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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

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第63話 所詮ゲーム、の考え方


「シロ(サブ)の方は、あまりステータスを振っていないのか」


「え、えぇ……まぁ。こっちは最初から他の人が居てくれたので、どうにか“皆の役に立てる”キャラクターにしたいなぁ……とは思っているんですけど。平均的にパラメーターを上げても、途中で詰まっちゃいそうで怖いんですよね」


 戦闘後、40(フォーティ)とステータスの事で話し合っていた。

 返り血で物凄い事になっているムキムキおじさんの隣に、ちっこい私が座っているというもの凄い光景になっているが。

 なんかもう彼のアバターだったら、ロケット砲とか担いだ方が似合う気がする。

 途中で邪魔になったのか、防弾ベストさえ脱ぎ捨てて上半身とかタンクトップ一枚だし。


「ふーむ……そうなってくると、ちょっとオススメし辛いな。何かこう“やりたい”、もしくは“こう出来たら良いな”と思った事は無いか? 簡単に言うと、“欲しい能力”的なモノだな。あぁメインキャラの方みたいな考え方をするな? 比べるのなら、リアルの自分自身だ」


「やりたい事……欲しいと思った能力ですか……」


 そう言われて、思わず悩んでしまった。

 リアルの私なんて、出来なくて当たり前。

 どんなに頑張っても、親には……というかお母さんには「まだまだだ」って言われ続けたし。

 だからこそ、他の人から褒められた時には凄く嬉しかったのだろう。

 実家に居た時は“役割”の様に感じていた料理だって、他の皆は凄く褒めてくれた。

 それが嬉しかったから、いっぱい作ってあげたいと思えた。

 けどそれは、ガンサバとは関係ないしなぁ……なんて、思い切り悩み始めてしまったのだが。


「ハハッ、相変わらず難しく考える癖があるみたいだな。“欲しい”と感じたスキルが無いのであれば……逆に考えるんだ。今までの人生、これが“悔しかった”。これさえあれば、と思った事は無いか?」


 40から続くお言葉を貰い、更に頭を悩ませる。

 6keyを使いながらキルされた事は悔しかったけど……こっちに関しては、46leather(サブキャラ)とは関係ないし。

 メインキャラに比べたら、あまり“のめり込んでいる”という感覚を覚えていないのは確か。

 ホント、自由にやらせてもらってます。

 というか、ちゃんと遊んでるって感じが強い。

 それ以外で考えるのなら、やはり言われた通りリアルの自分なのだろう。

 足りない事ばかりだったから、「私じゃどうせ」って言葉が常に近くにあった気がする。

 妥協ばかり、失敗して当たり前。

 だから初めから、自分自身に期待しない。

 こんな性格だったから……多分“VR”っていうものが凄く楽しかったんだと思う。

 自分じゃない自分になれて、そのゲームの中では私も主人公になれる。

 何でも出来て、格好良くて。

 そんな自分には一生なれないと分かっていても、一時的な幸福感が味わえたから。

 でもいつまで経っても、リアルの私は私のままで。

 結局……何も――


「……ぁ」


「何か、思い付いたか?」


 覗き込んで来た40に対して、ポリポリと頬を掻きながら。


「えと……フォーティならリアルの私を見た事があるので、分かると思うんですけど。私、凄くちっちゃいんですよ。それに、運動も苦手で。どん臭くて、何やっても上手く行かないというか。自分でも何の才能も無いって分かってるし、他の人から見て有利な点とか……一個も無い人間でして」


「ほぉ、なるほど。それで?」


 今は追及も否定もするつもりは無いのか、そのまま話を促して来るムキムキ血みどろタンクトップおじさん。

 見た目は凄い事になっているが、こういう“聞いてくれる”って安心させてくれる所が……やっぱり大人の人って感じがする。


「小学生の頃、運動会で……転んじゃったんですよね。両親も、周りの皆も見ている中で。転ばなくても、ビリになっていたのは分かっていたんですけど……その時、凄く恥ずかしくて。それこそゲームの任務失敗~みたいに、途中で終わらせてくれれば良いのに。校庭に私しかいないのに、最後まで走らなきゃだったんです。皆もうゴールして、私を待っている様な空気になって」


「それはなかなか、子供には辛いな。自分のせいで、なんて思ってしまいそうだ。そういう時は、全部が悪く思えるよな。それこそ皆自分に悪い感情を向けているのではないか、その場の進行そのものを妨げてしまって迷惑を掛けたのではないか。みたいに」


