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第4-3話 対決! 銀行強盗

 

 2月14日夜、市内繁華街で突如発生した銀行強盗事件。


 俺と凛はその現場となっている銀行の、1階上のフロアにある店の中にいた。


 凛の話をまとめるとこうなる。


 人質になっているシオリとは、凛の同級生で友人。


 本日朝、彼氏持ちのサッカー部主将に本命チョコを渡そうとして大爆死、傷心の彼女が繁華街方面に歩いていくのを、凛が見かけたらしい。


 おそらく、ケーキバイキングのやけ食いでもしようと、お金を引き出すために銀行のキャッシュコーナーに行き……銀行強盗に出くわしてしまったようだ。


 な、なんと不憫な子なんだ……思わず涙が……。


「……ていうか、それ半分くらいお前のせいじゃね? 爆死確定なこと、教えてやれよ……」


「い、いやぁ……バレンタインデーまでに別れることもワンチャンあるじゃん? あまりに真剣だったから言い出せなくて……」


 まったく……だが凛の友達が捕まっているとなると、このまま帰るのも後味悪いか……。


 どうせしばらくビルから出られなさそうだし、”バグスキル”が役立つ場面もあるかもだし……俺と凛は、しばらく現場を静観することにした。



 ***  ***


 ふむ……SNS情報と、表から聞こえてくる警察の声を総合すると……


 犯人は二人組……簡易なプラスチック爆弾で武装……「金を持ってこないと、人質を爆弾で吹っ飛ばす!」と脅しているようだ。


 非常口を含め、すべての入り口をロックさせ、1階ロビーに凛の友人であるシオリを置き、盾にしている。


 悪いことに、ここは繁華街で建物が密集しており、別のビルからの狙撃は難しい可能性があるとのことだ。


 先ほどから外では、警察の説得が続いている。


 ……上記の情報はSNSで流れている自称専門家のモノなので、どこまで当てになるのかは分からないが……。


 むむ……せめて現場の状況が分ればもっと対策を立てることもできるのだが……流石にいきなり”瞬間移動”でシオリのそばに転移するとか、無謀だろう。


 犯人が何かの武器を持っていることも想定される……警察ならもっと状況を把握しているだろうが、俺たちが聞いて答えてくれるわけがない。


「うう、シオリ……心配だなぁ……あの子昔からツイてないし……犯人は前科持ちのジジイ二人らしいから、アレな目に遭わされるかもしれないし……」


 友人の身を案じる凛……ん? 犯人はジジイなのか? それなら……


「凛! その友達の……シオリちゃんは[探検者になろう]をプレイしてないか?」


「うん……エンジョイ勢だけど、遊んでるって……あ! ユウにぃ、もしかして!」


 そう……犯人がジジイとしたら、[探検者になろう]の詳細は知らないはずだ!

 俺たちは[探検者になろう]アプリを起動すると、その場でゲームへダイブした。



 ***  ***


 今俺たちがいるのは[探検者になろう]のホームゾーン。


 ゲーム開始時に移動するトップ画面のようなもので、自分たちの好きなようにカスタマイズできる。


 俺たちは先日ゲーム内で購入した高級ソファーに座ると、詳しい情報を得るための秘策を実行する。


「にひひ、[探検者になろう]は、スマホを身体から1メートル以内に置いていればダイブ可能……手足を縛られていても、シオリがスマホを取り上げられてなければダイブ可能ってことだね」


「ああ。 犯人はどうせジジイのガラケー世代だ。 手足を縛っとけば外と連絡取れないと思ってるだろう……俺たちはそれを利用する。 リン、シオリをここに招待だ」


「オッケー!」


[探検者になろう]には、固有クランとは別に、ワンタイムで他プレーヤーを招待し、臨時パーティを組む機能がある。

 相手のゲームIDを知っていれば、ホームゾーンに招待できるのだ!

