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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

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55/66

第55話 いつも通りが良いので


「という話を兄から聞いたんですけど、如何でしょう!?」


「あの、えぇと。本当に、お返しとか気にしなくて良いよ? 俺が勝手にシロさんを連れ出して、勝手にご馳走しただけなんだし……」


 学校では喋り掛けるタイミングが分からず、結局帰って来てから。

 それもガンサバにサブキャラでログインしてから、クロさんに本日の事を相談してみた。

 チーム練習の期間も終わったし、今の所は新しいイベント事の気配はなし。

 ごく普通の賞金首のお仕事、違反ギリギリの者を狩るっていうのは、頻繁に発生する訳じゃないみたいだし。

 という事で、そろそろ“46leather(シロレザー)”ログイン出来ます! ってメールしたら、早速一緒にやろうかーって言ってくれたので。

 ボイスチャットを使用しながらも、秘匿回線まで使ってリアルの事を話しているという。

 だったら普通に昼間話しなさいよって内容なのだが、やっぱり周りにも人が居るとどうしても緊張してしまいまして。


「でもあの……やっぱり、そんなのじゃお礼になりませんよね?」


「いやいやいや! 手料理とか、滅茶苦茶嬉しいよ!? むしろお弁当作って貰えるとか、本気で嬉しいよ!?」


 凄くオーバーな反応を見せながら、妙に大袈裟な事を言ってくれるクロさん。

 でも、結局お弁当だしなぁ……。

 お店に連れて行ってもらって、しかも凄いパフェまでご馳走してもらったのに。

 普段通りに料理するだけで良いのかって気にはなって来るけど。

 そっちもそっちで問題なのだが、もう一つ気になる点が。


「ぁ、の……ですね? 昼間ちょっとだけ見た時に思ったんですけど……クロさん、なんか、最近疲れていますか?」


 私の気のせいかなって、何度も思ったんだけども。

 ゲーム内で見ても、いつもより表情があんまり動かないっていうか。

 視線とか、声も普段より……ちょっと違うって言うか。


「あ、あはは……大した事ないんだけどね? ゲームやり過ぎただけだよ、ホントホント。ここ最近結構ガチでガンサバやっててさ、結構集中してるから……って、そうじゃないか。本当に大丈夫だから、元気元気」


 そんな事を言って、クロさんはガッツポーズみたいな行動をしてみせるけど。

 やっぱり、なんか目に力が無い気がする。

 ゲーム内だから、それこそ私の気のせいって可能性もあるのだが。

 けど私だって、ここ最近ガンサバへの向き合い方を変えた。

 その結果、6keyでログインしている間は“本気”でやっていると言って良いだろう。

 これまでが手を抜いていたって訳では無いけど、これまで以上に“常にのめり込んでいる”というのが分かるのだ。

 この状態で、最近は4cardからの訓練を受けている。

 元々設定してもらった時間内を、普段よりずっと本気で。

 だからこそ、ゲームをしているだけとはいえ……凄く、疲れるのだ。

 なので、クロさんの疲労というのも多少は理解出来るというモノで。


「え、と……じゃ、じゃぁ明日! 何か元気になりそうなお弁当作って行きますね! 私の料理なんかじゃ、ご馳走になった分と比べたら全然釣り合わないので……その、食べてみて、感想さえもらえれば! あの、次から好みに合わせて行きますので!」


 結局のところ、私に出来るお礼はこれくらいだろう。

 前のイベントが終わってから、周囲の飲食店とか調べてみたけど……よく分からなかったし。

 そもそも私、クロさんの好きな食べ物とか知らないし。

 という事で、数を撃つ事にしてみた。

 未だにモデルガンも借りっぱなしなので、余計に今の内から彼の好みを調べてお礼の準備をしておかないと。

 これまでお世話になりっぱなしだし、相手を満足させる食事処へと連れて行く為に……それこそ、お兄ちゃんの言っていたお弁当を作るというのは良い機会なのかもしれない。

 なんて考えて、言ってみたのだが。


「あ、あはは……何だが逆に申し訳ないけど。ありがと、シロさん。ホント、ありがとね。すんごい元気出る」


「えと……あの? 大丈夫、ですか?」


 普段ならもっと軽めというか、此方に合わせてくれるような会話をしてくれるクロさん。

 だというのに……なんだか。

 今日は本当に疲れているのか、やっぱりちょっと変だ。

 アタフタしながらも、少しだけ暗い彼に声を掛けてみると。


「ちょっとだけ……弱音吐いていいかな」


「ど、どうぞ! 役立つような言葉は返せないと思いますけど……そ、それこそクロさんが前にしてくれたように、“気晴らし”だって大事だと思うので!」


 慌てて声を上げてみると、彼は微笑みながらも……視線を、手元に落としていった。

 自らの掌をテーブルの上で広げ、そして見つめている。


「絶対勝ちたいって、そう思った人が居てさ。その人、凄く強いんだ。ホント、俺なんかとは次元が違うってくらいに。その為に、上手い人から一から教わってるんだけど……やっぱ、“上には上が居る”って感じが凄くって。付いて行くだけも必死っていうか、全然追い付けないって言うか」


