第5-2話 超探査スキルとタイムカプセル
[78,230の経験値を獲得。 クランレベルが60に上がりました]
[……ザザッ……レベル60への到達を確認……新たな”バグスキル”が獲得できます]
ガイドメッセージがレベルアップを告げる。
ふう、このくらいのレベルになると、経験値稼ぎも大変だ。現実での季節は3月に近づき、梅の花の便りも聞こえてくるころだ。
「きたきた! レベル60♪ 次はどんなスキルかな?」
ようやくのレベル到達に、リンがウキウキしている。
「リン、お前やけに楽しみにしてるんだな……自分が装備できるわけじゃないのに」
「ユウにぃが”バグスキル”を装備できるようになってから、なんだかんだ毎日シゲキあるじゃん? 充実してるよね!」
……俺としては爆弾を持った銀行強盗と渡り合うような事態は極力避けたいんだが……こっそりため息をつきつつ、いつものようにスキル一覧を展開する。
”バグスキル(サカナが焼けます):爆炎魔法”
”バグスキル(なんでも凍らせます):氷雪魔法”
”バグスキル:超探索 New!!”
前回取らなかった”爆炎魔法”、”氷雪魔法”はそのままだが、また新たに1つのスキルが増えている。
”超探索”……どういう用途に使えるか、さっぱり分からない……俺の持っている本来のリアルスキルである、”リモコンサーチ”の凄い版だろうか?
「え~、新しいのなんか地味~。 ねえユウにぃ、今度は”爆炎魔法”にしようよ! どかーんて!」
「なにがどかーん、だ! 使う場面がテロくらいしか思い浮かばないぞ……俺はこれにする!」
「あっ! 一番地味なヤツ! ぶーぶー」
リンはぶーたれているが、俺は平穏を愛する男なんだ……俺は即座に”超探索”を装備する。
まあ、お金を落として困っている人の助けに位はなるだろう。
「ユウはお目が高い……ないすせれくと」
「知っているのかエレン? もしかしてこれから上がる株が分るとか!」
「ううん……てきとうに言った」
「適当かよ!」
「……ふふっ」
俺のツッコミに、わずかに笑みを見せるエレン。
彼女は最近笑うことが増えた。
俺たちとゲームをプレーすることが、彼女に良い影響を与えているならうれしい。
「にひ、エレンちゃんそうやって徐々にお姉ちゃんたちを誘惑するつもりだな~! このこの、悪い子!」
リンのヤツも嬉しそうにエレンに絡み、彼女の頬をムニムニしている。
「……うう、むにむに攻撃はやめてください……」
「あと、来月になると思いますが……私、いちどにソチラに行くつもりです」
!! マジか!
「えっ!? マジ!! エレンちゃん日本に来るの!? うおお、大歓迎だよ! アタシんちでパジャマトークしようね!」
突然飛び出したエレンの爆弾発言に、リンのテンションもMAXだ。
リンは、勢いでパジャマトークを予約しているが、エレンのリアルがおっさんだったらどうするつもりなんだろうか……まあ、ここまで付き合っている限り、考えにくいが。
「俺も楽しみにしてるよ、エレン。 良かったら兵庫県を案内しようか」
「はい……でも二泊三日の予定なので、あまり遠出は出来ないかと……メインは”ほわいとでー”のお返し回収ですし」
……や、やけに現実的な目的を聞いてしまった気がするが、せっかく初めて会えるんだ……精一杯楽しんでもらおう!
