表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/84

84話 治癒師VS奴隷商人

 大きく前に踏み込んだ。

 同時に拳を繰り出して、老人の頭を狙う。


「ふむ?」


 余裕をもって回避されてしまう。

 ただ、老人は怪訝そうだ。


「武器は持たぬ……しかし、この鋭い拳はいったい……?」

「考え癖でもあるのか?」

「そうじゃな。職業柄、相手をしっかりと見ることが大事なのだよ」


 老人が両手を振り、鋼糸を飛ばしてきた。

 鋼糸がひらめいて俺の首を狙う。


 迷いのない攻撃。

 悪くない。


 ……が、まだ甘い。


「すぅ……ふっ!!!」

「なっ……!?」


 右腕を前に出して首をかばう。


 鋼糸が右腕に絡みついて、そのまま切り飛ばす……

 ことはない。


 鋼糸は確かに右腕に絡みついたが、それだけ。

 腕を切り飛ばすことはなくて、傷つけることもなくて、動きを制限するだけ。


「儂の糸が通じない、じゃと……?」

「爺さんでも、力こぶを作ったりすることくらい、たまにあるだろ? 筋肉ってのは、ある程度、コントロールできるんだよ。力を入れれば、こうして硬く強くなる」

「限度があるじゃろうに……!」

「限度なんて定めてたら、やれることもやれなくなるだろうが!」


 自身の限界をしっかりと見定めて。

 そこを超えないようにして、リスクマネジメントをすることは大事だが……


 ハードルを低くしては意味がない。

 高く設定することで、そこに向けて努力をすることができるし。

 それに伴い、力も身についていくものだ。


「うらぁ!」

「ぐ!?」


 鋼糸が絡みついた右腕を大きく振る。

 老人も一緒に吹き飛んだ。

 すぐに糸を切り離すことはできないらしい。


「ちっ……儂としたことが相手の力を見誤るか」

「引退した方がいいんじゃねえか? 田舎で猫でも抱いてた方が似合うぞ」

「それはそれで魅力的な余生じゃが……」


 老人は、再び両手の鋼糸を飛ばす。


「儂は、もっと派手な方が好みでのう!」

「ちっ」


 今度は俺が舌打ちする番だった。


 老人は、今度は鋼糸をいくつか束ねて放ってきた。

 さながら鞭のよう。


 極細の鋼糸で断ち切るのではなくて。

 束ねた鋼糸で叩き切る方向にシフトチェンジしたらしい。


 さすがにあれを生身で受け止めるのはまずい。

 たぶん、肉が破れて骨が砕けるだろう。


 右手に魔力を集中。

 力を溜めて。

 魔力でコーティングして。


 思い切り殴る!


 ガァンッ!!!


 鉄の塊と塊を真正面から思い切りぶつけたかのような音。

 それと衝撃。


 俺は、老人の鋼糸を殴り返すことで攻撃を防いだ。


「……すさまじく無茶な方法で防ぐのじゃな。長く生きてきたが、このようなことができる者は初めて見たわい」

「よかったな、じいさん。冥土の土産にいいものが拝めて」

「死ぬのはお主の方じゃよ」

「いいや、それはねえな」


 俺は拳を構えた。


「俺は治癒師だ」

「? だからなんじゃ?」

「ちと縁があってな。この街の病巣を放っておくわけにはいかねえ……そいつを成し遂げるまで死ぬわけにはいかねえんだよ」

「それは、治癒師ではなくて勇者などの仕事ではないか?」

「腐った領主をぶん殴って、ふざけたことを考える頭を治療してやる……治癒師の仕事だと思わねえか?」

「かっかっか。面白いことを言う」


 老人は、嫌味などではなくて、本心から面白いと思っている様子で笑う。


「いいぞ、気に入った」

「なに?」

「お主となら、よりよい商売ができるかもしれん。どうじゃ? 儂と一緒に奴隷商人にならないか? 治癒師なんぞより何倍も稼ぐことができて、楽しい思いができるぞ」

「悪いが、俺は奴隷商人が嫌いでな」


 奴隷商人は人間を物として扱う。

 俺が治療しなければいけない相手をそんな風に扱うなんてこと、どうしてできるか。


 そしてなによりも……


「俺は……治癒師だ。その誇りを汚すんじゃねえ」


 これが答えだというように、俺は拳を改めて構えた。

新作を始めました。


今度の主人公は、前世で国を守って死んだ最強の黒騎士。

ただし、転生後の姿は天使のような幼女王女です。


赤子の頃から魔力を鍛え、一歳で魔法書を読み、三歳で剣を握ろうとして、侍女と騎士団を大混乱させます。


「中身おっさん騎士な幼女王女が、真面目に国を守ろうとして周囲から女神扱いされる話」が好きそうな方は、下のランキングタグから読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇

中身は最強黒騎士、外見は天使な幼女王女。
母が愛した国を守りたいだけなのに、侍女も騎士団もなぜか女神扱い!?
『最強黒騎士、幼女王女に転生する』を読む






グラフトノベル様から書籍1巻が発売中です! コミカライズ企画も進行中!

紹介ページへ
― 新着の感想 ―
メチャクチャかっこいいセリフです(*^^*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