第十一話 「西への大進行」03
北と西の中間地点より西寄り、丸い巨石が点在する場所にキャンプが設営された。
万が一、大進行しているベヒモスの群れの一部が北に向かった場合の防衛の拠点にもなる場所だ。
シュンたちは馬を降りてここから徒歩で進撃する。
「とんでもない数だな……」
シュンは改めてそう思い呟いた。
「あれを追い払えるのかしら?」
レイキュアも水平線に広がる、ベヒモスの蠢く影を見る。
「さあな? やるしかないよ……」
全員でひと塊になって西へと向かう。
機動力のあるランツィアが群れを離れてこちらに来る単独のベヒモスを狩りつつ進んだ。
いよいよ敵の本隊が近づき、それぞれのチームは得意の陣形を組む。
スカーレッドはランツィアと合同でかたまり、スカーレッドは後方へと配置した。
以前、雨の日に使った鏃の陣形で進む。
今回も同じ配置となった、チーム・エスプロジオーネの連中はいつものように盾をかざして今度は円陣を組みベヒモスの群れに突入する。
シュンたちはベヒモスの軍勢の、主に外延部で戦った。
相手は小物ばかりだが数が多い。
皆は休む間もなく剣を振るい、レアクリスタルを取り出す暇もない。
シュンたちが倒したベヒモスを別のベヒモスが捕食する。
彼らはたとえ同種であっても共食いし、人間を食うベヒモスいる。相手のレアクリスタルを噛み砕き、自身の力とし進化し強さを増す。
それは体内にレアクリスタルのスキルを取り込み、強くなる冒険者たちと同じだった。
シュンの目の前に獅子の四股を持つミルメコレオが立ち塞がる。
この種も他のベヒモスを食らい、蟻の八本足を持つ上位種へと進化する。
「くらえっ!」
シュンは落ち着いてミルメコレオの脳天を叩き割り次の獲物を探しつつ、苦戦する仲間の前に【障壁】を作り出し援護する。
「ブレイソン! 少し引け」
「はっ!」
先頭で突出ぎみのブレイソンに注意を促す。
気持ちが高ぶり後ろの状況に気が配れないようだった。
シュンも、はやる気持ちを抑えて全体を俯瞰する。
エスプロジオーネの輪がこちらに戻ろうとしているが、分厚いベヒモスの壁に阻まれて身動きが取れないでいるようだ。
シュンは空中へと機動し【切断】と【衝撃】を程よくミックス、【移動】で回転させたつむじを援護の為に放つ。
続けて二発を叩き込み、エスプロジオーネは形成された脱出路へと移動を始めた。
「まったく、きりがないわね! シュン!」
「ああ、小物ばかりだが……。体力とコンテナ量の勝負だな」
「そうねっ!」
レイキュアはバジリクスの首を飛ばした剣をそのまま、スカーレッドの若手が戦っているベヒモスの胴体に突き立てた。
「隊長!」
「頑張って!」
「はいっ!」
女子の隊員は元気よく返事をするが疲労の色は隠せない。
終わりの見えない戦いの中、後方から撤退を告げる金管楽器、コルノの甲高い音が響く。
撤退の合図だ。
各部隊が引き始め、遥か後方にコルノを持つギルドの職員と、護衛の冒険者たちの姿が見えた。
「ブレイソン、撤退の指揮をとれ!」
「はっ」
シュンは空中に上がり落伍している冒険者がいないか探した。
五人程度の集まりが苦戦して撤退もままならないのを見てとり、シュンは低空に降りて手助けになるよう撤退方向の ベヒモスを十数体切り捨てる。
つむじをいくつか発生させ地上で適当に暴れさせた。
戦場の状況を見るが他に取り残されている冒険者の姿は見えなかった。
ベヒモスたちは死骸を食い始める。
シュンは引き上げる冒険者たちに追いすがる数体のベヒモスを処理する。
先ほどの五人組も脱出に成功し、全員が拠点のキャンプに無事撤退を果たした。




