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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
1章

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第17話 男性陣の悩み


『という事で、進めちゃって良いかな? 白川くーん? おーい、聞いてるー?』


 自宅のPCから色々と声が聞こえてくるが、視線は夢月のログイン状態をチェックしてしまっていた。

 本日、妹の友達? という男子生徒と話して来た。

 結果から言うと、とても良い子だと言えるだろう。

 しかしながら……。


「あぁぁぁっ! 俺も新規でアカウント作って一緒にやろうかなぁぁぁ!? ゲームに時間使っちゃおうかなぁ!?」


『駄目に決まっているだろうが、開発陣。おいコラ白川、お前また妹の件で暴走してるな? この忙しい時に半休取りやがって。いや夜に時間取って貰ってるだけでも、すんごく申し訳ないんだけどね? ただ普通にゲームで時間食いつぶすのは止めて? ね? 私達結構~忙しい状況にあるから、落ち着いて?』


 モニターには、思いっきり呆れ顔の美人上司が映っていた。

 でも今はそれどころじゃないんだ。

 あまりにも熱くガンサバイブオンラインを語ってくれた黒沢君と、妹の協力プレイを許可してしまったのだ。

 確かに良い子っぽかった、今時見ない純粋な感じの。

 けど相手は思春期男子。

 更に言うなら、妹はこれまでろくにネットの世界に触れて来なかった上に、学校では友人も少ないと来た。

 俺の所に来てから、初めて自由にオンラインに触れたと言っても過言ではない。

 箱入り娘なんて言葉があるが、まさにその状態だったのだ。

 当然そんな子に、「ネットや男は危険だ」と言ったところで全く理解などしていないだろう。

 うおぉぉぉ!? 早くも心配になって来たが!?


「妹が新キャラ作って普通にプレイするらしいんで、俺のサポートアカウント使って良いですか!?」


『駄目に決まっているだろうが馬鹿者。お前のアカウントは、あくまでも“6key”のサポート用。賞金首の為に用意された運営アカなのよ、それやったら本気で不味いのよ』


 ですよね。

 分かってます、分かってますとも。

 けどさぁぁぁ!


『先日からずぅっとブツブツブツブツ言っていた件でしょう? 良いじゃないネトゲくらい、急に男の部屋に呼ばれた訳じゃあるまいし。妹さんだって若いとはいえ知識のある年齢なんだから。心配し過ぎ』


「ネットで仲良くなってそのまま――なんてパターンは腐る程あるじゃないですか! 純愛なら許可しますよ!? でも変な奴に掴まったらどうするんですか!」


『シスコン、おいシスコン。結構本気で気持ち悪いぞ、あと妹からも本気で嫌がられるよ? その辺にしておきなって』


「ぐっ!? た、確かに……ログイン状況監視するとか……キモイっすよね……」


 という事で、夢月に渡してあるVR機器のモニタリング情報の表示をオフにした。

 仕事ならまだしも、現在はオフ。

 そんな所まで監視されたら、夢月だって息苦しいだろう。

 あと、単純にキモイって思われそう。

 アイツからそんな風に思われたら、俺死ぬかもしれない。

 今現在でさえ、俺の食生活と日常生活はアイツが居るからまともに過ごせているというのに。

 誰かにご飯作って貰えるとか、俺みたいなのからすれば贅沢なんですよ。

 滅茶苦茶帰りが遅くなった時でさえ、ちゃんと作り置きしてあるとか、当初感動のあまり泣いちゃったからね。


『と に か く、妹さんからは許可取れたんだよね? これまでの戦闘映像使って、PVとか公開しちゃって良いんだよね?』


「そっちはまぁ……大丈夫です。本人もOK出しましたし」


『はいはーい、それじゃ早速依頼出しちゃうからね? それから、もう一個の方は?』


「……え、何でしたっけ?」


 あれ? 他になんか聞いておく事あったっけ?

