第10-1話 ゲーム内イベント、始めます
「わあ……♪」
「すごいにゃん!」
リンとハルが歓声を上げている。
それも無理もないだろう。
俺たちの目の前に広がるのは、蒼穹の空。
どこまでも広がる蒼に、巨大な六角形の足場がふわふわと浮いている。
足場のふちはおぼろげに発光し、幻想的な雰囲気だ。
透明度の高い空の彼方まで、何重にも足場が続き、壮大な迷宮を形作っている。
ところどころ、フロアの高低差を”光の滝”が埋めており、ダンジョンのギミックについても期待できそうだ。
「これは……すごい光景だな!」
「ふふ……私渾身の一作……”イベント迷宮”、みんな気に入ってくれた?」
そう、俺たちがこれから挑戦するのは期間限定のイベント迷宮。 わくわくする探索が始まろうとしていた。
*** ***
4月もあっという間に過ぎ、GWを控えた過ごしやすい季節、我らが[探検者になろう]でも、期間限定の大規模イベントが行われることになった。
”新入生、新社会人さん応援! 挑戦者にもれなく「リアルスキル」プレゼント!”と銘打たれたこのイベントは、ゲームの管理者であるエレンの言葉を借りれば、頭を一本失った”ニーズヘッグ”に更なる打撃を与える戦略の一環という事になる。
もちろん、俺たちも全面的に協力するのは言うまでもない。
エレンも日本にやってきて、一緒に色々準備をしているところだ。
「にひひ~! まずは市内JKのプチインフルエンサーであるこの凛ちゃんが拡散希望っと……!」
高校2年生に進級した凛には、特に新高校1年生となったフォロワーが大勢いるという事で、SNSでの拡散をお願いした。
次に俺の作戦だが、俺の大学の同級生が経営する有名カレーチェーンのサイト―カレーにお願いし、ゲーム参加キャンペーンをしてもらうことになった。
ちなみに、サイト―カレーのイソスタに上がった凛とエレンのプロモ写真がバズったことにより、巨大テーマパークである"ユニゾンスタジオ・ジャパン"までもがコラボしてくれることになったのは嬉しい誤算だったが。
ともかく、フルダイブできることがウリで、今までイベントを開催していなかった[探検者になろう]が大規模イベントを開催するという事で、SNS上では様々な反応が盛り上がっていた。
「ふむふむ……どんな反応があるかと心配してたけど、おおむねイイ感じの反応だね。 アドバイスくれたユウ、ありがとう。 私、こういうことに疎いから……勉強になるね」
エレンはSNSでの反応を見てほっとしているようだ。
俺は以前、なんで[探検者になろう]は期間限定イベントなどを開催せず、課金要素も薄いのかと疑問に思っていたが、真実を知った今なら当然と感じる。
なにしろ、管理者が異世界のお姫様なのだから……。
「まあ、今回エレンが作った期間限定ダンジョンも凝っているし、アイテムのドロップ率やクリア特典も豪華だしで、他の凶悪ゲームに比べて評判良いのは当然だけどな!」
そう、[探検者になろう]の強みは、ゲームの実装、管理に魔法を使っているので、費用がサーバーの維持費用ぐらいしか掛からないこと。
このような大規模イベントも少ないお金で出来てしまうのだ。
なにしろ他のゲームは脳死でガチャを回すことを要求してくるし人権アイテムも(以下自粛)
「あー、でもさユウにぃ、[探検者になろう]の課金要素が薄い理由は分かったけど、じゃあなんでゲーム内衣装はあんなに」
「凛」
「え?」
「それ以上いけない」
俺はエレンからどす黒いオーラが立ち上っているのを感じ、慌てて凛の言葉を押しとどめた。
「うう、仕方なかったの……”さーばーひよう”の請求が来て……どうやって課金するのか調べたら……アレが……」
どうやら、背に腹は代えられない選択だったようだ。
エレンが暗黒面に落ちてはいけないので、とりあえずナデナデしておく。
「りょ、了解ユウにぃ……話は変わるけど、アタシたちもイベントに挑戦するんだよね?」
触れてはいけないと思ったのだろう。
凛が話題を変える。
「もちろんだ! 俺も久々にゲームを楽しみたいしな! クランメンバーも増えたことだし」
「”いべんと”とはなんにゃ? ”だんけちゅ~る”がもらえるの?」
「……活躍度合いによっては考慮しよう」
[!! がんばるにゃ! よいぞ……下僕悠太よ]
ハルは良く分かってなさそうだったので餌で釣っておく。
すぐにハルはテンションMAXだ。
まあ子猫なので(略)
「そういえば! 最深部まで到達した女子限定で、”顔デコ”のリアルスキル貰えるんだよね~? めっちゃ楽しみじゃん!」
「リンおねえちゃんのアイディアをもとに作ってみたの……女の子の間では話題になってるみたいだね」
”顔デコ”とは、今回のイベントの目玉スキルで、現実世界の顔や持ち物に、色々なデコレーションが出来るリアルスキルらしい(プリクラの効果設定をイメージしてもらえれば分かりやすいかも)
このスキルの詳細が公開されるや否や、十代女子の間で話題沸騰…………アラサーリーマンには良く分からない世界だぜ……
「ふふ、いま時点でもたくさんの”楽しそう”、”期待!”っていうプラスの感情が集まってきてるから、イベントが盛り上がれば、ニーズヘッグに決定的ダメージを与えられるかもだね!」
エレンの表情も期待に満ちている。
よし、ゲームを盛り上げるためにも、俺たちも精一杯楽しむとしよう!




