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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
1章

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第25話 他のサバイバー


 “6key(シックスキー)”……通称“シックス”というプレイヤーは、動画が晒された事によりガンサバの中でも人気の賞金首となった。

 海外映画の主人公の様な見た目、戦闘スタイルなんて“まさに”と言える程だ。

 簡単には“当たらない”ゲームだからこそ、他のゲームと比べても対戦距離が近くなるのがガンサバ。

 これを嫌という程経験しても、銃ってのはどこまでも“遠距離武器”なのだ。

 ハンドガンよりも長物。

 両手でしっかり支えられるしストックもあるから、その分当たりやすい上に火力も出る。

 周囲に武器を見せびらかして良いゲームではないので、これを周囲から隠しながら運用する。

 そして一発必中が難しいからこそ、皆連射出来る様な武器を選ぶ傾向になるのは必然。

 更にはアバターだ。

 自分の身体とあまりにもかけ離れた身体能力を付与しようと、どうしたって扱い切れないのだ。

 人間の脳みそってのは、そこまでお利口ではない。

 他のゲームなら大幅なシステムサポートがあったりするのだが、ガンサバははっきり言って少なすぎる。

 それらを制御するのは、ほとんどプレイヤー自身の感覚能力。

 高い身体能力に振り回されれば、当然普段通りの事すら出来なくなるし、その環境では射撃なんぞより一層当たらなくなるというもの。

 だというのに……。


「一対一は無理だ! 囲め囲め!」


「このスペースで無茶言うな! さっきから誤射でどんだけ死んでると思ってんだよ!」


「ちょっ、マジかぃ! こっち来んな――」


 PVにさえ登場する様になった、件の賞金首は。

 それはもう大立ち回りも良いところ。

 狭い室内と、軽装というメリットを最大限に生かす様な戦い方。

 溢れかえるような人数で攻め込んでいるというのに、自らの有利になる地点で絶対に数を減らして来る。

 一瞬でも見失ったかと思えば、急に物陰から弾が飛んで来たり。

 飛び掛かって来たかと思った次の瞬間には、此方の武器を奪われたり。

 ハッキリ言って、身体能力と判断力が異常。

 でも“チート”かって言われると、絶対違うと断言出来るのだ。

 どこまでも“普通”で、どこまでも“異常”。

 ごく普通の動きをしている筈なのに、プレイヤーは本当にあっさりと狩られていく。

 ゲームでやっている素人の中に、本物の兵士が混じって戦っている様な印象。

 それくらいに、経験の差で負けているのだとハッキリ分かる。

 という事はつまり、アイツは普段からあの身体能力を持っている上、状況判断能力に長けているという訳だ。

 常に全体を把握する様に動き、自らの逃げ道を確保しながら戦う。

 一対多の状況でも確実に相手を減らし、これによって慌てているのは絶対にプレイヤー側だけ。

 向こうは表情をピクリとも動かさず、淡々と現場を片付ける“プロ”。

 相手の武器を奪ってから乱射して牽制、弾切れかと思ったタイミングで飛び出したプレイヤーに対して、銃そのものを投げつけて来るなんて真似までして来る。

 敵から奪った武器だから扱いが雑、と言われればそうなのだが。

 普通のゲーマーなら手に持っている武器を手放す事に、少なからず抵抗を覚える筈なのに。

 通称“シックス”と呼ばれる賞金首は、それを一切の躊躇もなくやってのける。

 飛んで来た銃火器その物が誰かの顔面にヒットし、周囲のプレイヤーが驚いたりなんかすれば、もはや相手の思うツボ。

 視線を向こうから逸らした瞬間に、またハンドガンを抜いて至近距離から確実に仕留めて来るのだ。

