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第十三話 「戦いが済んで」02

 翌日、シュンは散髪に行く。

 ここの主人は元冒険者で、今は剣をハサミに持ち替えて腕を振るっている。


 戦闘種のコンテナは歳を重ね人が体力や筋肉量が落ちるのと同じで、ある一定のピークを過ぎればそれは減少する。


 シュンの師匠、ジョルジュのように、日々の戦いと鍛錬でそれを遅らせる事はできるが、それにも限界、限度があった。


 あまり考えたくはない話だが、誰でも歳をとった後の身の振り方を考えなければならないのが現実だった。



 散髪が終わり花屋に行って適当に見繕ってもらう。

 以前ジェンヌから貰った見舞いは果物だったので、同じ物を返礼でとも思ったが、アルバーがカノーアに花束を持って行ったのを思い出した。


 シュンは病院に向かった。

 この北城塞グロッセナは総合病院が一つあるだけだ。


 受付でジェンヌの名前を告げて部屋番号を聞き、シュンはガラでもない花束を抱えて階段を上がる。


 三階の個室の前に立ちノックをすると、意外にも中からは女性の声が聞こえた。


 ドアを開けるとベッドの上にはジェンヌが寝ている。

 傍らの椅子からロングブロンドで巻髪の、一見して身分が高いと分かる女性が立ち上がった。


「なっ、なんだ! 何しに来やがった?」

「御挨拶だな。前の見舞いのお返しだよ」

「まあ、ジェンヌ様のお友達ですか?」


 そう問われて、シュンは一瞬言葉に詰まった。

 何と答えたものか――。


「共に戦う仲間です」


 一応、嘘ではない。持ってきた花束をその女性に差し出す。


「綺麗なお花ですね。ありがとうございます」

「ちっ、ジュリィアーナ、花瓶があっただろう。活けてくれ」

「はい」


 ジェンヌの言葉に女性は花瓶を持って、部屋を出て行く。


「あの(ひと)は誰だ?」

「婚約者だよ」

「そう……」


 大手魔の企業貴族なのだから幼い頃からの許婚(いいなずけ)がいてもおかしくはない。


 シュンはベッド脇の丸椅子を引いて腰掛ける。


「何しに来やがった?」

「だから、見舞いだって。他意はないよ」

「ふんっ!」

「無理してたんだって?」

「てめえみたいなラッキーマンに何が分かるっていうんだっ!」


 ジェンヌはベッドに寝たままシュンを睨みつける。


「まあ、それは否定しないけどな……。でも大進行じゃあ、こっちもボウズだったよ。ゼロポイントさ」

「てめえが三位で、俺様が四位だぞ。くそっ!」

「気合ばかり入れたって空回りするだけだろ?」

「分かったような事を偉そうに……」


 暫しの間を置いて、ジェンヌは続けた。


「スケラーノには俺の仲間も三人()られている。それを横からかっさらいやがって!」


 そう言えばそうだったとシュンは思い出した。

 シュンはそれであの時、敵を取った自分への見舞いに来たのかとも思った。


「あいつは俺にとっても因縁の相手だったよ」


 ジュリィアーナが花瓶を抱えて戻って来たので、話は中断された。


 彼女はそれをベッド脇の台に置いて、数種の花の中から一凛を手に取る。


「このお花の名前は何て言うのかしら?」

「フレージアだよ。魔境に行けばいくらでも採れる」

「まあ、ジェンヌ様が戦っている場所に咲いているのですね」

「安く上げやがって!」

「酷いなあ。ちゃんと買ってきたよ」


 花屋の知り合いの冒険者がベヒモス狩のついでにでも摘んできたのだろう。

 やりとりを聞いていたジュリィアーナがクスリと笑う。


「俺がこうやってベッドの上で寝ている間も、ディボガルドのヤツらはポイントを伸ばしているんだぜ! 何を呑気にしてやがる?」


 ジェンヌはベヒモスに吹き飛ばされベッドに横になりながらも気を吐く。


「まあ、そう言うなって……」

「ジェンヌ様は怒りますが、こんなに長く二人で過ごすのは久しぶりです。怪我か治るまでゆっくりして下さい」


 ジュリィアーナが優し気に言う言葉に、ジェンヌは明後日の方を向いて無言だった。


 この気品漂う婚約者の前では、さしものジェンヌも何も言えないのだろう。


「それじゃあな。お大事に……」

「ありがとうございました」


 二人の邪魔をしては悪いのでシュンは早々に席を立った。

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