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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

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第64話 接触、86


「はぁぁ……やっぱり、シックスから返事が来ない……駄目かぁ、そりゃ駄目だよね……私なんかと会っても、何も得が無いもんね……」


 暗い部屋の中、ボソボソ呟きながらも。

 何回目になるか分からないメールフォルダの更新ボタンを押してみるが。

 相も変わらず、私の担当サポーターからの連絡は無し。

 つまり、此方が希望した話が全く進んでいないという事。

 はぁぁぁ、駄目かぁ。

 私と“同じ”人を見つけたと思って、物凄くテンションを上げていたのに。

 いやいやいや、私とシックスはこれまで会った事も話した事も無いのだ。

 急に呼び出されても、警戒するのは当然。

 だからこそ、時間が掛かるのは仕方ない。

 そもそも“賞金首同士”で連絡を取り合う事自体、ハードルが高いのだ。

 どうしても運営側を通してコンタクトを取らないとだし、皆で顔を合わせる様な機会も無いし。

 いや、一回あったけど即欠席の知らせを出したのは私だった……。

 思わず溜息を零しつつ、もう一度更新ボタンを押してみると。


「お、おぉ? おぉぉっ!?」


 未読のメールが一件。

 そして、送り主は私の担当さん。

 張り裂けそうな程にドキドキ言っている心臓を押さえながら、メールを開いてみると。


『まだ本人からお返事いただけていませんけど、“octopus8(オクトパス・エイト)”さんがどうなってるのか想像は付くので……どうせ他の事に手が付かないくらい気になって、メールフォルダの更新ボタン連打してますよね? なので一応、情報共有です。まだお返事貰えておりません、これはちゃんと理解して下さい。相手はまだ未成年ですので、向こうの担当はガードが非常に固いです。それから……最初はもう少し相手の事を知ってから、でも遅くないと思いますよ』


 何やら失礼な言葉の羅列と共に、URLが貼られていた。

 そちらに飛んでみれば。


『皆こんばんは~! “ナナ”だよー!? 今日はね、またガンサバやってるんだけど~……同行者から許可取れたので、また“流しっぱなし”配信やるよー! でも絶対退屈させないから、見て見てー!』


 ネットの動画配信の……生放送?

 丁度始まったところなのか、画面に映るキラキラ系女子がブイッとピースを向けていた。

 良いよね、こういう明るい性格。

 うん、見ているだけでも元気になれそう。

 こういう子を見てから鏡に向かい、自分の顔を見ると死にたくなるけど。

 とかなんとか、枯れ切った心で生放送を眺めていると。

 ふと、違和感に気がついた。


「あれ……この子、ナナって子。この声と喋り方……何処かで」


 普段私は動画配信など見ない。

 あまりにも自分とかけ離れた存在が眩し過ぎて、心が痛くなるので。

 キラキラし過ぎて眼球が潰れそうになるというのもある。

 しかし、この子には妙な既視感というか……。


『今日はねぇ~フレンドの子が“極振りステ”を試してみるって言うから、その様子をお送りしようかと思います! ガンサバは基本システムサポート無し! 本人の感覚のみでアバターを操れ! ぶっ壊れ性能にすれば、その分プレイヤーに負担がぁぁ! ってゲームな訳だけど、さてさて~今回の子がステータスの数字ぶっこんだのがぁ~……コレだぁぁ!』


 テンションの高い彼女が、カメラを別方向へと向けてみると。

 そこには……何だ? なんだろう。

 物凄く足の速い小さい子が、爆速で道路を駆け抜けている光景が。

 ……うん? うん、これは、何だ?

 脚力と俊敏さとかの数値だけ爆上げしたのだろうか?