 本当に、彼の言う通りだったのだ。

 凄く、恥ずかしかった。

 私が遅いせいで、皆を待たせている。

 絶対、早くしろよって思われているって。

 運動会だから他の人達の家族だって来ているのに、私が遅いせいで全員に無駄な時間を使わせてしまっている気がして。

 だからこそ、泣きながら必死で走った。

 でも運動音痴で、背も低いから。

 歩幅も小さい私の身体は、どうしたってゴールまで時間が掛かって。

 あの時だけは、本気で泣いた。

 恥ずかしさもあったけど、凄く悔しくて。

 そして、あの時だけは。

 普段喋らないお父さんが、私の頭に手を置いて……「頑張ったな」って、一言。

 そう言ってくれたのだ。

 この一言が、凄く……これまでとは違う意味で、悔しくなった気がする。

 気を使わせているのが分かって。

 いつもだったら黙ったままだったろうに、励ます為だけに声を掛けてくれたと感じて。

 情けない自分自身に、とにかく“悔しい”って思ったのだ。


「その時だけは……もっと、もっともっと足が速かったら……良かったのにって。そう、思いました。あ、あはは、情けない話なんですけどね?」


 なんて言って、笑って誤魔化そうとしてみれば。

 私の肩に、大きな掌がガシッと乗っかって来て。


「それだ! シックス!」


 急に、40が大きな声を上げた。

 ついでに言うと、遠くで配信準備をしていたらしいナナさんから、「コラー! 名前出てんぞー!」と怒られてしまったが。


「だったらシック――じゃない。シロは、誰よりも足が速いプレイヤーになるというのはどうだ? 所謂“極振り”だ、良いじゃないか! それに君だったら極振りキャラでも、“操れる”かもしれないじゃないか」


「え、え? でも、確かに有利になるかもしれないですけど……ガンサバだとやっぱり、攻撃の正確さの方が優先じゃ……一つだけ特化しても、やっぱり他の人にサポートしてもらわないと、戦えないキャラになっちゃう気が……」


「君は、根本的な間違いをしているな。今俺達は、“仕事”をしていない。ただ遊んでいるだけだ。そしてVRの世界というのは、リアルでは出来ない事が出来る世界だ。更に言うのなら……こんなものは、“所詮ゲーム”だ。どうって事は無い」


「……え?」


 彼の言葉に、思わずポカンと間抜けな顔を浮かべてしまったが。

 相手は、ハッハッハと楽しそうに笑ってから。


「所詮ゲーム、なんて言うと聞こえが悪いだろう? しかし俺達は、今“遊んでいる”んだ。娯楽は良い、大人だって子供の様に笑う事が出来る。だったらゲームは、“楽しまなきゃ”嘘だろう。君が悩んでいるのは、どうしたら“他人に迷惑が掛からないか”。しかしそんなもの、この世界じゃ関係ない。それこそ“ロマン”を追う事が許される世界だ」


 え、え、え? と。

 急に語り出した40に反応しきれず、中途半端な動きを見せた私に対し。

 彼は、ニコッと優しく微笑んでから。


「我儘になれ、それが許されるのがゲームだ。この世界で“迷惑を掛ける”というのは、禁止事項に触れたりあえて他者を不快にさせる行為の事だ。だがしかし、君が好きにキャラクターを育てた所で、誰も“迷惑”だなんて思わないんだ。思い付いた事をやってみる、それも結構楽しいものだぞ? やってみないか、シックス。不合理でも、下らないと思っても……“楽しいぞ”?」


 その言葉は、私にとって衝撃的だったと言えよう。

 誰かと行動を共にするなら、相手に迷惑が掛からない様にキャラクターを作らなきゃ。

 皆と一緒にゲームする時は、こういうキャラクターにした方が都合も良いのでは?

 どうにかして、皆から嫌われない動きをしないといけない。

 そんな事ばかり考えながら、サブキャラをやっていた事に今更気がついた。

 そしてそんな事ばかり考えていたからこそ、“どうなりたいのか”が決めきれなかった。


「もっと言うなら、“所詮サブキャラ”だ。こっちで試してみて、気に入ったのならメインでもやってみれば良い。その練習台だと思って、なんでも試してみれば良いじゃないか。出来る事を増やすってのは、なかなか楽しいものだろう? そしたらメインだって、ソレが出来ないのが“悔しい”って思うものだ。何より、こっちで検証すればステータスの振り間違えが発生しないしな?」


 クククッと笑う彼は、どこまでも楽しそうだった。

 お兄ちゃんから教えてもらった、ゲームは楽しむものだって。

 黒沢君が言ってくれた、私がガンサバを楽しんでいる事が嬉しいって。

 そして4cardは、楽しむ為に“我儘”になれって言葉にしてくれたのだ。


「ほ、本当に……良いんでしょうか。だって、変に尖ったキャラを作ったら周りが合わせ辛くなったりとか……」


「なら俺を見ろ、銃のゲームで刃物だけ持って襲い掛かる原始人だぞ? こんなの、迷惑の塊みたいな存在だろう? これを見て、君は“迷惑だ”と感じたか? もう一緒にプレイしたくないと思ったか?」


「いえ、なんというか……唖然とすると同時に、ちょっと面白かったです。こんな事する人居るんだって……」


「なら、何も問題ないだろう? もしも君が誰にも追い付けない速度で駆け抜けた所で、多分皆笑うだけだ。なんか凄い奴が居るぞ! ってな。それは誰にも迷惑を掛けていない、そしてもしかしたら……物凄く速いちびっ子になった君自身も、コレに夢中になるくらい楽しいかもしれないぞ?」


 そう言ってもらった瞬間に、心のどこかで決心がついた気がした。

 だってゲームは、楽しむモノだから。

 VRの世界は、自分には出来ない事を体験する場所だから。

 だったらあの時の悔しさを、ココで払拭しても良いじゃないか。

 良い意味で“所詮ゲーム”、そしてサブキャラだからこそ。

 試しに、本当にお試し程度の感覚で。

 ちょっとくらい、“本気で”遊んじゃっても……良いのかな?


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