドガンを抜いてから威嚇射撃を繰り返しつつ、指示通り線路内へと飛び降りた。

 普通だったら駅員さんに怒られるであろう線路の上を走り抜け、なんかそれっぽい所が見えて来たのを確認。

 しかし、やはりプレイヤー達もこっちを追って来ている御様子で、背後から発砲音が響いてくる。


『ショットガンで適当に威嚇、十数秒だけ足止めしてから管理室へ』


「簡単に言ってくれて……」


 銃弾が飛び交っている間の十秒って、結構長いんだけど。

 思わず溜息が零れそうになる指示を貰い、防弾スーツを広げて頭を守りつつショットガンを二連射。

 もはや完全に慣れたと言っても良い動作でリロードしてから、これまた二連射。

 相手が怯んでくれたのを確認してから、完全に連射の体勢へとシフト。

 コレの弾補充をしながらスーツを盾にする行動は一緒に出来ない為、射撃の方に集中してしまう事になるけど。

 撃っている間に腰のベルトからショットシェルを二発抜き取り、撃ち終わった瞬間に装填作業。

 完全に単純作業となり、とにかく撃ちまくって時間を稼いでみると。


『もう良いぞ、扉を開けて連絡通路へ』


 やっと許可が出たので、近くにあった“関係者以外立ち入り禁止”的な扉へと飛び込んだのだが。

 あぁ、なるほど。


「……エグッ」


『まぁ、これがあるから線路には入るなって事だな。リアルじゃ絶対に真似しちゃ駄目だぞ?』


 快速電車かな? 先程の駅に止まる予定が無さそうな速度の列車が、私が扉の向こうに飛び込んだ後すぐに通り過ぎて行った。

 つまり、さっきまで線路の上に残っていたプレイヤー達は……うん、考えない事にしよう。

 そんな訳で、此方はそのまま連絡通路の先へと進んでみると。


『梯子があるだろう? そこを登って地上へ出ろ。近くに公衆電話があるから、そこからログアウトだ。お前達が暴れていた所とはかなり遠いから、今ならまだプレイヤーも張っては無い筈だ』


「了解」


 何やら専門的な機械が並んだお仕事部屋の先に、明らかに緊急時以外は使わないであろう梯子が。

 それを勝手に使わせてもらって、言われた通り地上へと戻ってみると……これまた、関係者以外は絶対入ったら不味そうな場所へと出てしまった。


「NPCも……居ない、かな?」


『交代の時間だな、急いで敷地外に出ろ』


 先程とはまた違った警戒をしながらも、建物から脱出してみれば。

 言われた通り、なんだか人気の無い場所にポツンと公衆電話のボックスが立っていた。

 公衆電話って、現代ではほとんど見た事が無いけど……海外だとまだ結構残ってるのかな?

