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第10-4話 霧のニーズヘッグを追え!

 

「ふっふっふ……シオリちゃんを使わせてもらいます……!」


「なるほどなるほど。 シオリのすべてを丸裸にしちゃうんだね! おっけー! 友人のアタシが許可する!」


 女子二人が何やら盛り上がっている。

 こえー……10代女子こえー……シオリちゃん逃げて!



「あの二人は何を企んでるにゃん? ハル、ついていけないのだ」


 おお、こんな所に常識人が(猫だけど)……救いを求めた俺は、思わずハルの頭をなでなでする。



「ユウ……人聞きの悪いコト言わないで。 これにはちゃんと科学的理由があるの」


 思わず俺がハルと現実逃避をしていると、俺のつぶやきを聞きつけたのかエレンがずずいっと寄ってくる。


 魔法少女が科学的根拠とか、どういうことですか。


「あのね。 私の解析の結果、恐らくニーズヘッグの頭Bは精神系の魔法が得意」


「奴は被害者たちの深層精神に分身を宿らせ、悪夢を見せることで負の魔法力を取り出している」


「そして、マイナスの魔法力を集めることで回復を……この間私たちが倒した頭Aの復活を狙っている……それを防ぐためには!」


 ヴン……


 ぐっとこぶしを握ったエレンの動きに合わせ、空中に図解が投影される。

 エレンが作成した作戦の概念図のようだ。


「私の魔法で……被害者の深層精神にダイブ……ニーズヘッグの分身を捕まえ、リンクをたどることで本体が潜んでいる場所をあぶりだす!」


「深層精神にダイブするためには、対象への接触が必要だから……私たち周囲の関係者が巻き込まれたというのは、ある意味都合がいいんだよ」


 な、なるほど……この作戦がシオリを助けることにも繋がるのなら仕方ない……あとでシオリには何か贈り物をしてやらないとな。 いくらなんでも不憫すぎる……。


「よし、おっけ! シオリのママと連絡が取れたよ! シオリは、いま自宅で療養してるらしいんだけど、アタシたちが”リアルスキル”で何とかできるかもって言ったら、会って良いって!」


 先ほどから何やらメッセージアプリでやり取りしていたリンが歓声を上げる。


 シオリの母親とやり取りしてたのか……さすが話が早いぜ。


「ん……リンおねえちゃんありがとう! それじゃ、ハルを連れてみんなでシオリの所に行って。 ハルを通して私の魔法を使うから」


「りょうかい!」


 かくして、俺たちの”ニーズヘッグ頭B補足作戦……ついでにシオリも助けよう”が開始されるのだった。



 ***  ***


「シオリ……いま助けてあげるからね……」


 ここはシオリの部屋。


 目の前には眠り続ける一人の少女がいる。

 ハルを胸に抱いている凛も心配そうだ。


「エレン……配置に着いたぞ」


 俺は、スマホの通話アプリを起動するとスピーカーモードにし、エレンと通話をつなぐ。


[ん……こちらも確認したよ……そしたら、ハルをシオリに触れさせて]


「よし、了解だ……ハル、頼めるか?」


[オッケーだにゃん!]


 俺の念話にハルが応じ、ぴょんっと凛の腕の中から飛び出ると、ぷにっと肉球でシオリの額に触れる。


[それでは、魔法を使います……”メンタルダイブ”!]


 パアァ……!


 エレンが魔法を発動させた瞬間、薄黄色の光が部屋に満ち……俺たちの意識はまどろんでいった。



 ***  ***


 はっ……!

 ここがシオリの深層精神内か……自分の手足を見ると、輪郭がおぼろげに光っている。


 上空……と言っていいのだろうか?

 はるか上に強い光が見え、足元からたくさんの写真……イメージのようなものが立ち上っている。


「ユウにぃ! ちゃんと入れたみたいだね」


「おおお、凄いにゃ!」


 凛とハル(人間形態)もやってくる。

 二人とも同じように身体の輪郭が光っている。


「みんな揃ったね……じゃあ、シオリの精神のさらに深い所へ……こっち」

 魔法使いのローブを着て、メイジスタッフを持ったエレンが現れると、俺たちを奥へと導いてくれる。



 俺たちがシオリの深層精神に潜るにつれ、周囲に様々な映像が現れては消えていく。

 エレンの説明によると、シオリの記憶だそうだが……。


「わ、あれって中学の修学旅行の時の……シオリってばテニス部の部長にもコクってたの? あの人ホ○って有名だったのに……」


 リンが思わずといった感じでシオリの個人情報を語る……ここで見たことはシオリには黙っておいてやったほうがよさそうだ……とんだ暴露大会である。



「ん……これわ!! ってああ、ユウにぃは見ちゃだめ! エレンちゃんも教育に良くないので見ちゃだめです!」


「ほえっ? ふわわわ!」


 がばっ!


 次の映像を見た瞬間、凛が顔を真っ赤にし、映像が見えないように手のひらで俺とエレンの目を覆ってくる。


 ……だが、さっきの一瞬で見えてしまった……ふむ、彼女は”週に5回”か。

 何が5回かは彼女の名誉のために言わないでおく。


「やはり下僕悠太はえっちなのである……」


 ハルのツッコミを受けつつ、俺たちはより深くシオリの精神に潜っていた。



 ***  ***


「むむ、エレっち! いたにゃん!」


「ん……私の方でも確認したよ……アレがニーズヘッグの分身……!」


 シオリの深層精神の最奥……周囲の映像が赤ん坊時代になっている。

 ハルが真っ先に”ソレ”を見つけた。


 黒くわだかまる霧……それが醜悪な暗黒竜の姿を取る。


「エレン、ここで攻撃を仕掛けるのか?」


「ううん、分身をいくら倒しても意味はないよ。 ここはハルの”シックスセンス”で魔法目印(マーカー)を……!」


「エレっち、任せるにゃん!」


 エレンの言葉に、ハルが”シックスセンス”のスキルを発動させる。


 シュンッ!


 ハルの手元から小さな光の矢が生まれ、一直線にニーズヘッグに向かうと、ぱんっと小さな炸裂音を立てた。


 グオ?

 グオオオオンッ!


 俺たちに居場所を探られたことに驚いたのだろう。


 ニーズヘッグの分身は、大きくひと鳴きすると、逃げようとする。


「大丈夫……トレースできてる」

「これは……まさか!」


 エレンが大きく声を上げる。

 どうやら想定外のことが起きているようだ。


「ニーズヘッグの分身が、”イベント迷宮”に集まっていく? 何をするつもり?」


 エレンの話によると、ほかの被害者の深層精神からもニーズヘッグの分身が撤退し”イベント迷宮”に集まっているとのことだ。



「これはある意味好都合かも……ニーズヘッグの残留思念も利用して……」


「ユウ、リンおねえちゃん、ハル! 頼みがあるの!」



 なにかを思いついたらしいエレンが、”ニーズヘッグBをぶち倒すよプラン兼[探検者になろう]を救おう”計画を俺たちに話してくれる。


 なるほど!

 流石エレンだぜ……俺たちはさっそく準備を始めるのだった。


ここまで読んで頂いてありがとうございます!


挿絵(By みてみん)


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