表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/76

第一六話 「ランツィア村」02

 賑やかな朝食を済ませてからシュンはギルドへ、子供たちは学校へ、マヤたちは施設の仕事へと向かった。



「お待たせしました」

「よしっ、行くか」


 ギルドで一人、椅子に座ってシュンを待っていたジョルジュは、そう言って立ち上がる。


「はい」


 そして二人は森への道を歩く。

 シュンは試しに【探査】を使うが、さすがにまだ何も感じない。


「他は警戒の配置に就いている」

「すいません」


 シュンは一人だけ遅く来て、ジョルジュたちを待たせてすまなく思った。


「いや、いいんだよ。施設にはこちらが申し訳ないくらいだ。昨日の予定通りなら自由に動いてもらって構わない」

「早く終わらせるか……」


 その言葉を聞いてジョルジュは苦笑した。

 サンドリオで戦っていたジョルジュは最強が何かを知っている。


「ああ、遠慮は無用だ。早く終わらせよう」


 今度はシュンが苦笑する番だ。


「はい」


 森の中に入りシュンたちは周囲を警戒する。


「飛んで行くか?」

「いえ、【飛行】のスキルは帰りに取っておきます。鉄則ですから」

「ふふっ、堅実だな。それでいいぞ」


 ジョルジュもまたシュンの師匠であった。


 例えどんなに弱い相手が目標でも、どのような不測の事態に遭うか分からない。

 常にスキルを最高の状態に保つ、それが冒険者のルールだった。


 シュンが先頭になりジョルジュが後方を警戒して北西へと進んだ。


「いましたね。近いですよ。ヤツはこっちを安く見て接近中のようですね」

「運が悪かったな……。いや、やはり街に増援を求めるべきだっか。俺の判断ミスだ」

「……」


 事情を知らないシュンには何とも言えない。

 相手が北西いたのは確かに運が悪かった。

 街のギルドから増員を求める方法も確かにある。


「このまま直進すれば接触します」

「分かった」


 外周にいるベヒモスを狩るサンドリオでの戦いと、本能で人を襲おうと、村や街に接近するベヒモスとの戦いは違うのだ。


 村に近づけば、いずれ警戒線に接触して袋叩きに遭うのだが、それでも運が悪ければ、村に犠牲が出かねない。

 やっかいな戦いでもある。



 木々の間に見慣れた不気味が見え隠れする。

 相手はお馴染みのバルトアンデルスだった。


 人体の胴体と頭部は遺伝子組替えの果て、人間のサンプルが混ざった結果だと言われている。


 顔は人間なのだが、その表情は明らかに人ではなくて悪魔的とすら言えた。

 感情のない感情的とでも言える顔つきだ。


 それは人間が持つ同種同族殺戮衝動の凝縮とでも表現すればいいのか? 元がどんなサンプルだったか想像がつく。


 そんな人間の一部にヤギと鳥が混合した足、魚のヒレの尾、背中には小さな鳥の羽。

 開発者のセンスを疑う醜悪さだ。


「俺たちだけでは苦戦する相手だったな――」


 ジョルジュはシュンがいた幸運を喜んだ。このサイズなら、ベヒモスとしての力は上の下程度である。


「――むっ……」


 そしてジョルジュとシュンも、このバルトアンデルスの手と爪にベットリと人間の血糊が付き、乾き固まっていのに気が付く。


「こっ、こいつっ!」


 それはこの村に来る前の戦果だ。シュンの血は逆流する。


 点々と位置を変えながら人間を襲い、次はランツィア村に狙いを定めていたのだ。

 それが遺伝子に刻み込まれたベヒモスの本能だった。


 シュンは【移動】で一気に肉薄しつつ剣を抜く。

 刃に【切断】、切っ先に【衝撃】を掛けて剣を振るった。


 バルトアンデルスは殺戮衝動で、爪を立てた腕を振るうがシュンの作った【障壁】に激突し、【拘束】が動きを止めた。


 数日(スキル)の行使を休んでいたシュンは、まるで基本を思い出すようにして、攻撃を繰り出す。


 胴体を真っ二つにされた上の下の個体は、そのまま地面に崩れ落ちた。


 ベヒモスもスキルを使うが、戦闘種は自己のスキルでそれを押さえ込みもする。


「昔を思い出したよ。シュンは子供の頃から、攻撃と防御のバランスが良かったな」

「この辺りでも色々と教えてもらいましたよね?」

「いや、俺はシッドの戦い方を思い出しながら、それを伝えただけだ」


 ジョルジュはそう言って、バルトアンデルスの頭部に剣を突き立て希少水晶(レアクリスタル)を回収にかかる。


「はい……」


 戦闘種の(スキル)の源は、受継がれる遺伝子そのものだ。

 父、シッドのコンテナの種類、容量はシュンに再現されるはずと、ジョルジュは考えていた。


 そして力が備わる将来を見越してシュンを鍛えていたのだ。


「さすが強力ベヒモスは小物とは違うな……」


 取り出したキラキラと光る水晶(クリスタル)を木漏れ日にかざす。


 街のギルドに持って行けばそれなりの金にはなるが、この村の冒険者が使用する為に備蓄をする決まりになっていた。

 もちろんシュンに依存はない。


「一応、広範囲に飛んで索敵します」

「頼む。俺は仲間をまとめて、先にギルドに戻る」

「はい」


 シュンは【飛翔】で木々の上へと浮き上がった。

 ここからが最強称号の本領発揮だ。


 【探査】を最大限に使い、【飛行】で森の上空を西から東へ蛇行しつつベヒモスを探る。


 幸い他に大きな脅威はなく、シュンは何匹かの小物を狩った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