↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/66

第54話 不穏な影


「おはよ、夢月。朝から悪いな」


「おはよう、お兄ちゃん。今日はちょっと早いんだね?」


 朝起きてから食卓に向かってみれば、そこは朝食を運んでいる妹の姿と共に、幸せな匂いで包まれていた。

 というか、起きた瞬間からこのリラックス空間は影響を及ぼしているのだ。

 薄っすらと意識が覚醒し始めた頃……静かな俺の寝室でも、僅かにトントントンッと包丁がまな板を叩く音が聞こえて来る。

 とても優しい音が少しだけ聞こえて来れば、思わず頬が緩むというモノ。

 リラックス効果が強すぎて、二度寝してしまいそうな程だが……誰が何をしているのかを察すれば頭はちゃんと目覚めるというモノで。

 支度を済ませてから顔を見せれば……どうだろう。

 ウチの可愛い妹が、まるで俺に合わせてくれたかの様に朝食を準備してくれているのだから。

 もしも寝坊しようものなら、食事の準備を済ませた後。

 夢月が登校する時間ギリギリまで寝かせてくれて、優しく起こしてくれるという保証付き。

 断言しよう、俺の妹以上に“出来る嫁”は世界に存在しないと。

 思わずご厚意に甘えてしまう程に、此方の休息と自由時間を優先してくれるのだ。


「もしかして、今日は出勤早い日だった? 起こした方が良かったかな……」


 そんな事を言いながら、カレンダーを確認する妹。

 そういう日は書き込む様にしているので、何も言わなくても妹が合わせてくれるという徹底したサポート体制。

 多分俺が自発的に、しかも早めに起きて来たので疑問に思ってしまったのだろう。


「いや、ここ最近仕事が落ち着いて来たから、ちゃんとした生活リズムが取れてるだけだ。それに、夢月の作ってくれたご飯を冷ましちゃ勿体ないからな」


「もぅ……大袈裟だなぁ、こんなの誰だって作れるよ。もうちょっとで全部出来るから、座って待ってて?」


 なんて言いながら、パタパタとキッチンへ戻って行く妹。

 だがすぐさま戻って来たかと思えば、席に着いた俺の前に珈琲を置いて再びキッチンへ。

 如何でしょう皆様、これがウチの妹です。

 誰に問いかけているのか自分でも分からないけど、とりあえず珈琲を頂いてちゃんと目を覚ましていく。

 というか……朝から、物凄く安らぐ。

 健康って、多分こういう事から始まるんだろうな。

 自主的に早起きして、珈琲でホッと一息ついて。

 これだけでも贅沢なのに、独身男性とは思えないしっかりとした朝食を食べて。

 そんでもって妹が学校に行くまでの間、朝から喋る。

 ここまでしてもらって、健康にならなかったら嘘だろう。

 ガチで一人の時は、こんな生活考えられなかったのだから。

 とにかく必死に仕事して、適当に食い物腹に詰めて、とにかく寝る。

 そういう生活を繰り返している間は、健康診断ではいくつの項目に『再検査』って恐ろしい言葉が並んだ事やら。

 それが今では、オールグリーン。

 俺、今ちゃんと生きてます。


「はい、お待たせしましたぁ~。今日はお兄ちゃんが起きて来るのが早かったから、ちょっと待たせちゃった。ごめんね?」


 とかなんとか、普通そんな事気にしないのよって事を謝る妹は、どうやら朝食の準備を全て終えたらしく。

 此方のご飯やらみそ汁やらを出してから、その後自分の分を準備。

 先に食べてて良いよって言われた事もあるのだが、こればかりは待っていたい。

 これに関しては妹の方も慣れて来たのか、パタパタスリッパを鳴らしながら向かいの席に腰を下ろして。


「「いただきます」」


 二人揃って、手を合わせた。

 今のところ、ではあるのだが。

 俺の仕事も落ち着いて来て、時間もちゃんと取れているし。

 妹の方もガンサバイブオンラインの“賞金首”として、“仕事”を意識し始めたのか。

 かなり時間をキッチリし始めた為、両者共顔色は良い。

 これまでは俺もダラダラ仕事してしまう事もあったし、妹も際限なくVRの世界へと旅立っている事もあったのに。

 今では、この生活が徐々に安定し始めて来ている。

 なんだろう、最高か?

 というか、この環境があったら彼女がどうとか結婚がどうとか……要る?

 いらないでしょ、そういうの。

 だがしかし、仕事場でこんな話をすれば誰だってこう返してくるだろうと予想がつく。

 モテない男の妄言だとか、現実逃避止めろだとか。

 そもそも、そんな妹……現実に居る? 居ないでしょ?

 みたいな。

 ……居るんだなぁそれが、ここに居るんだよなぁ!

