表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/37

第9-1話 カレーを食べにユニバに行こう!

 

「おお……ふおおお! これは凄い光景……あれが全部工場?」


「うにゃ、うにゃん!」


 俺の車の助手席で、エレンがハルを膝に乗せながら歓声を上げている。


 阪神高速5号湾岸線を走る俺のクルマからは、春の光に輝く大阪湾と、関西の中核をなす一大工業地帯の風景が見えている。


 前回(3月)の来日時は、この辺りを通ったのが夕食の後だったのでもう辺りは暗く、詳細な光景を見ていなかったからか、エレンの興奮度合いも大きい気がする。


「それに、アレは……巨大な魔法力加速装置!?」


「ふふ、アレはねエレンちゃん。 観覧車って言って、ゴンドラ……人が乗れる箱に乗って風景を楽しむ道具だよ。 今日の夜にでも行ってみる?」


「(こくこく)」


 凛の申し出に、すごい勢いで頷くエレンはとても微笑ましい。


 さて、天保山横の運河を抜けて右手に見えてきたのが今日の目的地。


 今日は4月、春休み最後の週末。


 先日のニーズヘッグ襲撃事件を解決した俺たちは、お疲れ様のご褒美の意味を込め、関西の誇る世界有数のテーマパーク、"ユニゾンスタジオ・ジャパン"に向かっていた。


「ふふ、今日はちょいと”仕事”があるが、スタジオ近くのホテルに泊まるし、明日は一日遊べるぞ~! しかも、入場料金はタダだ!」


 そろそろいいだろう……俺はこの週末の完璧なプランを凛たちに披露する。


「!? え、春休みのユニバでしょ!? マジ! ユウにぃ、なにやったの?」


「? それは凄いことなの? リンおねえちゃん?」


 大げさにリアクションを取る凛と、良く分かってなさそうなエレン。


 ふふふ……せっかくのエレンが来る週末なんだ……みんなでしっかり楽しめるように、社会人ならではの人脈を駆使してこの舞台を整えたのだ!



 ***  ***


 ()()()()()()()にクルマを止めた俺たちは、出入り業者の搬入口に向かっていた。


 なんで俺たちがこんな場所にいるかというと……。


「ういーっす、悠太、今日はよろしくな」


「おう、サイト―。 よろしく」


 俺たちを出迎えてくれたのは、”SAITO’S CURRY”と名前の入ったエプロンを付けた、俺の大学の同級生、サイト―である。


「あれ、サイト―カレーのサイト―さんじゃん! え、ユウにぃの知り合いなの?」


「ん……? 凛はサイト―を知ってんのか?」


「知ってるも何も……今や市内のJKの間で話題フット―中の、味最高、映え最高のおしゃれカレー屋さんだよ?」


「……ああそうか、ユウにぃはアラサーだもんね……イマドキJKの流行を知らなくても仕方ないか……」


 うぐ……凛にバカにされてしまった……アラサーリーマンがJKの流行をフォローしているのも、それはそれでアレだろう?


「それじゃあ、サイト―、お前が俺たちに依頼してきた理由って……」


「ああ。 せっかく”SAITO’S CURRY”がユニバのフードコートに出店するんだ。 初日はイケてるJKに看板娘してほしいだろ?」


 いたずらっぽく笑うサイト―。


 ああそうか、コイツ自分の店のイソスタに写真載せる気だな……たまに友人の付き合いで読モをしてる、そこそこインフルエンサーなJKを演じてる凛と、もふもふかわいくてエキゾチックな魅力もあるエレンのコンビなら、最強という事か……!


 ヤルなサイト―……美味すぎる話に少しおかしいと思っていたが……これが凄腕商売人ってやつか! 俺は今更ながらに大学の同級生の恐ろしさを実感していた。


「? リンおねえちゃん、結局私は何をすればいいの?」


「ふっふふ~、ちょ~っとかわいい制服を着て、夢の国で美味しいカレーの売り子をすればいいだけダヨ? うっ……エレンちゃんの制服姿……よ、よだれが……」


「ん……なんか良く分かんないけど、私がんばるね!」


 ああだから凛のヤツ、中学時代の制服なんて荷物に積んでたのか……そして鼻息が荒いぞ大丈夫か? 通報しとくか?


