第十一話 「西への大進行」04
キャンプではギルドのサービス部隊と護衛の冒険者たちが、食事や資材などを荷馬車から降ろし、ランツィアとスカーレッドの待機していた人員が作業を手伝っている。
「アルバー、こっちの様子はどうだった?」
「特になしです。静かなものでした」
「そうか」
それからギルドが提供する昼飯が配られた。
皆がサンドイッチをパクつき、それをぬるいお茶で喉の奥に流し込む。
「アルバー、午後はお前もこっちに加わってくれ」
「分かりました」
「ブレイソン、体力とスキルを消耗したメンバーを下がらせろ。待機部隊の指揮ができるヤツも一人抜け」
「はっ」
シュンは食べて飲みながら指示を飛ばす。
食事が終わり短い休憩の間、皆が腰を下ろす。
レイキュアがシュンの隣に座った。
「ウチは二人休ませるわ。増員はできない。これが限界よ」
「あの戦いじゃあしょうがないよ。アルバーが加われば戦力は上がる」
「ごめんね」
「気にするな」
「助かったぜ、シュン」
チーム・エスプロジオーネの頭、セバスティが傍らに来て礼を言う。
「余計なお世話だったかな?」
「いや、突撃陣形で後方突破もできたがな。初日から危険は犯したくないよ」
この男も慎重で仲間思いの冒険者だった。
「こんな大群とやるのは初めての経験だ。注意しなきゃあな……」
「ああ、同感だ」
午後にはもう一度、同じような攻撃を繰り返す。
全員で広がり群からはぐれて、こちらに向かうベヒモスを狩りながら進む。
群が近くなり冒険者たちは中心に集まり塊となってベヒモスの軍勢と激突した。
今回の攻撃はギルドからの指示もあり控えめだ。
そして再び撤退を告げるコルノの甲高い音が響く。
「他の冒険者たちを助けながら撤退しろ!」
シュンは近くにいるアルバー向かって叫んだ。
「はいっ!」
「俺はちょっと遊んでくる」
シュンは飛行して西城塞に向かう。
眼下の群れに攻撃を放ちつつ大物のベヒモスを探すが、目に付くのは中から下ばかりだ。
西城塞ラヌゼルダは門を固く閉ざして、城壁上から弓矢の攻撃を散発的に続けていた。
もう矢も消耗しきっているのだろう。
シュンは北に引き返しつつ落伍者を探したが撤退は上手くいっていた。
行きがけならぬ、帰りがけの駄賃とばかりに、シュンは低空に下りて何体かのベヒモスを討ち、安全を確認して徒歩に切り替えた。
拠点には天幕が張られて文字通りのキャンプが設営されいた。
夜営用の松明の準備もされている。
すでに日は傾いていた。
サービス部隊が荷馬車に篝火を焚く台を乗せ、前線に移動を始める。
彼らは夜通し火を焚いてベヒモスを警戒するのだ。
彼らは年配の冒険者などで構成されていて、地味だが心強い縁の下の力持ちだった。
まだ初日だが負傷者が出なかったのは何よりだ。
「シュン、明日は待機部隊から何名か攻撃に加えてはどうでしょうか?」
アルバーが差し出したサンドイッチを受け取って、シュンは少し考えた。
「そうだな……、いいだろう。ここまで危険が及ぶようなら、飛べるヤツが駆けつければいいしな」
「はい」
シュンは敷物の上に座り込み、サンドイッチを食べお茶を飲んだ。
皆、疲れ切っていて口数は少なく、黙々と食事を腹に詰め込む。
夜は天幕の下で毛布に包まり泥のように眠った。
翌日も同様の攻撃が繰り返される。ただし状況は少し変わっていた。
「敵の数が少ないな……」
「はい、今日は南側からの攻撃が牽制なっているようです」
シュンはアルバーと共に剣を振るいながら周囲を見回す。
一日遅れで南を経由した東城塞の部隊が攻撃を仕掛けると、ギルドの担当官が言っていた。
西の先に砂塵が見える。
他の部隊も激しい戦いを繰り広げているようだ。
二日に渡った激戦が終わり、第一波のシュンたちは街に引き上げた。
ここまで消耗しては、また寝込むヤツらも出そうだった。
明日は他の冒険者たちの部隊が、同じように攻撃を加える予定だった。