 思わず声高らかに宣言してしまいたくなる程に、ウチの妹は凄いぞ。

 ちょっと人見知りで、慣れない人相手だと喋るのが苦手で。

 知らない所に行くと、常に後ろにくっ付いて来たりする気弱なところはあるが。

 それがどうした、ウチの妹は可愛い。

 そして何より、ここまで我が家を癒し空間に変えられる天才なのだ。

 もうね、家に帰りてぇ~ってのが。

 昔は単純に“仕事嫌だ”、だったのに対して。

 今では、帰れば夢月が居るからって理由に変わってるからね。


「うっま……あぁぁ、超幸せ」


 用意してもらった朝食を噛みしめつつ、全力で幸せを味わっていると。

 妹はこれまたちょっとだけ困った様に笑ってから。


「ご満足いただけた様で何よりです。ここで謙遜すると、褒め殺しに会うので妹は黙ります」


「じゃぁ勝手に褒めて良いか?」


「は、恥ずかしいからダメ……だってこれくらい、誰にだって作れるレベルだし……」


「いやいや夢月、何度でも言うがお前の料理はだな――」


「ほらぁ、また始まったぁ……」


 などとやりながら、ここ最近の早朝リラックスタイムを終え。

 二人共通勤と通学の準備を終えた辺りで。


「あ、そうだお兄ちゃん。ちょっと聞きたい事があるんだけど……」


「ん? どうした。勉強の事……ではない気がするから、学校行事か何かか? 授業参観とか、文化祭とかか? 行く、うん行く。無理やりにでも有給取って参加するぞ?」


「チガイマス」


 若干妹から乾いた瞳を向けられてしまったが、そういうのをちゃんと聞き出さないと夢月は言わないからな。

 だからこそグイグイ行ってみたのだが、どうやら今回は本当に違った様で。

 相手はコホンッと咳払いしてから。


「男の人って、何かご馳走しますよーって場合はどんなものが嬉しいのかな? ホラ、勝手に用意して好みが違っても……なんか、申し訳ないし」


 おや? なんか珍しい事を言い始めたな。

 やけに遠回しな言い方な気がするが……まさか。


「む、夢月……おま、お前……まさか……彼氏、とか……」


「チガイマス」


 再び呆れた瞳を向けられたところで、ホッと胸を撫で下ろした。

 そうか、違ったか。

 妹も年頃だからな、そういうのにだって興味はあるだろう。

 しかしもしも急に変な男を連れて来て、この人と付き合ってます! なんて言われてみろ。

 俺、心臓発作を起こすかもしれない。

 いや、その場で死んでは夢月の今後が分からなくなってしまうので、先に相手を殺すべきか。

 とにかく、安心して任せられる相手じゃないと……妹は嫁に出さん。

 とはいえ今はそっちではなく。


「ご馳走、ご馳走ねぇ……」


 ボヤキながらも、カレンダーにチラッと視線を向けてみると。

 おっとぉ~? なんか、夢月の考えている事が分かって来た気がするぞ?

 今月末、自分でも忘れていたが俺の誕生日が来るではないか。

 男の人がどうとかなんて言っていたが、当日どんなご馳走を作ってくれるか考えているな?

 なんて良く出来た妹だろう、こんな存在現実には夢月しか居ないって胸を張って言える。


「そうだなぁ~やっぱ、疲れてる時はガツンって来る様な濃い味のモノとか食べたくなるし」


「濃い味……となると、やっぱりお肉?」


「そうだなぁ。でも夢月から貰えるとなると、大袈裟な物より家庭的な方がホッとするというか。値段とか気にしなくて、本当にいつも通りで良いし。でも男にとっちゃ、手料理を作って貰えたってだけで特別だからなぁ~。あんまり難しく考えずに、特別だからいっぱい作りました! ドーン! だけでも超嬉しいと思うぞ?」


 などと偉そうにアドバイスしながら、その光景を想像してしまった。

 妹は物凄く節約家というか、無駄遣いを嫌う思考があるからな。

 こう言っておけば、それはもう山盛りの唐揚げとか、そういう家庭料理で祝ってくれるのだろう。

 俺としてはそれで満足だし、むしろソレが良いし。

 この歳になってまで、ちゃんと誕生日祝ってもらえるとか、そもそも贅沢だし。

 などと、ニヤニヤしていると。


「そう、なんだ……? う~ん、だとしたら……どうしよ。ここにご招待するのは、流石に違うだろうし。お弁当、とかかな……」


「ん? 夢月、待って。待って待って、どういう事かな?」


 ふむ、とばかりに唇に指を当てながら首を傾げた妹。

 ちょい、ちょい待て。

 これガチで他の男にご馳走するって話か?

 でも彼氏ではないって言ってたけど……ハッ! もしかして、“まだ付き合ってない”って事か!?


「そそそそそ、その人とは……ど、どういう関係なの、かなぁ……?」


 思い切り頬をピクピクさせながら質問を投げかけてみると。

 妹はキョトンとしながらも。


「お、お友達……で、良いと思う。エヘヘ、今回は私の勘違いじゃない自信があります。色々相談に乗って貰って、前にご馳走してもらった事があったから。今度は私が何か~って思って」


 そんな事を言いながら、妹は嬉しそうにフンスッと拳を握り締めてみせるではないか。

 ちょっと待った、それお兄ちゃん聞いてない。

 ウチの妹を誑かしたのは、というか食事を共にしたのは、いったいどこのどいつだ。

 ろくな男じゃない場合は……俺がキルしなくては。

 あぁでも、学校で一緒にお弁当食べるって事は、女の子か?

 ならまぁ……良しとするか。

 妹も、嬉しそうだし。

 いやでも、男の人は~みたいな聞き方だったよな?

 おやおやおや? これは暗殺計画を立てないと不味いか?

 などと、行き過ぎた思考回路に陥ると……また、シスコンキモイって周りから言われるのだろうが。

 そしてあまりやり過ぎて、妹本人から言われたら自害するレベル。

 だが……だがなぁ!?

 お兄ちゃん、ちょっと気になって仕事にならないかもしれないぞ!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。