第十三話 「戦いが済んで」03
「帰ろうかなあ……」
病院からの帰り道、あの二人、ジュリィアーナの優し気な眼差しと彼女に対するジェンヌの態度を思い返し、シュンの頭に帰郷の二文字が浮かんだ。
ベヒモスの出現が少ない今の状況なら、長期間留守にしても問題はないだろう。
なぜだか急に里心がついてしまったと、シュンは思った。
夕方、フィオーレを手伝っているとブレイソン、そしてアルバー、カノーアがシュンに気を使ってか顔を出す。
客が引け始め、皆は自然と同じテーブルに集まった。
シュンも少しは慣れてきた赤いエプロンを外して席に着き、レイキュアはエプロン姿のまま隣に座る。
「アルバー、ビジネスの件はどうだ?」
「時間を見つけて街の不動産を見て回っています。目をつけた空いている物件が売りに出されているか、ギルドに行って確認たり……」
「そうか」
「良い物件なら売りに出されていなくても、持ち主に交渉したいですね」
「ああ、頼むぞ」
アルバーに任せておけば安心だろうと、シュンは頷いた。
「カノーアも一緒に見て回っているんでしょ?」
「はい、表通り以外はあまり歩いた事がなかったので面白いです」
「うん、よろしくね」
スカーレットも加わるビジネスになるので、レイキュアも真剣に考え始めているようだった。
「ブレイソン、若い奴らの仕事ぶりはどうだ?」
「デス・キャニオン、大進行の大型クエストをこなして皆、随分と成長しましたよ」
「そうか」
チーム全員を一人で率いて戦っているブレイソンは責任重大だが、上手くこなしているいるようだ。
「スカーレッドもそうです。ランツィアと合同で仕事をするようになってから皆、真剣に緊張感をもって戦っています」
「そうそう、私の発案よ!」
カノーアの言葉に、レイキュアはあくまで自分の手柄と言う。
「より慎重に、より確実にベヒモスを仕留める。
俺たちがチームを組んでいる意味をよく考えてくれるようになりましたよ」
ブレイソンが更に付け加えた。
エスプロジオーネや他のチーム、サービス部隊、西の冒険者たち、彼らの戦いを間近で見れたのは良い経験になったようだ。
シュンは目を細めて、話を聞きながら決心した。
「気が付けば若いヤツらも育ってきたな。俺は休暇をとってしばらく里帰りするよ」
「えっ! どれ位くらいですか?」
ブレイソンが驚いた表情で声を上げる。
「一カ月ぐらいだなあ……」
「そう……」
レイキュアはため息をつくように呟く。
「ついてはその間、ランツィアのリーダー代行をレイキュアにお願いしたい!」
「「「え~~っ!」」」
一同は声を上げる。
レイキュアは驚きながらも表情はまんざらでもない。
「まあ、仕方ないわねえ。たるんでいるランツィアをビシッと鍛えてやるわ」
「ほどほどにしてくれよ」
「私はシュンみたいに優しくないから。隊長兼リーダーね。重責よ!」
「まあまあ、レイキュア。実務はアルバーとブレイソンに任せて、ランツィアの顔として睨みを利かせてくれ」
「分かってるわ!」
このメンバーに任せておけば安心だ。
シュンはこの三年間、ガムシャラに戦ってきた。
ここで一つの区切りをつけるのは良いかと思った。