 ちゃんと相手をキルしたかどうかなど、一切確認しない。

 ここを撃てば人間は死ぬんだと、感覚で理解している様な動きを繰り返していくだけ。

 動画で見ただけじゃ分からなかったが……これはヤバイ。

 コイツとの戦闘は、マジでゾクゾクするくらいにヤバイ。

 これが本来のガンサバイブオンラインだと教えられたかのような、まさに“主人公”を見ている気分になって来る。


「逃がすな! 追え追え追え!」


 部屋に突入した三人を片付けたところで、シックスが窓ガラスを破ってまた外に逃亡したのが見えた。

 これに対してプレイヤー側が慌てて追跡を試みるが……ここでも、俺等が素人ってのがハッキリと証明されてしまうのだ。

 チームを組んでいる訳では無いので、ある程度は仕方ないのだが。

 アパートの室内へと雪崩れ込もうとして、プレイヤー同士で詰まってしまった。

 今は誰も彼もが、シックスを狩ろうと必死。

 まさに寄せ集めの集団。

 だからこそ、ゲームとしてはどこもおかしくない事。

 なのだが。


「っ!? マジかよ!」


 窓ガラスから飛び出した筈のシックスが、入口に詰まったプレイヤーに対して連続で発砲して来た。

 これによってまた二名キル。

 牽制目的で、それこそ適当に撃っただけにも見えるのだが。

 相手の目的は完全に達成されたのが、俺等の行動で判明した。

 どいつもこいつも二人やられた事にビビリ、慌てて入口から後退して様子を伺ってしまったのだ。

 射線に入らない様に注意しながら、チラッと室内を覗き込んでみると……割れた窓ガラスの向こうに、シックスが走り去っていく背中が見える。


「ちっくしょ! 逃げたぞ! 追え!」


 一人が声を上げると、皆バタバタと走り出して後を追おうとするが。

 だぁ、クソッ!

 またプレイヤー同士が邪魔をしてしまって、その隙に相手は外にあったバイクに跨ってしまったではないか。

 このままじゃ確実に見失う、それだけは不味い! と、思っていたのだが……。


「チィッ!」


 何やら舌打ちが聞えて来て、シックスはバイクを倒しながら再び走り出したではないか。

 う、うん? 何だ今の行動。

 妙に“らしくない”ロスだった気がするんだけど……。

 などとやっている内にも、窓の外に向けて乱射し始めるプレイヤー達。

 だが相手の方が早かった。

 裏路地の曲がり角を抜けて、もはや完全にヒットを狙えない所まで走り去ってしまったのだ。

 これに対し、誰もが色々な声を上げながら追跡を開始するが――


「まさか今回……賞金首は“乗り物”を制限されてんのか……?」


 だとすると、今回の“キツネ狩り”……いけるかもしれねぇな。

 俺達なら、いくらでも“先回り”が可能って事になるのだから。

 相手の目的地さえ絞り出せれば……の、話だが。


 ◆


「お兄ちゃん、バイクっ!」


『待て待て待て! 夢月、本気で待て!』


 兄の制止を聞かず、路上に止めてあったバイクに飛び乗った。

 映画で見た事がある、こういう時の逃走劇には大体バイクが有効なのだ。

 なんて、思ったのだが。


「……バイクって、どうやって動かすの?」


『馬鹿ぁぁぁ! 降りろ! 走れ!』


「でも普通に走るだけじゃ、あの人数から逃げられないから!」


 なんとか声を抑えながら、兄と会話しているのだが。

 よく分からないままバイクを弄り回しても、うんともすんとも言わない。

 映画だと何かすぐブロンッ! って言うじゃん! 格好良く走りだすじゃん!


『普通そこら辺に止めた車両に、鍵を残したままどっか行く人はいません……』


「そ、それもそうか……」


『あと、このゲーム結構キッチリ作ってあるから……エンジン掛かっても、多分お前じゃエンストして終わりだ』


「チィッ!」


 思いっ切り舌打ちを零してから、慌ててバイクを下りてみれば。

 ヤバイ、バイク倒した! 持ち主の人ゴメン!

