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第十話 「日々の仕事」05

「ちょっといいかしら?」

「ん? もちろん構わないよ」


 クエストをこなしてギルドでの手続きが終ると、横からお馴染みの受付嬢が声を掛けてきた。


「話があるのよ……」


 ミレリアは少しもったい(・・・・)を付けつつ、シュンの横にいるアルバーをチラリと見る。


「私は先に帰っていますから」

「悪いな。俺を待たなくて良いよ。先に解散させてくれ」

「はい」


 気を利かせたアルバーはギルドを後する。


「いったい何だい?」

「ちょっとこっちへ……」


 二人はついたてで仕切られている、打ち合わせコーナーに移動した。


「相談――、特命の依頼があるのよ」

「ああ、別に構わないよ」


 ベヒモスの脅威度やクエストの内容、性質によってチームを特定しての依頼は珍しいことではない。


「これ……」


 ミレリアは手描きの小さな地図を差し出す。

 シュンはそれを手に取った。


「一名の救出よ。その周辺にいるらしいのだけれど、本日の正午予定の帰還が遅れているの」

「魔境の奥か……」


 シュンがスケラーノに接触した場所より更に奥の地だ。

 脱出ルートが矢印で書かれている。

 このラインを逆になぞって進撃すれば良いのだ。


 ガスケスのような冒険者がギルドの依頼を請けて、難所の偵察は定期的に行われている。

 そして中には予定の時間をオーバーする場合もあるのだ。


「シュンとブレイソンで行って欲しいのよ」


 その場合は念の為の救援クエストが発動されるが、人員の指定までするのは珍しい。


「軍の偵察要員か……」

「察しがいいわね。そう、軍からの依頼よ」


 ブレイソンはその物腰と戦いぶりから、軍事訓練を受けているとシュンは思っていたが――。


「しかし個人を指定するとはな。何かあるのかな?」

「それは私たちギルドも分からないわ。知り合いなのかしら?」


 それはあり得る。

 訓練時代に関係があった誰かの可能性は十分だ。


「分かった。明日一番で行く。二人で途中まで馬を飛ばしてな」

「頼むわね」


 ミレリアはクエストの依頼票を差し出した。

 偵察員への接触と書かれ、対象者のサイン欄がある。


 特別な事例だとは思わない。

 何せここは軍管区なのだ。



 事務所に戻るとアルバーが待っていた。


「悪いな。ちょっと変わった話さ。組割りを考えてくれ」


 シュンは状況を説明する。


「なるほど。シュンがブレイソンを選んだことにしておきますかね……」

「ああ、頼む。軍と関係がある冒険者なんて、噂になったらブレイソンもやりにくいだろうさ」

「冒険者の過去は詮索しない、ですか?」

「俺は隠し事なんてないけどな。そうでない奴もいるさ」

「まあ、そうですね……」


 そう言うアルバーについても商家の出身以外は、シュンは全く知らないし根掘り葉掘り聞く気もない。

 冒険者同士の信頼感は戦いの中で生まれる。


   ◆


 翌朝、シュンたちは小物のベヒモスには目もくれず魔境へと馬を飛ばす。


 小さな広場に出て、若い草が生い茂っている場所に馬を繋ぐ。

 手押しポンプで水を汲んで馬に与えた。


 人が乗り入れる場合はかまわないが、ここより奥に長時間、馬を繋ぐのは厳禁だった。

 ベヒモスに襲われる為だ。


「よし、行くか。警戒は怠るなよ」

「はっ!」


 ブレイソンの返事は相変わらず軍人ふうだ。

 二人は徒歩で奥へと進む。


「更に奥に偵察を派遣したんですよね? なぜそんなことをするのかな……。もしかしてまたデス・キャニオンみたいに大型クエストを発動させるとか――、ですかね?」


 何かを知っていると思っているのか、聞き出そうとブレイソンは不器用に話を振ってくる。

 シュンは苦笑した。


「クエストの準備ではないな。相手はお前を指名してきた。心当たりはあるか?」

「えっ?」


 事情を知っているのはシュンではなくて自分だと分かり、ブレイソンは唇を噛む。


「軍がらみ、だろ?」

「御存知でしたか……」

「まあな、それは別に構わんよ。皆、色々な事情を抱えているしな」

「俺を指名したなら……、相手はたぶん知っている人間です。目的は――俺にも分かりません……」


 ブレイソンは迷惑を掛けたか、余計なことに巻き込んだとでも思ったのか力なく答える。


「別にお前が気に病むことじゃあない。これはギルドの正式なクエストだ。むっ!」

「右手にベヒモスの群です」

「突破するぞ!」

「はっ」


 二人は走り出し【移動】も発動して一気に駆け抜けた。

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