第十二話 「西での最強同志」04
翌日の戦いは、北の冒険者は北門から、東の冒険者は南門から、そして西の冒険者たちは西の最強が率いて正門から出撃した。
シュンはシーザリオと共に西門の城壁上にいた。
戦場を俯瞰しながら急所で暴れ回る為だった。
「今日も雑魚のベヒモスばっかりだなあ~」
「かなり数は減ってきたけどな……」
シュンは眼下の戦況を睨みつつ、どこで戦おうかと考える。
「あ~あ、退屈だしちょっと行ってくるよ」
シーザリオはそう言って浮かび上がり、ベヒモスたちの上空へと飛び出す。
地面に発生した小さな旋風が敵を巻き込みながら拡大し、シーザリオはその巨大竜巻の目の中に姿を消した。
【衝撃】と【切断】の暴風が荒れ狂いながら、ベヒモスの帯を西へ西へと縦断する。
切り裂かれたベヒモスがボロ布のように中を舞い、暴風圏の外に飛び散る。
「あれが東の最強の力か……」
シュンはやや南門が苦戦と感じ、いつものようにつむじを複数作って上空から操りベヒモスを殲滅する。
次は北門に取って返し仲間を援護した。
シーザリオの竜巻は更に拡大して、今は蛇行している。
どれほどのスキルをコンテナに抱えれば、あれだけ力を持続できるのか?
シュンは持久戦とばかりにスキルの力を抑えつつ、剣の先から【衝撃】と【切断】を合わせて【移動】で打ち出す。
ピンポイントで脅威度の高いベヒモスを討ち倒していった。
シュンは戦いながらおかしな違和感を覚えた。
突然、女性のソプラノが戦場に響き渡る。
どこかからか聞こえるのではなくて、周り全体の空気が高音に震えているような感じ。
それはセイレーンの歌声だった。
「これがセイレーンの歌か……」
若き日のジョルジュ、故郷におけるシュンの師匠が昔、東城塞で戦っていた時に一度聴いたと言っていた。
ベヒモスたちは潮が引くように森へ向かい帰って行く。
シーザリオは何かを察したのか竜巻を止めて西へ向かって飛び去った。
セイレーンの現象が何なのかはよくは分かっていない。
ただそれはベヒモスを操り、動かす力だと言われていて、目の前の現実もそれを証明していた。
セイレーンは特殊なスキルを持つ上位種のベヒモスだとの噂もある。
「シーザリオめ……、確かめに行ったのか?」
シュンは引き上げるベヒモスたちに追い打ちを掛けながら一人呟いた。
シュンとシーザリオの二人は今夜も同じ高級レストランで食事をして、ワインを飲んでいた。
「セイレーンに会いたかったなあ」
「なんであっちに飛んだんだ?」
「声が聞こえた方向だったからさ」
シュンは首を傾げる。全く分からなかっからだ。
「【聴覚】のスキルだよ」
そんなスキルをシュンは初めて聞いた。
「大した力は持ってないけどね。シュンも変わったスキルを持っているね」
「分かるのか?」
「分からないよ。何となく感じるだけ」
「何となくか……」
「暗殺者のスキルだね」
スケラーノの意味は暗殺者だ。
シュンが未だに分からない謎のスキルだった。
「他の城塞で仕事ができないかってギルドに話しているんだ。北にも行ってみたいな」
シーザリオは屈託なくそう言う。
依頼もなくやって来られては冒険者たちにひんしゅくを買うだけだ。
「勘弁してくれよ。俺たちの仕事がなくなっちまう」
皆は生活がかかっているのだから、そんな感情は仕方がなかった。
「デス・キャニオンのクエストにも行きたかったなあ」
「東のクエストで十分だろ。あれだけポイントを稼いでるんだから……」
「まあねえ……、ポイントなんかに興味はないんだけどね」
「北にだってたいした敵はいないさ。それとも一人でデス・キャニオンに入るって申請してみるか?」
シュンは冗談のように言ってみる。
「やったけど許可は出なかったよ」
「本当にあそこに一人で行くってか? 呆れたやつだな……」
ジェンヌのギラギラした最強に対する執念や、ディボガルドの圧倒的な強さから感じるカリスマとは全く違う最強の姿に、シュンはこの世界は奥が深く様々な人間が生きていると思った。
「おまえは変わった最強だよ」
「シュンも最強っぽく見えないよ。変な冒険者だなあ……」
シュンは笑うしかなかった。シーザリオから見れば自分も変らしい。
翌朝、シュンと北の冒険者たちは帰途についた。
西城塞の北門を出発してしばらく歩くと、ベテランたちのサービス部隊が馬車と馬を引いて、こちらを迎えに来る姿が見えた。
西城塞ラヌゼルダの救援クエストは、一人の犠牲も出さず無事に終わった。
明日からは北の城塞グロッセナで、いつもの戦いの日常が待っているはずだった。