 などと、思い切りポカンとした表情を浮かべてみると。

 モニターの向こうに居る彼女は、思い切りため息を零してから。


『私が担当してる“賞金首”と、もう一名。それこそ前回のイベントで、ちゃんと“勝利”を収めたプレイヤー。その二人が妹さんと顔合わせしたいって言ってるって、だからこの際“そういう席”をって……もう、この話何回目?』


「……あ」


『ぶわぁぁか! また忘れてたでしょ! 早く返事頂戴よ! こっちはプレイヤー本人から早く早くって急かされてるんだから!』


「す、すみません……内容は話した気がするんですけど……まだ、返事貰ってないです」


 完全に忘れていた。

 以前夢月が参加した、“賞金首襲来”のイベント。

 あの勝利者である……俺が直接見たのは、妹を含めた三名。

 当時確認したのはそこまでだったが、その後もう一名増えた。

 戦闘中の表示だったプレイヤーも、無事勝利を収めたと聞いている。

 この人に関しては、他と繋がりを持とうとはしていないみたいだが。

 最初の二名に関しては、夢月の戦闘スタイルに非常に興味を示しているんだとか。

 なのでこの際、一回全員集めて顔合わせしておこうって話になったのだが……一応、自由参加。

 という事で、夢月に断られればあっさりNGを出す他なくなってしまう訳で。


「今日の夜にでも……あ、でもいつログアウトしてくるか……アイツがゲーム始めたら長いし」


『はぁぁ……もう。今週中で良いわよ、だから絶対聞いておいてね!? 私が担当してる子、滅茶苦茶食いついてるんだから!』


「す、すみません……」


 という事で、また夢月にはお願いをする事になってしまいそうだ。

 御褒美、また何か考えておかないとなぁ……リアルイベントとなると、アイツは余計に慣れていない訳だし。


 ◆


 白川 夢月さん。

 彼女はクラスの中でも、目立つ存在ではない。

 とにかく静かだし、笑っている所とか、誰かと話している所も見た事が無かった程。

 本当にクラスの中に居る……こう言ったら悪いが、“モブ”って感じだったのだ。

 そしてそれは、俺だって同じ事。

 学校で、クラスで、全然目立たない存在。

 まさにモブ男子Aって感じで、特徴なんて何にもないのが俺。

 更には結構なゲーム好きって事もあって、男女問わずクラスメイトからは“オタク”として一括りに見られているのが分かる。

 でも友達だって居るし、別に日常生活に不便はしていない。

 家に帰ってからはゲームをして、昼間の間は普通に学校をやり過ごす。

 それだけの日常……だった筈なのだが。

 本日から、クラスの女子と……ゲームをする事になってしまった。

 なんかもう、陰キャの此方としてはとんでもないイベント。

 だって話した事も無かった女の子と、つい最近ほんの少しだけ話す様になったかと思えば。

 相手のお兄さんともお話して、俺の大好きなガンサバを語ったら協力プレイする許可を貰ったのだ。

 いきなりご家族との面談は流石に焦ったけど、しかし何とかやり遂げた。

 なんかもう、これだけでも勘違いしてしまいそう。

 ラノベやアニメみたいに、ここから恋が始まっちゃう? みたいに想像してしまったのだって、事実だ。

 けどそれは男の妄想、現実は違うってちゃんと分かっている。

 なんだけど……やっぱり女子慣れしていない此方としては、物凄くドキドキしている訳で。

 しかもお兄さんと話す時の白川さんは、結構生き生きしていたというか。

 普段の静か過ぎる様子が嘘みたいに、ちゃんと声を聞かせてくれたのだ。

 クラスメイトの、意外な一面。

 ちょっとソレを知っただけで、無駄にドキドキしている自分も相当単純だとは思うけど。

 勘違いするな、絶対にだ。

 彼女はガンサバイブオンラインに興味があっただけ。

 でもゲームというカテゴリーそのものか、それともこのゲームの方向性なのか。

 ご家族から反対されたから、今までプレイ出来なかっただけの女の子。

 それを俺が説得して、此方としてはゲーム内の友達が増えたというだけ。

 尚且つ、ネットゲームあるあるの……誰かを紹介したらボーナス! というオマケみたいな特典。

 これをゲットする為だけの行動だったのだと、必死に自分に言い聞かせながら……此方が指定させてもらった、初心者がログインしてくるであろう場所でジッと待っていた。

 すると。


「す、すみません! 遅くなりました!」


 一人の女の子が、公園のベンチに座っていた俺に声を掛けて来た。

 こちらのアバター画像は送っていたので、すぐに見つけてくれたみたいだ。

 ちょっと紫掛かった黒髪は、肩に届くかどうか程度。

 フワフワと揺れるソレは、見ただけで柔らかそうだ想像出来てしまう。

 そして俺の元へ駆け寄って来た彼女は、VRなのに息を切らした様な雰囲気のまま、此方を見上げて来て。


「黒さ……じゃなかった。“96sour(クロサワー)”さん……ですよね?」


 パッチリとした可愛らしい瞳が、ジッとこっちを見つめていた。

 いや、え? は? ……見た目、ほとんど白川さんなんだけど。

 ちょっと雰囲気は違うというか、普段より表情が明るい感じはするけど。

 あぁでも、髪色がほんのちょっと変わっているのと、前髪はリアルよりちょっと短い?