 などとやっている内にまた後ろから発砲音が聞えて来て。

 慌てて防弾スーツを引っ張り、どうにか頭を守りながら中腰で駆け抜ける。

 もぉぉぉ! さっきからバタバタしっぱなしだし、最後滅茶苦茶格好悪い姿晒したし!

 もしも今回も撮影とかされていた場合、6keyは運転出来ない子って言われて馬鹿にされるんだ!

 きっとネットで酷い事言われながら、動画とか晒されてSNSで玩具にされちゃうんだ!

 なんかもう泣きたくなりながら、どうにか表通りまで飛び出してみれば……おかしいな、もはや戦争みたいな光景が広がっているんだけど。

 一瞬だけポカンとしてしまったが、どうやら私が狙われている訳では無いらしい。

 なので、人目を避けながらどうにか移動を続けていくと。


「アハハハッ! ホラホラ、こっちは一人だよぉ!?」


 何やら、スーツの女の人がド派手に暴れているのが見えた。

 チラッと見えただけだけど、凄く動きが綺麗だった。

 まるで地面を滑る様に移動しながら物陰へ次々と移って行き、姿を晒した瞬間には必ず発砲。

 手に持っている不思議な形のマシンガンを乱射しながらも、周囲のプレイヤーを相手取っているではないか。

 そして、頭の上に見えたその名前は。


「“seven(セブン)”……」


 かなりスラッとした、格好良い感じのスーツの女性だったのだが……うそ、あの派手な女の人?

 ゲームキャラよりリアルの方が派手な人って、実在するんだぁ……なんて感想を残しつつも、此方は静かに移動。

 事前に言われていたけど、賞金首の居場所が被るのは良くないみたいだし。

 だからこそ、可能な限り急いでその場を離れようとしたのだが。


「なっ!? シックス――」


 本当に偶然なんだろうけど。

 隠れながら移動しようとしている私の前に、一人のプレイヤーが飛び出して来た。

 お互い驚いた様な反応を示してしまい、両者共すぐさま銃を構えたが。

 不味い、私の方も反応が遅れた。

 これは両者共ダメージ覚悟で撃ち合うしか――。


「んがっ!」


 何故か、相手が目の前で急に倒れた。

 はて? と首を傾げてしまったが……兄に『走れ!』と言われ慌てて再び逃亡。

 え、何、今の。

 他の誰かにキルされた? もしくは流れ弾?

 ひたすらに疑問を浮かべながらも、どうにか“seven”と距離を置くと。


『夢月、“9K”からのメッセージだ。“貸し一つ”、だとさ』


「9K……ナイン・ケー……え? え、ぇ……あぁっ! 賞金首の人! 会議には居なかった人!」


『だな。前回のイベントの勝利者、最後の一人。ガチのスナイパーだよ。後でお礼言っておかないとな』


 うひぃ……このゲームでスナイパーやるとか、本物の射撃手だよ。

 私なんか、未だに上手く当たらないから近接戦に持ち込んでるのに。

 超長距離からとか、絶対当たる気がしない。

 なんて思ったりもするけど……“9K”さんかぁ。

 どんな人なんだろう、顔合わせには参加していなかったので、挨拶はしていないんだよね。

 それなのに、助けてもらっちゃった。

 これは本当に、後でちゃんとお礼を言っておかないと。

 ちょっと私のキャラ、6keyと名前が近い気がしてどんな読み方なんだろうって気になっていたのだ。

 そのままナイン・ケーなのか、それとも9K(クッキー)……とか? 流石に違うか。

 私の名付けセンス、周りの反応を見る限りちょっと変みたいなので。

 などと違う事を考えつつも、sevenが暴れている事でヘイトが分散し。

 私はわりと安全に、別の場所へと移動出来たのであった。

 た、助かったぁぁ……。

 あとはこれで、近くに弾薬補給のポイントでもあれば良いんだけど。


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