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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

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第65話 裏側の苦労


「やっって……くれたわねぇ!? ちょっと! プレイヤーの掲示板も、他のSNSのサイトでも、“街中にも普通に賞金首が登場する様になった”って話題になってるんだけど!?」


『すみませんすみません! こっちからも止めには入ったんですけど、一度決めたら止まらない方でして……で、でも本当に用事だけ済ませたら帰って来てくれましたので――』


「うがぁぁぁ! どうして、どうしてこう……賞金首には問題児が多いのか。いやうん、そっちのせいだけって訳でも無いし、今回はウチのsevenがまたサブキャラで生放送してた影響だもんね……偶然が重なっただけだと思って、普通に対処しましょう」


 結構な時間だというのに、octopus8(オクトパス・エイト)の担当から緊急連絡が飛んで来た。

 もう今日はお酒を飲みながらまったり……だと思っていたのに。

 これですよ、帰って来てからもコレですよ。

 お昼は白川君の妹さんのお弁当で幸せ気分だったのに、夜には現実に引き戻されましたよ。


「一応、“警告”って形で通達はしておいて……あんまり個人的な事をされちゃうと、賞金首の“特別性”が薄れちゃうから。それこそ今度のイベントなんて存在価値無くなるわ」


『はい、本当に……本当ぉぉに、よく言っておきます』


「そもそも、なんでピンポイントであんな場所に現れたかなぁ……私、まだ全容を知らないんだけど……」


 溜息を零しつつ、ポチポチとネットに上がっている動画を見てみても。

 あまり決定的な瞬間が写っておらず、担当からも彼女の目的を聞きだせていない状況の為、物凄く突発的な行動としか思えないのだが。

 SNSを見ていても、遠目にシスターが映っていたり、ピンボケのスクショだったり。

 こういう所だけは、ガンサバイブオンラインでの“撮影”に制限を掛けておいて良かった。

 ゲーム内でもウチのsevenみたいにスマホやカメラを構えないと、そもそも撮影出来ないっていう――

 ちょっと待った。


「……待って待って待って。つまり彼女の配信にだけは、一部始終がしっかり映っちゃったりしてる? 生放送で、octopus8が何をしに来たのか、というか彼女本人だと分かる様な映像が残っちゃってる?」


『えぇと……まぁ、はい』


 ヤッバイ、コレは不味い。

 こういうのは、プレイヤー側からしたらそこまで気にしないというか。

 “別に良いじゃん”って思われがちな部分なのだが。

 “特別なキャラクター”であり、尚且つちゃんと“中身が居る”事。

 コレを売りにして、賞金首達はいわばアイドルに近い存在になっているのだ。

 プレイヤーだからこそ、あり得る事ではあるのだが……この事態を“普通”で終わらせてしまうと、彼等の“特別性”が商業的な意味で薄れてしまう。

 そうなるとどうなるのか、非常に簡単だ。

 一般のプレイヤーからして彼等が、本当の意味で“身近”な存在になってしまえば。

 当人達の個人的な情報を探ろうとする者が現れ、本人達のリアルに被害が出かねない。

 というのと、運営側の話をするのなら。

 人は、身近になってしまった存在にはあまり“お金”を払わなくなるのだ。

 憧れているからこそ、向こうが高みに居るからこそ金銭を払ってでも相手を知ろうとする。

 このゲームの場合では倒そうとするし、立ち向かう為の物資を集める為に課金する訳だ。

 そういう意味でも、憧れの意味でも、今回の“賞金首武装パック”は非常に期待されている。

 これらの影響で運営側は潤い、彼等賞金首にちゃんとした報酬を支払えていると言うもの。

 その根底が崩れた場合……賞金首は、“ただのプレイヤー”に成り代わってしまうのだ。


「くっそ……最悪。どうにかsevenにはアーカイブを残さないでってお願いしてみるけど、これって本来彼女の本業に影響する行為だし。むしろ法的にはすんごく不味い立場になっちゃうのよね……途中で賞金首の扱いを変えた以上、サービス開始時の“お試し”と同意義っていう訳にはいかないし……」