 でもエレンの制服姿か……うむ、最高だな!


[下僕凛、下僕悠太ともに、しこたまえっちなのである!]


 ふたりして鼻の下を伸ばす俺たちに、ハルから手厳しいツッコミが入るのだった。



 ***  ***


「ふおおぉぉぉぉ……これは、女神の食べ物? さくさくの衣に……噛みしめるほどにあふれる肉汁……うま味と辛味が黄金比で絡み合うソースに……なんでしょうこのコリコリとした味わい深い酢漬けのようなものは……ああ、女神さま……感謝します……」


「ふおおぉ……わが母校の夏セーラー……紺色の襟とリボンが彩る純白の上下……待って待ってかわいすぎない? これにひよこさんエプロンを合わせるとか……ああ、至高、至高です!」



 ここはフードコートのバックヤード。


 高校の制服に着替えた凛と、凛の中学時の制服に着替えたエレンが、本日フードコートで出す、珠玉のカツカレーの試食と、イソスタ用の写真撮影をしていることろだ。


 セーラー服姿でエプロンをし、満面の笑みで美味しそうにカレーを食べるエレン……ふむ、これはサイト―の奴に追加料金を請求せねば。

 バズること間違いなしである。


 そして隣でくいっと顎を引き、モデルポーズを取る凛も最高に魅力的なのであるが、その緩んだ表情はどうだ……こら、アヘ顔を晒すんじゃない!


「いやー、イイよふたりとも! キラキラした女の子が美味しそうにカレーを食べる……この光景だけで世界の宝だね!!」


 サイト―のヤツも気分が乗ってきたのか、写真を撮りまくっている。



 なお後日、この写真を上げたサイト―カレーのイソスタは、本年度日本でTOP10に入る”いいね!”を記録したのであった。



 ***  ***


「ふう、ユウにぃ……思わずさっきは天に召されるところだったじゃん! あ、ルーの補充早くお願いしま~す!」


 バックヤードで広報用の写真を撮影した後、俺たちはユニバのフードコートで働いていた。


 言うまでもないと思うが、凛とエレンが看板娘として接客を担当し、俺がバックヤードで雑務を担当している。(さすがに猫のハルをバックヤードに入れるわけにはいかないので、彼女は気ままにパーク内を散策中)


 春の風に乗り、ふんわりと漂うスパイシーなカレーの香り……もともと兵庫県県庁所在地の我が市で大評判のカレー屋の出店であるという事と、超絶美形制服JC、JKが接客をしているという事で、SNSがプチバズったサイト―カレーは大盛況だった。


「はは、こりゃ午前中にルーが無くなりそうだ……それにしても、凛ちゃんとお友達のエレンちゃん、凄い集客効果だな……学生さんじゃなければ毎日手伝ってほしい所だよ」


 サイト―のヤツもご満悦だ。

 ふふん、我がクランが誇る美少女ふたりなのだから、当たり前だ! もしヤツがグッズを作るとか言い出したら、キチンと釘を刺しておこう。


 ん、フードコートのカウンターが少し騒がしいな?

 なにかクレームがあったんだろうか?


 少し気になった俺は、接客ゾーンである、フードコートのカウンターに向かった。

 困惑した様子の凛に話しかける。


「どうした、凛? 何かトラブルか?」


「うん……そんなに大したことじゃないんだけど……」


「さっき”カツカレー”を頼んだカップルにカレーを渡したら、カノジョさん分のカツの中身が白身魚じゃん! とクレームを受けたんだよね……カレシさんがフォローしてくれたから大丈夫だったけど」


「なん……だと!?」


 俺は驚愕に目を見開く……なぜならば……今日のサイト―カレーで、()()()()()()()()()()()()()()からだ!


「……ユウ、リンおねえちゃん……おかしいよ。 さっきくれーむを受けたとき、女の人が持ってきた白身魚カツから、わずかな魔力を感じたの」


「!!」


 事件が、始まろうとしていた……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