 ちょっと古い映画なんかだと、こういうのを使っているシーンも見た事がある。

 でもリアルだと本当に見かけないんだよね。

 などと関係ない事を考えつつも、受話器を手に取って耳に当てた。

 こうして、私の方は無事ログアウトを済ませた……瞬間、思いっきり脱力してしまったが。


「お兄ちゃん、エイトの方は?」


『確認中だが……お、アチラさんもログアウトしてるな。むしろお前の方が時間掛かったみたいだぞ? 向こうの方が一枚上手だったな』


「はぁ……やっぱり、賞金首って凄いね。私はまだまだだぁ……」


 思わず溜息を零しつつ、本日のイベントは終了。

 結局バタバタする事になってしまったけど、後でoctopus8にはお礼を伝えておかないと。

 というか、結構……仲良くなれた? 気がするので。

 他の皆みたいに、一緒に遊べるくらいの仲になれれば良いなぁ……。


 ◆


「クソッ! こんな事なら、自滅覚悟ですぐに撃っておけば良かった!」


 VRゴーグルを外してから、ギリッと音がする程に拳を握り締めた。

 あろう事か、“シックスを倒す”という事に集中し過ぎてoctopus8の観察が疎かになった。

 その結果、コレだ。

 彼女の接近を許し、此方は逃げ場が無くなってから事態に気がつくという不甲斐ない状況に陥った。

 しかも……彼女から最後に貰った“オマケ”の影響で、此方のキルログは凄い事に。

 賞金首にやられたというデバフは貰わずに済んだが、あの場に居た数多くのプレイヤーからヘイトを買う結果となってしまった。

 とはいえ、octopus8の戦い方は知れ渡っている。

 恐らく半数以上は事態を予想出来ているらしく、掲示板を見てみれば同情のコメントが寄せられていたが。

 前回のチーム戦ですら、俺達は批判的な声が集まっているのだ。

 だからこそ、これ以上プレイヤー陣からヘイトを買うのは良くない。

 それこそ出っ歯みたいに、周りの影響を考えてログインを控えるみたいな事態になりかねないのだ。

 こうなってしまえば、此方に取れる手段は少ない。

 そいつ等さえ敵に回しながらも戦い続けるか、新キャラを作ってまた1から始めるか。

 こんな事態に、運営側である筈の賞金首が陥れてしまうのはどうなんだ? という気にはなるが、相手だってプレイヤーなのだ。

 つまり、中に人が居るって考えれば全然おかしい事ではない。

 所詮ゲームとはいえ、人間だって動物。

 牙を向ける相手を、常に合理的に選ぶわけではない。

 他のプレイヤー同様、イラッと来ればソイツを狙う、くらいはするだろう。

 そして今回そのターゲットになったのが、俺だったというだけ。

 運が悪かった、としか言いようがないだろう。

 しかしながら、此方はソレでは済まないのだ。

 新キャラを作ったところで、時間が掛かり過ぎる。

 それではいつかいつかと願うばかりで、いつまで経っても白川さんのお兄さんに追いつく事が出来ない。

 シックスなら、この状況をどうする?

 簡単だ、たった一人でも生き残り続けるのだろう。

 あの人なら、絶対やる。

 例え周囲全てが敵に回ったところで、どんな手段を講じても、どれ程周りから恨みを買おうと。

 顔色一つ変えずに、ひたすらに殺し続けるのだろう。

 彼のプレイスタイルは、そこにある。

 全てを犠牲にしても、自分だけは戦場に最後まで立っているという“生存力”。

 そんな人を倒したいと願うのなら、俺だって……この程度で、下を向く訳にはいかないのだ。


「狙撃手は、全体を見なくちゃいけない……ハハッ、マジでその通りだ。シックスだけを見ていても、多分“狩る”事は出来ない。だったら……」


 決めた。

 目標を一つに定めるから駄目なんだ。

 俺は……とにかく、強くならないとシックスには勝てない。

 だったら、何をするべきか。

 ガンサバに居る全員を、敵として見るべきだ。

 彼と戦う為には他のプレイヤー達も、他の賞金首も邪魔だ。

 だからこそ全部観察して、動向を認識しながら“目的の人物(シックス)”を狙う。

 とてもじゃないが、ゲームで遊んでいるっていう気分じゃない。

 もはや本当に生き残りをかけた、人生が掛かっているとでも思わないとやっていられない環境。

 でもきっと、あのゲームの本質としてはコレが正解なのだろう。

 自分も周りも、全員“殺し屋”という世界。

 その業界の中で、特別たる“賞金首”が君臨している世界。

 設定でさえソレは語られていた筈なのに、今回の一件で今更チュートリアルを終えた気分になってしまった。

 なるほど、なるほどね……だからこそ、“ガンサバイブ”オンラインなのか。

 あの会社が、ヌルいゲームなど作るはずがないとは思っていたけど。

 こういう事だったのか。

 これはゲームで、楽しむモノではあるけど。

 “ロールプレイング”という意味になると、途端に生き辛い世界に変わる訳だ。

 のめり込めばのめり込む程、どんどん生存が難しくなる。

 どこまでも個人に求められる能力が多くなる、上に登る為の条件は星の数ほどあるという。

 そういう、高難易度のゲーム。

 その条件に気付かない程度なら、それこそ“遊んでいろ”って事なのだろう。

 だって……さっき戦ったエイトですら、あそこまで“のめり込んでいた”のだから。

 きっとソレが、最低条件という事。


「せめてゲームをしている間は……“本気”で、生き残れって事か」


 きっちりとゲームと現実を切り分ける事。

 これが出来ないと、とてもじゃないけどやっていられない。

 他のプレイヤー……グレーや出っ歯みたいに、状況が良くなるまで様子見、なんてやっていたら絶対に遅れを取る。

 どんなにキツイ状況でも、戦場に立つ勇気がいる世界。

 今回の一件で、間違いなく俺のキャラクターも“ある意味”注目を浴びたと言って良いのだろう。

 上等じゃないか……だったら、戦ってやる。

 せめてガンサバにログインしている間だけは、俺はあのキャラとして。

 特別では無かったとしても、一人のキラーとしてあの世界に挑もう。

 その心構えが、きっちりと収まった瞬間であった。

 俺にとってのガンサバイブオンラインは、今この瞬間から始まったと言えるのだろう。


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