第11-1話 桜とお風呂と恋話
「私ね……リンおねえちゃんもユウも大好き……ふたりには私のお兄ちゃん、お姉ちゃんになってほしい……」
桜吹雪が舞う中で、ほんのりと頬を赤く染めながら、エレンちゃんが告白する。
……アタシ、もうこのままこの子の保護者になってよかですか?
……お話の舞台は少し時間を戻して……4月の春休み、"ユニゾンスタジオ・ジャパン"にクランメンバー全員で遊びに行った後の月曜日。
アタシはエレンちゃんを連れて、市内観光に繰り出していた。
今日は平日なのでユウにぃは残念ながらお仕事である。
このアタシ、凛ちゃんがエレンちゃんの接待の大役を仰せつかったのだ!!
「わわ、リンおねえちゃん……この靴少しふわふわする……」
ふふ……今日のエレンちゃんはいつものゴスロリ系でもなく、制服でもなく……アタシ渾身のサブカルコーディネート!
トップスはラリ気味のパンダアートが入った、ストリート系の丈が長いフード付き黒パーカー。
ボトムスは丈の長いパーカーにすっぽりと隠れる同色のショートパンツ。
足元は思い切って黒のニーソに白のハイカットスニーカー。
首に掛けたヘッドフォンがワンポイントである。
へへっ……エレンちゃん肌白いし、手足もすらりとしてるから、こういうファッションも似合うなぁ……スマホの待ち受けにしちゃお。
アタシはエレンちゃんの手を引くと、最初の目的地に急いだ。
中央駅から少し山側に歩いた場所……都会の真ん中とは思えない閑静な路地にたたずむ欧風のカワイイ建物。
ここには世界大会で優勝した凄いパティシエさんがいるカフェがあるのだ!
高校生にはなかなかお高いんだけど、さすがに大人なユウにぃがお小遣いをくれたので予約したんだよね~。
ふふ、めっちゃ楽しみ!
……いま”パパ活”って言った奴はだれ? ユウにぃはそんなにおっさんじゃないもん!
……店員のお姉さん(ここの制服が可愛いんだこれが)に2階の窓側の席に案内されたアタシたちは、”本日のおすすめケーキセット”を注文する。
運ばれてきたのはピンクのイチゴムースの上に大きなイチゴが乗ったとてもかわいいケーキに、琥珀色に輝く紅茶。
「!! なにこれ……おいひい! おいしいよリンおねえちゃん!!」
小さなおくちでモグモクと一生懸命ケーキをほおばるエレンちゃんを見ながら、アタシはひたすら萌えていた。
ああ、このまま保存して一生見ていたい……。
「そういえば、エレンちゃんってお姫様なんだよね~、にひひ……フィアンセとかいたの?」
言いながらアタシはしまった……と自分の質問に後悔していた。
ああ……確かエレンちゃんは王族最後の生き残りと言っていた……なんて無神経な質問を……アタシのバカバカ!
案の定、エレンちゃんの表情に影が差す。
「ごめんっ! そんなつもりはなかったんだけど……いまの質問は忘れて!」
「……ううん、大丈夫だよリンおねえちゃん。 確かにいたけど、私は末っ子だったから……遠い国の貴族……だったみたい……会ったことないから良く分からないかな……?」
寂しそうな顔をするエレンちゃん。
うう、本当に要らないことを言っちゃった……。
「それより……父様も母様も兄様たちも忙しくしてたから、私はいつも一人ぼっちで……私はどちらかというと”家族”が欲しいな」
ずきゅーーーん!
上目遣いから放たれた必殺の言葉にハートを撃ち抜かれたアタシは、今後もエレンちゃんを甘やかしまくることを心に決めたのでした。
*** ***
エレンです。
リンおねえちゃんに連れられ、街で美味しいケーキを食べた後、おっきな”しょっぴんぐせんたー”で着せ替え人形にされてました。
でもいっぱいカワイイ服が手に入ったので満足です!
いまはリンおねえちゃんおすすめの、桜の見える温泉銭湯?に来ています。
これが”桜”ですね……ピンクのカワイイキレイなお花が満開……この花を見ながらお風呂に入れるなんて……なんて素晴らしい……
それに比べて”向こう”での生活……思わず私はどんよりします。
詳しくはまたお話しますが……”王家の墓”での私の生活……大変つまんないんですよ?
食事は魔法装置で合成した固形食物……栄養はありますがこれがマズいのなんのって……定期的にニーズヘッグを監視する仕事と、[探検者になろう]の管理もありますので……。
ええ一日12時間は魔法装置の前ですかね。 こちらのネットで見ました。これがいわゆる”くそにーと”というヤツでしょうか。
たまに”王家の墓”の迷宮部分に出向いて、極大魔法で周囲を破壊するぐらいのストレス解消は許してほしいところです。
……最近はスマホで、リンおねえちゃんから教えてもらった小説サイトで恋愛小説を読むのがお気に入りです。
(なぜか”王家の墓”の私の部屋でだけ、こちらの世界でゲットしたスマホがつながります。 細かいことを気にしてはいけません)
ふああ、うっとりしてしまいます……正直、2年近くも地下生活をしてますので、自分の恋愛についてはピンときませんが、近くにお似合いのふたりがいるじゃないですか!
くふふ……私はユウとリンおねえちゃんをくっつけるべく、陰謀を巡らすのでした。
第一弾として、リンおねえちゃんに冒頭のセリフを言ってみました!
私の仲介で、ふたりをくっつけてしまえば……私は妹として最愛のおにいちゃんとおねえちゃんゲットです!
私の陰謀は、次のお話に続きます!