 本当に、弱音。

 此方には要点が伝わらない、答えの無い愚痴みたいなもの。

 珍し過ぎる発言だったから、最初こそ驚いたけど。

 でも、その気持ちは十二分に理解出来る気がした。

 今の黒沢君の雰囲気、間違いなく“本気”なんだ。

 本気だからこそ、全然出来ない自分に腹が立って、悔しいって思い続けて。

 それで、疲れているんだろう。

 世間一般からすれば、“所詮ゲーム”なんて言われてしまうかもしれないけど。

 例え遊びだったとしても、好きな事に本気になるって……凄く、大変なのだ。

 自分の中でも“ゲームだから”と割り切っていれば、心が楽になるけど。

 真剣にソレと向き合った時。

 “ゲーム”だったとしても、自分の気持ちはどこまでも“本物”に変わる。

 チーム戦での敗北を味わって、私は本気の悔しさを学んだ。

 どうして上手く出来ないんだって、なんで私はこんなに下手なんだって思って。

 皆から寄せられた信頼を裏切ってしまった気がして、自分が本気で嫌いになりそうになった。

 けど……逃げないって、心に決めたのだ。

 悔しいからこそ、もう一回。

 次は絶対、勝つために。

 もう二度と、あんな悔しい思いはしたくないから。

 そういう気持ちで挑んだ戦闘は、訓練は。

 とてもとても……“疲れる”のだ。

 ログアウトした瞬間に、ドッと身体に負担が襲い掛かるみたいに。

 きっとクロさんも、私と似たような事をしているんだろうなって、そう感じるくらい……ちゃんと“悩んでいる”人の顔をしている気がして。

 思わず、本人が見つめていた彼の掌をガシッと掴んだ。


「出来ます! クロさんなら! だって凄くガンサバ上手ですし、色んな事をちゃんと見ているじゃないですか! わ、私も色々頑張ろうって、最近練習してるんですけど……なかなか上手くいかなくて。やっぱり、疲れちゃう事も多いんですけど。でもクロさんは、凄いんです! 私からしたら、何でも出来る凄い人なんです! だから、えっと、えぇと……応援、します! なので明日、元気になりそうなお弁当! 作っていきます!」


 相手の掌を掴みながら、声を大にしてみると。

 クロさんは、ポカンとした表情で此方を見つめていた。

 というか、今は秘匿回線というものを使っているので、周囲のプレイヤーには声を聞かれる事は無いけど。

 私達の行動自体は、見えているのだ。

 ついでに言うと、変に目立つ行動をすればNPCですらこっちを見て来る。

 そして今、私達はカフェのテラスに座りながら……急に立ち上がって、相手の掌を握り締めた状態。

 あ、コレは……うん。


「す、すみません! なんか私も感情移入しちゃって! 大変な思いをしているのはクロさんなのに、勝手に分かった気になられても迷惑ですよね!?」


 慌てて手を放してから、必死で相手に頭を下げてみると。

 しばらく固まっていたクロさんが、ちょっとずつ笑い始め。

 その後、記憶にある優しい微笑を見せてくれた。


「ありがとシロさん、元気出た。マァジで全然上手くならなくてさ、俺じゃ駄目かなぁって心折れそうになってたけど……うん。やる、絶対勝つ。俺はその人よりも強いんだって証明してから、認めてもらう。シロさんに応援されたら、それこそやるしかないっしょ」


 そう言って、ニカッと笑いながら拳を握り締めていた。

 良かった、元気が出たみたいだ。

 なので此方も力が抜けて、ふにゃっと情けなく笑った後。


「それじゃ、いっぱい応援する為にも……その、明日のお弁当、頑張りますね。クロさんは、好きな物とかありますか? 今ある食材にはなってしまうので、リクエスト通りにはならないかもしれないですけど……その次は、お好みに合わせてみせます! お礼ですから、出来れば美味しいって言って欲しいので」


 ニコニコしながら座り直してみると、クロさんはボッと顔を赤らめた後。


「こ、これはマジで勝たないとな……“シックス”に」


「はい?」


「いや! うん、何でも無いよ!? シロさんがお弁当作ってくれるとか、凄く楽しみというか、本当に貰っちゃって良いのかって葛藤してるだけ!」


 なんか、良く分からない感じに慌て始めてしまったが。

 此方の聞き間違いじゃ無ければ……今、シックスって言った?

 あぁでも、賞金首のプレイヤーネームを真似する人も多くなって来たって、お兄ちゃんが言っていたし。

 流石に私の事じゃないか、多分。

 だってクロさんが此方を特別視する事なんて無いだろうし。

 戦闘スタイル的にも、討伐ドロップ的にも、狙うなら9Kの方だろう。

 二人共、スナイパーだしね。

 そして何と言っても……前回、私が黒星を上げたのはクロさんのチームの影響なのだ。

 クロさん本人を見た訳では無いし、グレーさんっぽい重装備の人を見ただけ。

 けど、出っ歯さんだけは間違いなく本人だったし。

 恐らく前回のチーム戦、9Kを除く私達を仕留めたのは彼のチーム。

 そうなってくると……こっちだって、次は負けていられない! とは思ったりもするけど。

 私こと6key(シックス)だけが標的になる理由とか、特にないよね?

 やっぱり、私の聞き間違いかな?


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