81話 囮作戦
師匠の協力を得ることはできなかった。
それは仕方ない。
素直に諦めることにしよう。
師匠が守りに入るのは当然のことであり……
それをおかしいと責めることはできない。
が。
「俺は俺で勝手にやらせてもらうか」
俺は止める、なんてことはない。
むしろ覚悟を決めたくらいだ。
「とはいえ、昔の師匠みたいな無茶は真似できねえけどな」
俺は俺のやり方でいこう。
きっちりと相手を叩き潰して。
それでいて、こちらの正当性をしっかりと主張する。
そのために必要なことは……
――――――――――
「ダメだ」
「「えー!?」」
これからのことを考えている時。
ユナとアズがとあることを提案してきて……
即却下すると、とても不満そうな声をあげられた。
チェルシーが苦笑しつつ二人のフォローに入る。
「セイル、もうちょっと考えてあげたら?」
「ねえな」
「ばっさりすぎる……」
「当たり前だろ……領主の悪行の確かな証拠を掴むために、ユナとアズを囮にするとか、んなもん許可できるか」
領主は人身売買に手を染めているが、今のところ俺の推測でしかない。
まあ、ほぼほぼ間違いないと睨んでいるが……
しかし、確かな証拠がない。
万人が納得できるようなものがない。
それをなしに暴れたら、ただの犯罪者だ。
俺は、それでも構わないが……
師匠が守りに入っているとなると、さすがに迷惑をかけてしまうだろう。
それは望まない。
故に、確かな証拠を抑える必要がある。
「ユナとアズが領主に目をつけられるようにして、商品として捕らえられるように誘導して……そうやって確かな証拠を得る。それなら証拠は手に入るだろうが、危険だ」
「セイルさん、私達のことを心配してくれているんですね?」
「もー、なんだかんだそういうところは優しいのよね。ツンデレね」
「ちげえよ。失敗したら領主に余計な警戒感を与えるだろうが」
「そうやって言い訳するところがツンデレですね」
「私達、セイルの心を射止めちゃったかしら?」
「あのな……」
話が逸れていく……ことはない。
ユナとアズは軽口を叩くものの。
でも、その想いはどこまでも真剣だった。
「セイルさん、私達もなにかしたいんです」
「施設がそんなことになっているなんて知らなかったし……ここでなにも見なかったことにするなんて、後味が悪すぎるわよ」
「なら、俺に任せて……」
「セイルさんはまた無茶しそうだからダメです」
「ぐっ」
そんなことはない、と反論しようとしたができない。
やらかしてしまうかもしれない、という自覚はあった。
師匠にあんなことを言っておいてなんだが……
俺もまだ、自分の全てを律してコントロールできるわけではない。
時に感情に流されてしまうこともある。
「そこで私達の出番です」
「あたし達なら、領主もいい商品だ、って思って食いついてくるんじゃないかしら?」
「もちろん、警戒はされると思いますが……」
「たぶん、向こうはセイルのことはよく知らないわよね? たかが治癒師の連れ、ってことで、いつものように悪事を働くと思うわ」
「……ったく」
ユナとアズは、今回の件、思っていた以上にしっかりと考えているようだ。
アイディアの綻びを突こうとしても、なかなか見つからない。
ただ、二人だけでこれだけうまくアイディアをまとめられるとは思えない。
協力者がいるな。
「~♪」
チェルシーを見ると、白々しく口笛を吹いた。
まったく……
「……わかった」
「「じゃあ!?」」
「もう少し煮詰める必要はあるが、囮作戦でいこう」
「「がんばる!」」
「はぁ……」
頭が痛い。
自然とため息が出てしまう。
とはいえ……
仲間ががんばろうとしているのだ。
そんなものはいらないと、俺一人で動くのは間違っているだろう。
素直に頼らせてもらおう。




