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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

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第56話 お弁当と心配事


「ねぇお兄ちゃん、私は賞金首の“普通のお仕事”とか、あんまりやって無いけど……良いの? 他の人に任せっきり、とかになってない?」


「ん? あぁそっちは数が多い訳では無いしな。ルール違反ギリギリってラインは、どうしたって運営側も判断に迷う事だって多い。そもそも“賞金首”の強さが証明され過ぎてて、今ではもっぱら“追っかけ”の方が多いくらいだな。だからプレイヤー同士でも、怪しいヤツは周囲からチェックされるんだ。仕事も予定が合う賞金首に、均等になる様に振り分けられてるぞ?」


 なんか、お兄ちゃんが物凄い事を言っているけども。

 賞金首の存在は、やはり思った以上に抑止力として効果を発揮しているらしい。

 私が“そういうお仕事”をしたのって、最初の一回……クラン襲撃以外は、凄く地味に終わらせたのが数える程度だし。

 今では本当に、イベントキャラクターみたいな扱いって事で良いのかな。

 とかなんとか話しつつも、二人揃って明日のお弁当の準備をしているという。

 今日は帰りが早かったので、兄のご飯を済ませてからサクッと下準備しておこーみたいな感じで始めたのだが。

 何でか、お手伝いしてもらっている。

 家に帰って来てからくらい、休んでいて良いのに。


「あぁ~そういう話のついでって事で、今話しちゃうが。前に言ってた9Kとの顔合わせ、返事はまた落ち着いてからで良いって話貰ったからな?」


「うっ!? も、もしかして待たせ過ぎて怒らせちゃった……?」


 チーム戦の事と、未だに続いている4cardからの訓練。

 そちらばかりに気を回していたら、普通に忘れていた。

 むしろサブキャラでログインしている暇があるなら、そっちに気を使いなさいよって言われてしまいそうな気がして来たのだが……。


「いいや、相手も結構好意的に受け取ってくれてるよ。今のシックスは忙しそうだから、こっちの用事は後で構わないって向こうから言い出してくれたくらいだ」


「そ、そうなんだ。な、なんか申し訳ないな……それにナインだったら、前も同じチームだったし。どうにか少しくらいはお喋り出来そうではあるんだけど……」


「個人で会おうとするのは、絶対無しな? 何度でも言うが、お前は女の子なんだ。運営側も個人的な付き合いにまで口を出すつもりは無いけど、それがトラブルに発展する可能性があるのは流石に見過ごせない」


 トラブル、トラブルかぁ……これまでの9Kの雰囲気からするに、その手の話は出なそうだけど。

 なんかもう、頼りになるお兄さんってイメージしかない。

 というか兄が警戒している様な“オフでのトラブル”って言うのが、未だにフワッとした想像しか出来ないんだが。

 でもまぁ、ネットは怖いって話はよく聞くし。

 私の性格じゃ、とてもでは無いけど一対一で会おうとは思えないけど。

 絶対喋れなくなるし、ずっと思考真っ白になる自信がある。


「前の会議みたいな感じじゃ無ければ、そもそも私にはハードル高いかな……アレでも充分難題だったけど。あぁでも、セブンからまた一緒にサブやろうって誘いは来てた。あとフォーとファイブからも、時間出来たら一緒にって。そっちは良いよね?」


「あぁ、ゲーム内ならいくらでもやって良いぞ? しかし、あの夢月が……ちゃんとチーム組んで、全員と仲良くなれたんだもんな。偉いぞぉ、お前は凄く成長した」


「改めて言葉にされると……恥ずかしいね」


 とか何とか、鶏肉を調味料に漬けながらモミモミしていた兄がしみじみとそんな事を言っているが。

 私自身、コレに関してはびっくりしているのだ。

 ちゃんとチームやれたし、皆とも普通に喋れる様になった。

 今でも気を使ってもらっている感じはするし、会話も相手が主体になってくれるのでどうにかなっているっていうのはあるけど。

 けど、ちゃんと仲良くなれたと思う。

 そんな訳で、ニヤニヤしつつお弁当の下準備を進めていたのだが。


「あ~えぇと、それから、な? もう一個、ちょっとまた意外な所から話が来てて……な?」


「え?」


 この雰囲気、前にもあった。

 そう、9Kが顔合わせの提案をして来た時みたいな。

 もしかして、また別の方向からそういう話が?