『そ、そこまでいくんですか!?』


「当たり前でしょうが! あの子の配信は、“仕事”なのよ!? しかもサブキャラ使って、“seven”とは関係ない立場を作って、こっちの都合に配慮しながらやってくれてんのに。そこに他の賞金首が写り込んじゃったから動画消して下さいって、彼女の本来稼げる筈のお金を捨てろって言ってんのよ!?」


 不味い不味い不味い、これは本気でヤバイよぉぉ。

 あの子、seven。

 小鳥遊さんは結構軽いというか、緩いテンションで此方に絡んでくれるし。

 それでも仕事は仕事としてしっかりやってくれて、此方としては“仕事の出来る絡みやすい相手”って雰囲気が出来上がっていたのに。

 今回ばかりは、本気で頭を下げる他無い。

 もしもこっちの我儘で関係が壊れた場合、担当の変更とかあるかもだし。

 最悪の場合は……こちらの規約違反で問題となり、彼女が“辞める”可能性だってあるのだから。

 もうヤダ、頭痛くなって来た。

 お酒飲んだのにスパッと酔いは覚めた状態で、ドキドキしながらメッセージを作っていれば。

 こちらのパソコンには、sevenから通話のお知らせが。

 うわぁぁぁ! 相手に先に動かせちゃったぁぁぁ!?

 もはやテンパりながらも、octopus8の担当との通話を一旦終了させてから。


「こ、こんばんは……早乙女です。あの、ですね……今回の件は――」


『あ、出た出た。もしもーし、早乙女さーん? なんか急に“エイト”が出て来たんだけど、コレって運営側としてはアリなのー?』


 いつも通りのテンションの彼女だったが、話題が話題だった為……ゴクリと唾を呑み込んでしまった。


「す、すみません……その件なんですが……」


『なははっ、あちゃ~……やっぱ不味い感じのトラブルだった? 雰囲気からそんな感じだねぇ。リアルタイムでこっちの配信見てた人と、録画してたって人はどうしようも無いとして。アーカイブは残さない様にしておくね~? 一応配信内でも、絶対あれエイトのコスプレイヤーだろー! 的な流れにはしておいたけど。多分少しは話題に乗ると思う、ごめん~!』


 なんか、此方が悩んでいた事を先回りして対処してくれたらしい。

 ついでに言うと、リアルタイムで彼女の配信を見に行ってみると……既に、終了していた。

 普段の彼女なら、もっと深夜までぶっ続けでやりそうなのに。

 つまり、今回の事態を予想して早めに対処してくれた上に。

 更には此方の都合を考慮して、本来の活動を制限してくれたという事。


「ほんっっとうにごめんなさい! 向こうの担当にも、厳しく言っておきますし、octopus8にも私から注意勧告出しておきますので! 今回の件は、本当にご迷惑おかけしましたぁぁ……」


 もはやパソコンの前で、誠心誠意頭を下げている状態。

 まぁカメラがついていないので、相手には見えていないのだが。

 しかしながら、相手はケラケラと笑ってみせて。


『大丈夫っすー! 不味った時の配信とか、アーカイブ残さないのは結構あるし? それに今回の件をフォーとシックスが物凄く心配しててね? 何か不味そうだったら協力するーって言ってくれたし! むしろ棚ぼた!』


 これを言葉のまま受け入れられるくらい若ければ、今回は何とかなったーで済むんだろうけど。

 生憎とこっちは、それなりのキャリアがある訳で。

 そして“配信者”というモノの忙しさや、厳しさと言うものもある程度は理解しているつもりなので。


「本当に……今回は、ご迷惑をお掛けしました。今後はこのような事が無い様に致しますので……」


『もー! 早乙女さん固ーい! そんなんじゃ余計疲れるっしょー!? あ、じゃぁさじゃぁさ。今回のお詫びって事で、オフで出かけましょうよ~。それこそフォーとシックスも誘って! そしたらほら、シックスのお兄さんもOKしてくれるかもしれないし? ね~お願ぁ~い』


「まったくもう……貴女は。でもそういう事なら、前向きに検討しておきますね?」


『よっしゃ! これはマジで棚ぼた!』


 なんて、今回ばかりは完全にsevenに助けられる形になってしまった。

 これは本当に……この子の我儘を叶えてあげないと不味いかな?


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