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第8-3話 ハイスクール・クライシス

 

 早朝の校舎。

 ふらふらと廊下を歩く一人の女子生徒。


 先日、野球部副主将を学年一の美人である3組のササキさんと取り合い、僅差で取り逃した後から頭痛がする。


 昨日は早い時間に寝てみたが、一向に良くならない。

 しかも、今朝スマホを見てみるとフレンドに見たこともない男3人の名前があった。


 プロフを見ると市内でも有名なヤンキー中学の生徒……ウチはいったい何をしてしまったのか?

 マジでツイてない……。


 悩める少女、シオリは教室の自分の席に着くと、クラスメイトが登校してくるまで頭を抱え続けた。



 ***  ***


「先日のポンコツヤンキー襲撃事件だけど……原因が分かったよ」


 ここは[探検者になろう]のホームゾーン。


 様子も衣装もおかしい4人組からゲーム内で襲撃されてから数日後、俺たちはエレンから呼び出され、ここに集まっていた。


「このゲームでは他のプレーヤーを攻撃することは出来ない……やっぱりなんか理由があったという事だよね?」


「おお~! チョウチョが飛んでいるのである~」


 友人がおかしくなり心配なのだろう。凛の表情は真剣だ。

 そしてハル……まあ子猫はだいたいこんな感じなので置いておこう。


「原因というと……やはり”ニーズヘッグ”絡みか?」


 俺が問いかけると、エレンはこくりと頷き、説明を始めた。


「うん。 ”ニーズヘッグ”の本体はいま、私の魔法で動きを抑え込んでいるんだけど、抑え始めてから1年近くたったから、拘束が緩み始めてる」


「その緩みを利用して、[探検者になろう]に色々と攻撃(ハッキング)を仕掛けているみたい」


「”ニーズヘッグ”は、闇と暗黒の化身……人の心の暗黒面に寄生する……リンおねえちゃんのお友達……シオリさんは[探検者になろう]を通して、奴に侵食されてるのかも」


 なるほど……エレンの説明によると、このゲームの基本部分(フレームワーク)は、異世界の魔法で構成されている。


 異世界の魔獣である”ニーズヘッグ”がこのゲームを悪用することもできるという事か。


「……リン、お前は高校でシオリとクラスメイトなんだよな? シオリの様子はどうだった?」


 影響は現実にも及んでいるのかもしれない……気になった俺はリンに確認する。


「う~ん、そうだね……。 アタシもシオリにそれとなく話しかけてみたんだけど、こないだの襲撃事件のことは覚えてないみたいだった」


「でも、朝から凄く調子が悪そうだったし……筋肉痛がひどいって言ってたかな……」


「あ、あと……心当たりのないヤンキー中学の男達がフレンドに入ってたってさ。 ”もしかして、エンコーしちゃったんじゃ!? ああ、なんて不幸なウチ”ってさらに暗黒面に落ちてた……」


 相変わらずといえば相変わらずだが……ヤンキー中学のフレンド3人……先日の襲撃してきたクランの構成と一致するな。

 それに記憶もないときたか……。


「ふむ……ニーズヘッグの奴がシオリさんの記憶を操作しているんだろうね……あと筋肉痛……リアルの精神や身体にも影響が出てるっぽいね。 急いだ方がいいかも」


「私の方で対策を検討するね……」

「ただ、特にリンおねえちゃんは同じ学校なんだから、気を付けて!」


 リンの情報を聞き、真剣な顔になるエレン。

 ふむ、対策は専門家に任せた方がよさそうだ。


 リンを気遣うセリフに「こ、これが妹萌え……!」などとリンのヤツがつぶやいている。


 確かに、俺も学校でリンの身に何か起きないか心配だな……よし!


「……ハル、頼みがあるんだが……”だんけちゅーる・極”を付ける!」


「!? マジかにゃん! なんでもするのだ!」


 一つ対策を思いついた俺は、相変わらずチョウチョを追っかけ、こちらの話を全く聞いていないハルを、猫用最終決戦糧食で釣り上げるのだった。



 ***  ***


 もうすぐ春休み……浮つくクラスの空気とは裏腹に、アタシは少し緊張していた。


[”ニーズヘッグ”の浸食がすすむと、シオリさんは見境なく人間を襲うようになるかもしれません。 特にリンおねえちゃん、彼女はなにかアナタに恨みがあるようでしたので……]


 エレンちゃんのあんな言葉を聞いたからだ。


 うう、そこまでシオリに恨まれるようなことがあっただろうか……確かにササキさんのことを言わなかったことは悪かったけど……あの子はそれくらいでは止まらないことも分かっていたのだ。


「うにゃん!」


 アタシの席は窓側……窓の近くには大きな木があるが、その枝の上に一匹の茶虎の子猫がいる。

 ユウにぃの”使い魔”となったハルにゃんだ。


[凛、どうだ? シオリの様子は?]


 そう、学校でのアタシを心配してくれたユウにぃの提案で、視覚共有したハルにゃんをアタシのボディーガードとして付けることになったのだ。


 ハルにゃんを通して、ユウにぃの”思考”が聞こえる。


 ユウにぃは本日有休を取ってくれているので、いざというときは”瞬間移動”で助けに来てくれることになっている。


 ……ふふっ……ユウにぃの暖かな気配りがとても嬉しい。


「……それがユウにぃ、今日シオリは休んでいるんだよ……なんか体調不良らしいけど」


[なんだと? 本当に体調不良なのか……それとも]


「”ニーズヘッグ”に操られているか、だね」


「アタシ、念のため学校からの帰りでもシオリを探してみる」


[……気を付けろよ……やばくなったらハルを通して連絡な。 すぐ行くから]


「うん! ありがとうユウにぃ!」


「これが片付いたら春休みだし、エレンちゃんも連れてユニバ行こうよ!」


[……あのな、そーいうのは全部終わらせてからにしろ]


「にひひ……♪」


 遊びに行くこと自体は拒否しないユウにぃが嬉しい。

 思わずにやけるアタシ。


 ……このような無自覚リア充アピールがシオリのダメージになっていたことを、アタシは後から気付くのだった。


 シオリ、マジでゴメンね……。


次回はバトル展開です!

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