 正直に言って、ガンサバでそんな事をやっても自殺行為。

 あの速度で転んだら、下手したらそのまま自滅だし。

 普通の人間が出せる速度を明らかに超過しているのが分かる。

 しかしながら。


『もっと姿勢を下げろ! 脚を上げる事をいつも以上に意識して……あぁぁっ! 車が来たぞ! 気を付けろシック……シロ!』


 もう一人画面に映った男の人が、彼女に向かって何か叫んでいた。

 彼の言う通り、彼女が走り抜けた先には大型の車が接近中。

 このままではぶつかる、というのと。

 人間の脚力ではどうしたって制御が効かない領域に達しているのだ。

 だからこそ、このままぶつかって終わりだろう。

 むしろあの速度で、何とか“走る”事が出来ているだけでも凄いと思う。

 普通の人だったら、感覚が追い付かなくて足がもつれる。

 なんて、思っていたのだが。


「っ!? 今の!」


 小さい子が、ギリギリ車を避けた。

 ただそれだけだったなら、“運が良かった”で済むのだが。

 絶対に違うのだ。

 普通のプレイヤーだったら、無理だって笑いながら事故死を受け入れるシーンで。

 小さい少女は、“本気”で避けていた。

 それはもう、“やり直し”など効かないかのような必死さで。

 この瞬間、脳細胞が活性化した気がする。

 動画配信主の声、思い出した。

 賞金首の“seven”、そして先程声を上げた男性は“4card”だ。

 だからこそ担当さんは、このURLを私に送って来た?

 いや、違う。

 相手をもっと知れと言って、コレを教えてくれたのだ。

 もともとsevenが配信者だという話は聞いていたが、まさか4cardまで巻き込んでいたとは。

 しかし、問題はソコじゃない。

 此方が興味を持ったのは“6key”。

 あの人を少しでも知る機会として、この配信を教えてくれたのだとしたら。

 そして以前の会議の様子は聞いているし、リモートの会議の時にも賞金首達の声を聞いた。

 6keyの中身は、とても若い女の子。

 更に私の勘違いじゃ無ければ、さっきの“本能的”とも思える回避行動。

 ゲームだからと軽く見ていない証明とも言える、“死”からの全力回避。

 あれって、もしかしたら……。


「こうしちゃいられない……少しでも仲良くなるチャンスだ」


 という事で、爆速でキーボードを叩き。

 担当さんにメールを返してから、私はVRゴーグルを被った。

 いざ行かん、シックスの下へ。

 ログイン中、何故か担当さんから鬼電とメール通知の連続。

 そしてVR機器の方にも通知が来たので、通話を繋いでみると。


『ちょいちょいちょい! 何やってるんですか!? めっちゃ普通に“octopus8”でオープンフィールドにログインしようとしてますよ!? 何かの間違いですよね!?』


「…………用事だけ済ませたら、すぐ、ログアウトしますので」


『運営アカなんですから、不味いですって! もしもキルされちゃったらどうするんですか!? 貴女だけ変な噂が立ったり、賞金首がそこら辺に普通に居るって思われる可能性もあるんですよ!? ていうか、貴女が誰かをキルするだけでも不味いんですからね!? デバフ設定解除してないんですよ!? 分かってます!? 私だけの判断でイジれる項目じゃないんですってばソコ!』


「……本当に、すぐ、戻ります」


『ちょっとぉぉぉぉ!?』


 今はとりあえず、あの子の元へ。

 私の“octopus8”なら、今のシックス……いや、サブキャラでもちゃんと役に立てる事を思い付いてしまったから。

 今の内に、好感度を上げておかなければ。

 まずは……クラフトだ、手土産の準備だ。

 全て音速で終わらせてやる。


 ◆


「ぁ、あ、危なかったぁぁぁ!?」


「シロちゃん、ナイス回避~! 流石にアレは駄目かと思ったよ~」


 ギリギリ車を避けた私の元に、ケラケラ笑うナナさんと、焦った表情の40(フォーティ)が走って来るのが見えた。

 未だに心臓がバクバク言っているのが分かる。

 車と正面衝突する所だったし、避けている時なんか姿勢を落としすぎて、車のバンパーが頬を掠ったのだ。

 怖い! なんだこのステータス!? 怖い!