*** ***
次の週末……俺はエレン来日の下準備をするために、凛と買い物に出ていた。
「う~ん、エレンちゃん、何をすれば喜んでくれるかなぁ……中華街? 高級和牛? 甘いもの好きって言ってたから、紅茶専門店とかいいかも!」
「それか、少し遠出してスキーと城之崎温泉に連れてくのもいいかもな」
「あ、それいいかも! エレンちゃんスキーしたいって言ってたし!」
俺たちはワイワイと話しながら、商店街を歩く。
日曜の午後、商店街は活気にあふれていた。
「……あ」
商店街の途中にある、だだっ広い広場の前で凛が足を止めた。
「は~、アタシたちの母校、こうなっちゃったんだね……」
凛の言葉に、センチメンタルな郷愁の響きが混じる。
そう、以前ここに在ったのは小さな小学校。
俺も凛もここの卒業生なのだが、凛が卒業してすぐ市内の小中学校の統廃合が行われ、小学校も取り壊され公園に生まれ変わったのだ。
「ね、ユウにぃ、ちょっと歩いてみない?」
俺も懐かしく思っていたところだ。 凛の申し出に乗ることにしよう。
校庭をそのまま活用した公園。 端に植えられていたイチョウの木、桜の木は健在だ。
校舎のあった場所はオープンステージになっており、今日は梅まつりが開かれているようで、出店も出ている。
「ん~、結構変わっちゃったけど、鉄棒とかはそのままだね」
「そうだな……たしか凛の逆上がり特訓に付き合ってやったっけ」
思い出の場所に来ると、色々なことを思い出すものだ。
そのまま、俺たちは敷地の端に立つ体育館までやってくる。
「そういえば、凛の学年もタイムカプセルって埋めた?」
ふと思い出し、俺は凛に尋ねる。
小学校の定番イベント、タイムカプセルである。
「うん、埋めたんだけど、すぐに小学校が統廃合されちゃって……結局掘り出してないよ」
「……俺の学年も掘り出してない……なぜなら、気合を入れて隠した奴が転校してしまったので、誰も場所が分からなかったんだ!」
「……なんかそれ、ユウにぃの学年らしいね……」
ちなみに、同窓会で再会したヤツはすっかりそのことを忘れていた……。
「その幻のタイムカプセルを、”超探索”スキルで見つけるの、面白い遊びじゃね?」
「う、少し面白そうかも……でも、そんなもの見つけられるの?」
「他のスキルと違って危なくなさそうだし、ダメもとで試してみよう」
俺は、アプリのスキルスロットから”超探索”スキルを展開すると、スキルをあらわす文字をタップする。
すると、視界がサングラスをかけたように暗くなった。
そして、視界内にあるアイテムが光って見えるようになる。
お、あそこが金色に光っている……って10円玉かよ……確かに、”金色”……お金には間違いないが。
スキルを発動させたまま、色々と試行錯誤する俺。
どうやら、形状をイメージすると情報をフィルタ出来るようだ。
俺が丸っこいタイムカプセルの形をイメージすると、学校のシンボルだった大木の大きな洞[うろ]の奥に緑の光を感じた。
もしかして……俺が洞をのぞき込むと、奥から大人が抱えるくらいのサイズのタイムカプセルが2つ出てきた。
「俺と凛の学年、考えることが同レベルだったってことだな……探す手間が省けたが」
「……なんか切ない……ま、まあいいじゃん! 早く見てみよ!」
俺たちはそれぞれの学年のタイムカプセルを開けると、自分の宝物袋を探す。
自分の袋以外は同窓会に送ってしまうか。
「あ、あったー!」
1学年1クラスの小さな学校だったので、目当てのものはすぐ見つかった。
「どれどれ……12歳の俺は何を未来に残してたかな……ふおっ!?」
袋の中を開けた瞬間、俺は息が止まるかと思った。
……その中には、”竜王黒魔術指南書”、”闇波動零式魔法陣”など、痛々しい文言が書かれた俺の中二病の結晶が入っていたのだ。
小学生のくせに……このクソガキは……これは地下深く封印した上で土に還す必要があるな……。
ふふ、ユウにぃが悶えている……中二病かぁ……同級生男子にもいたけど今見ると微笑ましいかな。
さてさて、アタシの宝物袋は……ガラスでできた宝石に、手作りの人形かぁ……我ながらカワイイな。
あれ、この封筒、なんだろ……ふぐあっ!?
アタシは、ユウにぃと全く同じリアクションを取っていた。
そこには、アタシのかわいい字で、”悠ちゃんと凛の新婚旅行ぷらん:成田りこんがこわいので、かんくうから行きます”と書かれたイラスト付きの紙切れが入っていた。
ふおお……純粋だったはずのアタシよ……なんでそんなに具体的なの……いっちょまえに反抗期だった中学時代のアタシは、この気持ちを脳内から消し去っていた。
また最近意識しだしちゃったから……ぐおおお! これは、封印! 封印です!
まったく同じ格好で悶える二人を、近所のおじいちゃんおばあちゃんが微笑ましい表情で見守るのだった。