 そこで詳しい情報を聞ければ……。



 ほどなくして、”シオリ”がホームゾーンにダイブしてきた。


「うう、リンちゃん……怖いよぅ……なんでウチばっかり……ああでもSNSのフォロワーが爆伸びだよ……ふふふ」


 シオリは、リンより少し背が低い。 

 艶やかな黒髪をおかっぱにした眼鏡っ子。

 気弱そうな顔つきだが、なるほど……どこかツイてなさそうな雰囲気を漂わせている。


 彼女は現実逃避なのか、SNSフォロワーが増えたことを喜んでいるようだ。


「うわやば、シオリが闇落ちしてる! しっかりしてシオリ! サッカー部の主将はおっぱい星人らしいから、シオリが悪くてフラれたんじゃないよ!」


「……リンちゃんそれフォローになってない」


 どこかずれたフォローをするリン。

 そうだ、犯人の情報を聞かないと。


「シオリちゃん、だったね。 現場と犯人の情報を教えてほしいんだけど」


「む、地味だけどほんのりイケメン? くく、最近リンからリア充感が漂ってるのはこのせいだったのか! ウチをダシにさらに進展しようなどと……!」


 あのー、もしもしお嬢さん? 駄目だ更に闇落ちが進行している……。


「もう、すねないでよシオリ……なんとかあなたを助けるために動いてみるから、情報を教えて」


 リンの説得に、ようやく自分の置かれた状況を思い出したのか、細かな状況を教えてくれるシオリ。 なるほど、頭のいい子のようだ。


 まとめると、銀行内の状況は以下の通り。


 シオリはロビーの中央にある柱に縛り付けられており、足元に爆弾が置かれている。

 形状から推測するに、紙粘土くらいの大きさのプラスチック爆弾に信管を直接刺し、コードで起爆装置に繋げているようだ。


 犯人の一人はシオリのそばにおり、外の動きを見張っている。

 もう一人は外からも見えない位置におり、警察との交渉を担当。

 銃器の所持は無し。か。


 これだけの情報が分れば十分だ。

 これを警察に共有して……


 やはり俺たちが手出しするのは危険だ……俺はそう判断しようとしたのだが……


「あ、これ……まずい、かも」


 シオリの顔が青くなり、俺たちにスマホから拾った音声を共有してくれる。



「ああ! クソポリ公ども、もう待てへんわ! どうせ今度捕まったら終身やし、このまま自爆して犯罪史に名前を残してやる! みてみぃ、本気やぞ!」


 やばい! 犯人が自暴自棄になってる!? もはや一刻の猶予もない!


「リン! いくぞ!」


「ユウにぃ、分かった!」


[探検者になろう]にダイブしてたからか、無意識にゲームの延長でイケるんじゃね? と思った俺は、リンに声をかけると、”瞬間移動”スキルを展開、ゲームのログアウトと同時に”瞬間移動”を発動させた!


 シュン……


 一瞬の発動音の後、俺たちは1階の銀行ロビーに転移していた。

 あ、やっべ! 思わずやっちまった……だが、こうなったらやるしかない!


「なっ!? なんやこいつら、どっから来た!?」


 突然現れた俺たちに驚愕するジジイA。


 爆弾は、アレか! あのタイプは起爆装置を壊してしまえば大丈夫なはずだ!


「ち、もう自爆したる!」


 焦ったジジイAが起爆装置に手を伸ばす……くっ! ここからでは届かない!?


 そうだ、雷撃魔法だ! とっさにもう一つのスキルを思い出した俺、アプリのスキルスロットから”雷撃魔法”をタップする。


 ……あっ、押した後でなんだけど……もし、すげー威力だったらどうしよう……なるべく威力抑えめで頼む……!



 バチイィン!



 次の瞬間、一条の稲妻が走り、爆弾の起爆装置を直撃……起爆装置の回路を焼き切った!


「はっ!? なんやそれ!?」


 動揺のあまり、一瞬動きが止まるジジイA。

 いまだ!


「凛!」


「任せて! ふっ!」


 ガッ……!


 俺の掛け声に合わせ、凛は俺の想定よりはるかに速い動きでジジイAの懐に飛び込むと、当て身を加えて吹き飛ばす。


「アレ?」


「へっ?」


 間抜けな声が俺たちふたりから漏れる。


 まずは動きを止めるつもりで放たれた凛の掌底は、ロビーの端までジジイAを吹き飛ばしたのだった。


 目を回して気絶するジジイA。



「と、突入!」


 この様子を監視カメラで見ていたか、慌てた様子の警察が突入し、ジジイBも拘束。


 バレンタインの夜を震撼させた強盗事件はこうして幕を閉じたのだった。



 ***  ***


 もうすぐ日付が変わる時間……ようやく警察の事情聴取から解放された俺たちは、最寄り駅からウチまで続く道を歩いていた。


「はあぁ~、疲れた……めっちゃ怒られたね」


 結果的に俺たちの行動が事件解決のきっかけになったとはいえ、流石に無謀すぎるとこってりと絞られてしまった。


 最終的に銀行の皆さんがフォローしてくれ、お咎めなしとなったのだが。


「あ、でもほら……レイドボスのHPはめっちゃ減ったよ!」



[レイドボス:ニーズヘッグ(残りHP1,807億3,201万,1000)]



「結局これが何の意味があるか分からんしなぁ……このペースでも、あと9回銀行強盗を防ぐのか? 命がいくつあっても足らないぞ……」


「そうだよね~、せめて胸が大きくなる特典とかあればいいのに」


 なんだそのピンポイントな特典……ただいろいろ気になることがあった。 あとで確認しないとな。


 それにしても……


「あー、腹減った! 4時間近く拘束とか、聞いてないわ!」


「ふふっ、ならバレンタインの”チョコブラウニー”食べようよ!」


「……ん、いいのか?」


「せっかくなら、バレンタインデーのうちに食べてほしいじゃん! はやく、日付が変わっちゃう!」


 ふふ……そうだな。


 俺は凛にもらった紙袋からプレゼントのチョコブラウニーを取り出すと半分に割り、片方を凛に手渡す。



「ん~、美味し! うまくできてた~アタシ天才かも!」


「レシピ通りに作ってまずくはならんだろ……でも美味いな、コレ」


「でしょ!」


 連れ立って歩く俺たちを、満月の光が優しく照らしていた。


【読んで頂き、ありがとうございます!】


バレンタイン騒動もこれでおしまいです。


ブックマークや☆☆☆☆☆評価で本作を応援していただければ、もの凄く励みになります。

今後ともよろしくお願いします!


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