 40こと4cardにお勧めされるまま、“試し”にステータスをガツンとやってみたのだが。

 サブキャラで数字を振り分けたのは、とにかくスピード。

 速く走る事だけを目的とした、本当に頭の悪いキャラを作ってみたのだ。

 これがまた、速い事速い事。

 身体の感覚を慣らしていかないと、自分で走っているだけなのに……速度に身体の反応が追い付かなくなりそうだった。

 こ、ここだけは得意で良かったぁ……。

 多分コレ、まさに“リアルで出来ない事はVRでもなかなか出来ない”の良い例だと思う。

 思いっ切りオーバースペック、人間の領域じゃない。

 オリンピック選手すら後方に置いて行きそうな速度で、とりあえず“走る”事だけは可能となった46leather(サブキャラ)。

 ちょ、ちょぉっとやり過ぎたかなぁ?

 このまま戦えって言われても、絶対無理な気がするぞぉ?

 あの速度で銃を構えるとか、無理でしょ。

 それこそ、素人がF1に乗った様なモノだ。

 アクセルを踏んで加速する事は出来ても、制御する事が全く出来ない。

 しかも私の“キャラクターに馴染む”っていうのも、まだこの脚力に追い付いていない感じだ。

 多分驚きの方が強くて、それどころじゃないっていうのもあるけど。

 これまで余ってたポイント、ほぼ空になるまで突っ込んだしね……。

 そもそもアレだ、制動力が全く足りていない。

 数回ダッシュしただけで、ブレーキの影響で靴の踵がかなり削れた気がする。

 服に関しては初期装備のままだったとしても、一応履いているのはブーツな訳で。

 そんな物の踵が消える制動力が必要って、何。

 6keyとはまた違った、おかしなステータスのアバターが出来上がってしまった。

 思わず溜息を零しつつ、プルプルする身体をどうにか起こしてみた瞬間。


「…………こんばんは」


「…………え?」


 目の前に、何故かシスターさんが立っていた。

 あれ? うん? はい? 誰?

 銀髪で、なんだかちょっと暗い雰囲気の表情。

 そんな人が、目の前に居た。

 サブキャラで遊んでいただけだからっていうのもあるのかもしれないが、全然近づかれた事に気が付けなかった。

 しかもこの見た目、こんな所に急に聖職者が現れる筈がない。

 つまり、プレイヤーで間違い無――


「……これ、あげます……ので、良かったら。急いで作ったから、ホント……大した物じゃ、なぃけど……本当に、良ければ……」


 それだけ言って、彼女はスッとバッグを取り出し。

 思わず受け取ってみれば、開いた鞄の口から見えるのは……なんか、凄そうなブーツ。

 状況を理解出来ず、完全にその場で固まってしまった私に対して。

 相手は、少しだけ困った様な表情を浮かべてから視線を逸らし。


「それじゃ……返事、待ってるから……」


 何だか早口で呟いた後、近くの公衆電話に駆け込みそのままログアウトしていった。

 いや、うん? え?

 何か良く分からないけど、シスターさんからブーツを頂きました。

 ……どうして?

 思い切り首を傾げてしまった私の元に、今日一緒に遊んでいる二人が駆け付けたかと思えば。


「う、嘘でしょ……? 普通に登場しちゃったけど、良いの?」


 スマホのカメラを構えているナナさんはプルプル。

 そしてもう一方、40の方も。


「何故……急に登場したんだろうな、彼女は」


 妙に驚いた表情を浮かべているのだが。

 もしかして、二人の知り合いなのだろうか?


「あの、えぇと……さっきの人って、いったい……お知り合いとか、そちらのフレンドの方ですか?」


 此方としては、もはや脳内処理が追い付かない事態ではあったけども。

 二人は、しばらく唖然とした表情を彼女が消えた先に向けてから。


「“octopus8”、だ」


「賞金首の一人、だねぇ……えぇと、コレ……配信に乗っけて良かったヤツ?」


 ごめんなさい、ちょっと何言っているのかよく分からないです。


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― 新着の感想 ―
追いついたー。久々にいいものを見させていただきましたー。これからも頑張ってくださいー
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