 そのお陰か、顔が良く見える。

 この影響もあって、彼女の瞳が真っすぐ此方を向いているのが分かり、無駄に胸が高鳴った。

 これまで、真っすぐ彼女の顔を見た事が無かった……というのも、あるのかもしれないけど。

 だって女子だし、こっちだって恥ずかしいし。

 けど今は、結構な近い距離で彼女が此方を見上げているのだ。


「ぁ、えと……何か、変でしたか? キャラ、作り直した方が良いでしょうか?」


 そんな事を言いながら、妙に慌て始める白川さん。

 その際早くも涙目になっているのが、なんとも彼女らしい。

 というのも、本日ファミレスの様子を見て初めて知った事なんだけど。

 この子……実は結構表情豊かだ。


「ぜ、全然っ!? へ、変じゃない……よ? というか、ビックリしたというか。あっ! 変な意味じゃなくて! 大丈夫、大丈夫……とりあえず、フレンド登録しておこっか」


 妙にギクシャクしながらも、どうにか此方から名刺を差し出した。

 このゲームにおいてのフレンド登録機能。

 これをしないとリストに登録されないどころか、相手の名前すら表示されないので。

 という事で、お互いにペコペコしつつ名刺交換を済ませると。

 相手の頭の上に表示された名前は……“46leather(シロレザー)”。

 そして此方が、“96sour(クロサワー)”。

 いやうん、俺が気に過ぎなだけかもしれないけど……似たような名前を付けてゲームしているカップルとかに、見えなくもないよね……。

 などと思って、妙に気恥ずかしくなっていると。


「ヘ、ヘヘヘ……オンラインゲームで初めて、フレンド登録……しちゃいました」


 なんてことない出来事だというのに、此方の名刺を受け取った彼女は。

 ソレを手に、さも大事な物かの様にギュッと胸に抱きしめてから。

 慎重過ぎる程の動作で、ジャケットの内ポケットへと仕舞って行った。

 あ、なんだろう……俺、駄目かもしれない。

 単純なチョロ男子だと笑いたければ笑え。

 フレ登録しただけなのに、すんごい嬉しそうに表情を緩めている白川さんが……物凄く可愛く見える。

 だが、待て。

 勘違いするな、相手はゲームが出来て嬉しいだけだ。

 これまで他のネトゲを経験していなかっただけ、やっとその世界に入れたと喜んでいるだけだろう。

 なので、心の中で浮ついた自分をぶん殴ってから、コホンッと咳払いして。


「合流まで、すっごく早かったけど……チュートリアル、やった?」


「ぇ……ぁ、あっ! すみません! お待たせしたら不味いと思って、まとめてスキップしちゃいました!」


 だと思った。

 このゲームのチュートリアル、結構長いので。

 しかもその後、初期ハンドガンを貰うイベントが発生したりする。

 これを飛ばしてしまうと、武器無しの状態でゲームが始まってしまうのだ。

 少し進めれば、チュートリアルのとは違うハンドガンが支給されるけど……あっち、初心者には使い辛いしなぁ。

 という事で、先程手に入れたばかりの“紹介特典”をコンバート。

 それを、彼女の手に握らせた。

 こういうのは“ほんのちょっと良い物が手に入るよ”とか、もしくはゲーム内マネーやアイテムのプレゼントがほとんど。

 そして、ガンサバにおいて一人目の紹介サービス品は……ちょっとだけ能力値が高い程度の、ハンドガンなのだ。

 という事で。


「良かったら、コレ……使って?」


 今ゲットしたばかりのハンドガンを、そのまま彼女に渡してみた。


「え、あ……でも……」


「元々、俺の目的はこのゲームを友達と遊ぶ事だから。白か……じゃなかった、“46leather(シロレザー)”さんがゲームを始めてくれただけでも、十分嬉しいよ」


 それだけ言って、ニコッと微笑んでみると。

 相手は真っ赤な顔で俯いてから、渡したハンドガンをギュッと握り。


「ぁ、ありがとう……ございます。大切に、使います」


 そんな言葉と共に、そっぽを向きつつ……赤い顔のまま、銃を胸に抱いて見せるのであった。

 ヤ、ヤバイ。

 よく顔が見える様になった白川さん、ポソポソ恥ずかしそうに喋るのが妙にグッと来るというか……このままだと俺、彼女のお兄さんに殺されそうな感情を抱いてしまいそうだ。


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