第十二話 「西での最強同志」02
シュンとレイキュアは並んで先頭を歩く。
西門が近づくと、同じようにこちらに向かって来る冒険者の集団が見えた。
「シュン、あれって……」
「東城塞の冒険者たちだ。奴らも中に入ったんだな」
シュンは一歩前に出た。
大量のベヒモスが蠢く西門城壁の上でシュンを先頭にした北の冒険者たちは、東の冒険者たちと対峙する。
東の先頭は意外にも、まだ幼い面影を残す童顔の美少年だった。
長いブロンドにエメラルドのような瞳、微笑をたたえた口が開かれる。
「君が北の最強?」
「ああ、シュンだ」
「そう……、僕の名はシーザリオ。東で冒険者をやっている」
シュンは目を見張った。
サンドリオのギルドで見た、ランキングボードで断トツのトップに君臨していたあの名前だ。
「東の最強か……」
「まあね」
シーザリオは少年のような表情で興味がなさそうに言う。
シュンの背後から呟くように声があがった――。
「こいつが最強? 子供じゃないのか?……」
「東の最強は北や西よりも、とんでもないポイントを稼いでいるぜ」
「ああ、信じられん」
「冗談なのか?」
――など思わず率直な感想が漏れる。
「何だと?」
「北のへたれたちが何を言ってやがる」
「バカにしてんのかよ!」
東の冒険者たちも黙ってはいなかった。
更に北も反撃する。
「へたれだと?」
「ふざけやがって」
「こいつら何様のつもりだよ」
大量のベヒモスを前にして呑気な奴らだと、シュンは苦笑する。
「止め止め。仲間なんだから仲良くしなきゃ」
「その通りだ。あのベヒモスを見ろ」
シーザリオがとりなし、シュンも同調して眼下に広がるベヒモス群れを指差す。
「俺たちの敵はあいつらさ」
「……」
「……」
「シュン、飲みに行こうよ! 二人でさ」
しばしの沈黙を破り、唐突にシーザリオは言った。
しかも他に仲間がいるのに二人でときた。
「こんな時にか?」
「最強同士で話がしたいなあ」
何かを言いたそうなレイキュアが黙っている。
シーザリオの取り巻きたちも同様だった。
最強同士と言われれば他の人間は黙るしかなかった。
「ああ、行くか」
「うん!」
ギルドの職員に促され、全員で城壁を降り、北と東の冒険者たちは用意された宿舎に案内される。
南城塞の中は意外と落ち着いていたが、人通りは少なかった。
中央都市サンドリオ避難している市民もいるのだろう。
メインストリートに面して並んで建つ中級以上のホテルの一棟が北に、もう一棟が東の冒険者用だと説明される。
「それじゃあ、後でね。僕がそっちのロビーに行くよ」
「ああ、シャワーを浴びてから降りるよ」
「そうだね。じゃあ……」
シーザリオたち東と分かれてシュンたちはホテルの中に入る。
こんな時だから観光客もいないので確保できたのだろう。
冒険者などにはもったいない綺麗なホテルだった。
「あらっ? 羨ましいわね。シュン」
最強の称号を持っていたシュンには最上のスイートが割り当てられ、チームのリーダー格にはそれなりの大きさの個室、ベテラン冒険者には普通の個室。
新人レベルには相部屋などが割り当てられると、ギルドの職員が説明する。
「ああ、レイキュア、交代してやるよ」
「いいの?」
「俺は寝れればどこでもいいさ」
「悪いわね」
レイキュアは、こんな事ではシュンには遠慮をしない。
「それじゃあな、皆の面倒を見てやってくれよ」
「分かった。任せて!」
シュンはシーザリオと出かけるので、皆の食事には付き合えない。
東の連中も街の酒場に出るのでトラブルにでもなったら問題だ。
部屋に入って剣と防具を外し、シャワーを浴びて服を着る。
これぐらいのホテルならば、地下にボイラーとポンプがあり、少しばかりの温水ならば使えるのだ。
着替えなど持って来てないので、シュンは戦闘服姿のままだ。