 いやでも、残る賞金首とは本当に接点とか無いし。

 初回の会議に参加した人達の中で、私の事を覚えていて……とかなら、分かるんだけど。

 興味を持たれる様な事、無かったと思うんだけどなぁ。

 などと、しばらく固まってしまっていると。


「夢月……“octopus8(オクトパス・エイト)”と、どっかで繋がりが出来る様な事あったか?」


「オクトパ……え? ん? そんな人、賞金首に居たっけ……あぁ! もしかして、前回のイベントの時に名前変えたって事?」


 チーム戦が始まる前、555の提案で「皆名前に数字入れようぜ~」、「いいよ~」みたいになったアレ。

 あの時にほぼ全員が、ガラッとプレイヤーネームを変更してしまったので、正直まだ覚えきれていないのだ。

 それこそ、本当にナンバーズみたいな。

 1から10までの名前を付けて、今では正式に名乗っている状態みたいだけど。

 その内の、8番目。

 そして前回では別チームだった為、そちらの情報は一切なし。

 調べようと思えば、賞金首同士である以上結構な情報は入って来るのだろうが。

 なんか裏からコソコソ個人情報見るみたいで、気が引けてしまい。

 知らない人は知らない人のまま、というのが現状なのである。


「そうそう、その人も皆と一緒にネーム変更した一人。ちなみに女の人だから、安心して良いぞ」


「あっ、それなら声は聞いた事あるかも。リモート会議の時に、凄く落ち着いた声の人が……」


「そっちはまた別人かな。ネーム変更前は“silent(サイレント)”って名乗っててな、その名の通り本当に喋らない人なんだってさ。担当サポーターとですらメールだけで済ませる事が多い勢いで、普段の会議とかはマイクミュートを徹底しているみたいだ。なんだけど……その人がお前を名指しで、会って話したいって連絡が入ってな。あ、オンラインで良いみたいだぞ?」


 え、なんだソレ。

 賞金首の担当サポーターとすらほとんど話さない人が、何故私に興味を持つのか。

 全然意味が分からないんですけど。

 私……何かした?


「ちなみに、内容は……」


「とにかく“話がしたい”だとさ、詳しくはまだ。向こうの担当も、これまで彼女からそんな事を言われた事が無かったらしく、かなり戸惑ってた。だから他の賞金首と会う時同様、専用フィールドに入るって感じにはなるんだけど……どうする?」


 ど、どうしましょう。

 相手は喋らない人だって言うし、私だってちゃんと喋れる自信など一切無い。

 それこそその場がサイレントになってしまいそうですけど、私は……どうしたら良いのですか。


「か、考えておきマス……あと、他の賞金首の皆にも、会った事ないかって聞いてみる……」


「ん、まぁそうだよな。いきなり話したいって言われても、謎が多いし。ただこっち側としては、“無理にでも”とは絶対言わないから。お前が嫌なら断わっちゃって良いからな?」


 という事で、これまた新しい方と関わる機会が設けられてしまうのであった。

 どうしてこう、ガンサバは次々と“お友達を増やしましょう!”みたいなイベントが発生するのだろうか。

 とはいえ、そのお陰で色んな人と仲良くなれたのは、物凄く嬉しいんだけど。

 しかしながら……やっぱり、初対面の人に会うっていうのは非常に心臓に悪い訳で。

 などとやりつつも、手だけは止めずに料理を続けていると。


「しっかし、これまで申し訳ないからって断ってたけど……やっぱ、夢月が作り始めると“弁当作ってる”って感じが全然しないよな。すっげぇ豪華になるんじゃないか? コレ。明日が楽しみだよ、マジで」


「えと、変……だった? とりあえず、お兄ちゃんの好きそうな物を詰め合わせちゃったけど」


「全然良い、むしろコレが良い」


 だそうで、まだ下準備段階だけどお弁当の方は問題無いらしい。

 黒沢君の好みは未だに分からないので、全員分一緒に作っちゃえって事で、お兄ちゃんの好みに合わせてしまったのだが。


「あ、そうだ。早乙女さんの分も作った方が良い? というか、作ったら食べてくれるかな?」


「へ? 何で早乙女さん?」


「いや、だってお世話になってるし……私に出来るお礼ってこれくらいだし。健康診断、デッドラインなんて話を聞いたら……まぁ」


 一応sevenの担当サポーターって事にはなっているが、あの人は私達の統括まで勤めているのだ。

 打ち合わせとかでは凄く格好良い感じだけど、度々メールを送ってくれるし。


『何か不安な事がありましたら、此方にご連絡頂いても構いませんので、どうぞお気軽にお声掛けください。お疲れでしょうから、返信は不要ですよ』


 みたいな、ちょっと固い文章ではあるんだけど。

 なんだか気を使っていただいている様で、遅い時間に6keyでちょこっとログインしたりすると、心配している様なメッセージを飛ばしてくれるのだ。

 単純に、高校生がこんな時間まで遊んでるなって怒られているだけかもしれないけど。

 度々そんな事があった為、凄くお世話になってますって印象しかないんです。

 というか、その時間まで会社に居るんだ……とか思ってしまうと、やはり心配にもなる訳で。


「う、う~ん。他人様から急に弁当渡されたら、アレかもしれないけど。とはいえ向こうも、俺の妹って事は知ってるしな。というか早乙女さんも、賞金首の中で一番若い夢月を心配してる感じもあるから。まぁ、渡したら喜ぶ……かな?」


「えと、それじゃ……作っても、良い?」


「俺が渡すってのはちょっとハードルが高いけど……何とかする! 夢月の手料理を自慢する良い機会だからな!」


 自慢はしなくて良いです、本当に普通なので。

 という事で計四人分に足りるくらいに、お弁当の下準備をしていくのであった。

 お弁当箱さえあれば、料理の手間自体は殆ど変わらないので。


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