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第十三話 「戦いが済んで」01

 今回の一件でギルドは大量の希少水晶(レアクリスタル)を手に入れた。


 レアクリスタルは何かの原料になり加工されているとの噂がある。

 ギルドは無闇やたらに放出せず、マーケットの値は安定していた。


 シュンのランクは一気に三位に転落した。

 ジェンヌは四位で、一、二位はディボガルドの常連ランカーだ。


 ディボガルドの二人はこのクエストで順調に獲物を仕留めたようだった。



 大進行の反動か、北の中程度のベヒモスは減っていた。

 食うに困るほどではないが、冒険者たちは大進行の報酬を受け取り、のんびりと仕事をやっている。


 そんな中、シュンはスカーレッドの酒場を手伝う事になった。

 レイキュアからの依頼があったのだ。


「俺がかあ?」

「昔はよく手伝ってくれたじゃないの」

「まあなあ……」


 確かに三年前は一宿一飯の恩義で時々店を手伝っていた。


「ビジネスの世界に出るのだから勉強になるわよ」

「分かった、分かった」


 ベヒモスが減っている現状では、シュンがベヒモス狩に出てもたいしてやることもなかった。

 外の仕事はブレイソンに任せていても問題はないだろう。


 アルバーとカノーアは二人で組んでビジネスの件で動いていた。

 自分だけがブラブラしていると感じてはいたので、見かねたレイキュアが声を掛けてくれたのかもしれない。



 翌晩、フィオーレには赤いエプロンを付けたシュンがいた。


「シュン、髪が長くなったわね。伸ばすの?」

「いや、そんなことはないよ」

「なら、そろそろ切ったら?」

「そうだな。分かった」


 食べ物商売なので、レイキュアは気を使っているのだろう。

 冒険者とはいえ、店に出るなら身だしなみには注意しなければならない――、らしい。


「ほら、お客さんよ」

「いらっしゃい……」


 愛想のない顔でシュンは二人連れの客を出迎える。

 声を掛けるとその客たちは一瞬固まった。


「お好きな席にどうぞ……」

「はい……」

「どっ、どうも……」

「ん?」


 二人の男はペコペコとシュンに頭を下げた。



「どうしたんだ? あの客は」


 シュンはカウンターに戻って小声でレイキュアに聞く。


「あれよ、チーム・エスプロジオーネの戦闘員よ」


 レイキュアも小声で答える。


「えーっ、そうか、確かに普通の人だな。違いすぎだろ……」


 ノーメイクだと、当り前だが見た目はごく普通の若者だ。


 待ち合わせだったのか、少し遅れてヘッドのセバスティと、副長のグレゴリーも素顔で登場した。


「いらっしゃい……」

「なっ、なんだ、シュン。何をやっているんだ?」

「転職だよ」

「はあ?」

「訳あって手伝いさ」

「はははっ、そうか最強の接客をしてくれよ」

「普通にやるさ。ビールでいいか? 四つだな」

「おうっ!」


 シュンはビールジョッキを四つエスプロジオーネのテーブルに運んだ。


「シュンは呑気でいいなあ。ウチも見習いたいぜ」

「まあな、のんびりやってるよ」

「いいか、お前たち。これが本物の最強の姿だ。目先のポイントに惑わされるよ」

「「オスッ!」」


 セバスティは二人の若手に説教を加える。


 エスプロジオーネの戦闘員たちの中にも、目先のランクに拘っているヤツらがいるのだろう。


 シュンには分かる。

 セバスティは良い意味で呑気だと言っているのだ。


「それはそうと、ジェンヌの話は聞いたか?」

「いや、何かあったのか?」


 シュンは何だか久しぶりにジェンヌの名前を聞いたような気がした。


「ああ、あばらにヒビが入ったらしい。軽症だがな。入院しているよ」

「そうか、怪我をしたのか……」

(やっこ)さん、噂だと大進行じゃあずいぶんとムリしてたみたいだからなあ……」


 セバスティはビールジョッキをあおってから言う。


「あっちにはやっぱり、高ポイントのベヒモスはあまり出なかったか……」

「ああ、西の先に大物を見つけて一人で突っ込んだんだとか。その大物に吹き飛ばされたそうだ。あそこは副官の二人がしっかりしているから、大事にはならなかったけどな」

「ああ」


 シュンは頷きながら見舞いにでも行ってみようかと思った。


「ところでセバスティ。今の姿の方が良いんじゃないの? それで戦えば」


 当然ながらセバスティも、あの不気味なメイクを施してはいなかった。


「そう言うな。スポンサーからの要望なんだよ」


 仕事をしている時とは違い、今のセバスティはなかなかの男前だった。


「シュンも今の赤いエプソンを付けたまま戦えばどうだ?」

「ははっ、ベヒモスにモテモテで大変かもな。スポンサー優先の事情はどこも同じか……」

「まあな」


 シュンはいつかランツィアにも、何かとんでもない要望が来るのかもしれないと思った。


「ランツィアもこんなメイクをして戦いに出てみたらどうだ? ウチのスポンサーに紹介してやるぞ」

「勘弁してくれ。それはスカーレッドに言ってくれよ」

「何よ~~っ、シュン!」


 振り向くと後ろからレイキュアが睨んでいた。

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